グルメ

魚治 木桶仕込みの鮒寿し:「お米が主役」vol.05 柏木智帆

2015.12.01

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伝統の製法で守る道具や技

日本伝統の味、鮒寿し。鮒とお米と塩を桶に仕込み、二冬かけてじっくりと発酵熟成。乳酸菌によって生み出されるコクのある酸味と旨みが特徴です。

滋賀県高島市にある創業1784年の老舗「魚治」では、ことし半世紀ぶりに木桶仕込みの鮒寿しを復活させました。仕込みに使うお米は、市内の「針江のんきぃふぁーむ」が無農薬・無化学肥料でつくる在来種「滋賀旭27号」。半世紀前には多くの人が食べていた品種でした。

伝統の味を復活させたのは、魚治代表取締役の七代目・左嵜謙祐さんと、代々続く農家で針江のんきぃふぁーむ代表の石津大輔さん。2人とも30代の若き跡取りです。

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琵琶湖固有の天然ニゴロブナと地元の近江米でつくる魚治の鮒寿し。街から木桶屋がいなくなった半世紀前からはプラスチック桶を使っていました。木桶は、鮒寿司の発酵に欠かせない乳酸菌を宿しますが、プラスチックでは宿せません。そこで、壊れた木桶を蓋に仕立て直して菌の住みかをつくり、代々その味を守ってきました。

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乳酸菌の住みかとなる木蓋

2代ぶりに木桶仕込みを復活できたのは、大阪府の木桶屋との出会いがきっかけ。左嵜さんによると、鮒寿しを仕込む大きな木桶をつくることができる唯一の木桶屋だそうです。

「鮒寿司は木桶という道具が支えてくれた食文化。今度は僕たちが道具を守って後世に残していきたい。木桶を使う知恵や技術も伝えていかなければと思っています」と左嵜さん。乾燥や吸水で変化する木の特性を使い手が把握していないと、木桶はすぐに壊れてしまいます。使う技術は使い続けることによって培われ、残っていくのです。

 

発酵に適した在来種のお米

「鮒寿しは、実は農耕文化の食べものなのです」

そう左嵜さんが説明するように、鮒寿しと稲作は二人三脚で受け継がれてきた食文化。田んぼに水を張るころ、産卵のために川を遡上する鮒を農家が捕獲していました。一方で、農家に捕獲されずに田んぼに入り込んだ鮒は、外敵がいない環境で稲の陰に守られながら育ち、稲刈りのために田んぼの水を抜く時に琵琶湖へ戻るのです。

鮒寿しの発酵には粘りが少ないお米が適しているため、魚治の通常の鮒寿しには粘りが強いコシヒカリに他の品種をブレンドして調整しています。ところが、試しに針江のんきぃふぁーむの「滋賀旭27号」を炊いてみると、あっさりして粘りが少なく発酵に適した品種であることがわかったのです。そこで、木桶仕込みの鮒寿しには「滋賀旭27号」を使うことにしました。生産者の石津さんによると、「育てにくく、収量が少なく、生育期間が長い、非経済的なお米」。それでも、土地の在来種を大切にしたいという思いで生産し続けています。このお米を使った鮒寿しは、「素直な味」(左嵜さん)になるそうです。


滋賀旭27号の種籾

 

鮒寿しは空気に触れると味が変わるため、切り立てが一番。そのままで食べるもよし、ごはんの上に鮒寿しの切り身を乗せて熱々の緑茶や番茶を回しかけるお茶漬けもおすすめです。鮒寿しについているお米をお茶に溶かすとお吸い物のような味わいに。さっぱりとしていながら深い旨みが楽しめます。

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魚治
http://www.uoji.co.jp/

針江のんきぃふぁーむ
http://nonkifarm.com/

 

 

取材・文 柏木智帆

【柏木智帆の〈お米が主役〉】一覧記事はこちら
http://www.premium-j.jp/chiho-kashiwagi/

 

 《プロフィール》

柏木智帆

フリーランスライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材活動をする中、生産の現場に立つために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたって千葉県で無農薬米をつくりながらおむすびのケータリング屋を運営。2014年秋からは消費や販売に重点を置くため都内に拠点を移して「お米を中心とした日本の食文化の再興」と「お米の消費アップ」をライフワークに活動。神奈川新聞契約ライター。「日常茶飯」をテーマにお米とお茶のお取り寄せサイト「和むすび」(http://www.wa-musubi.jp)を運営

 

 

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