グルメ

銀座奥田:「食の王道」vol.05 広川道助

2015.12.03

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38歳、この若さで構えの大きい王道料理を出せる料理人の味をいま楽しみたい

料理人にとって特に和食を極めようと思っている人なら、「銀座」は特別な響きのある地名です。以前、東京郊外で和食の繁盛店を経営していた大将が銀座に進出することを決心したと聞いたとき、

「開店当初、なんでこんなところに開いたのかって聞いたら、銀座みたいに仕事のあとのついでに来るんじゃなくて、うちの店だけを目指してほしいからって言っていたよね」と、ちょっと意地悪な質問をしてみました。彼は頭を掻きながら、

「だから古い客はいやなんだよね。あのころは銀座に行く自信がなかったんですよ。だから強がっていたけど、やっぱり銀座で勝負したいとずっと思っていたんですよね」

言葉通り、彼は銀座でも成功。瞬く間に予約の取れない店となりましたが、うまく行かなかった店はその数十倍あるでしょう。それでも目指したいというくらい、この街には魅力があるのです。

その銀座で、和食フリークの食いしん坊たちが注目しているのが、38歳の料理人、五十嵐大輔さんです。創刊当初のミシュランで三ツ星を取った奥田透さんが率いる「銀座小十」グループの日本料理「銀座奥田」の料理長を務めています。小十と奥田は同じビルにあり、大胆にいえば小十のデフュージョン版が奥田ですが、日本料理好きには「いま行くなら奥田でしょう」という声ばかりなのです。

もともと美容師志望という変わり種。美容師学校に通っていた時にアルバイトした居酒屋で食の魅力にはまり、中退。調理師学校には行かず、現場一筋で来たという、最近の若手にはない経歴の持ち主です。彼が名を挙げたのは蕎麦割烹「流石はなれ」の日本料理をまかされた時で、蕎麦を担当した矢守昭久さんとともに見事な料理を出したのですが、それからも日々進歩している五十嵐さんの料理を楽しめるのが奥田というわけです。

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ボスの名前を取った店ですから、小十の人気料理「わかめと蟹のジュレがけ」なんて料理がコースのあいだに挟まれるのはご愛嬌ですが、季節をフィーチャーした柿とイチジクの白和えから始まり、抑えめの出汁が素晴らしい松茸の土瓶蒸し、丁寧に包丁の入った刺身盛り、かますの塩焼き、しのだ巻の炊き合わせ、と堂々と王道の料理を披露してくれる。

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才気走った料理人は新しい料理に走りがちで、それはそれで微笑ましいものですが、微動だにせず、スケールの大きい料理を出せるのが五十嵐さんの才能というものです。

〆は鮭といくらの炊き込みご飯。連載第一回目で最後の食事はあっさりしたものがいいと書きましたが(笑)、どストレートな料理を食べると、勢いのある〆もいいものだなと思ってしまいます。そして、甘味は果物と冷菓であっさりと。

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構えは大きいのに、包丁の扱いや緩急のつけかたは繊細な五十嵐さんの料理。40代、50代になったら、とっくに銀座で一国一城の主になっていることでしょうけれど、いったいどんな料理で楽しませてくれるのか、考えるだけで楽しい。

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 「銀座奥田」
住所:東京都中央区銀座5丁目4—8 カリオカビルB1F
電話番号:03-5537-3338
営業:昼 12:00〜13:00(L.O.)/夜 18:00〜21:30(L.O.)
定休日:日曜・祝日・年末年始
席数:カウンター8席
個室掘りごたつ2室 (4名、6名)
個室洋間1室(4名)

写真は1万8300円のコースより

 

《プロフィール》

広川道助

学者の家系に育つ。西欧で一時期を過ごし、早い時期から食の世界を志す。20代はフレンチに凝ったが、その後、日本料理の深遠さに目覚め、近年は和食全般を系統だてて食することが一番の楽しみ。

 

【広川道助の〈食の王道〉】一覧記事はこちら
http://www.premium-j.jp/dousuke-hirokawa/

 

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