Experiences

Spotlight

京都のパワースポットを巡る旅へ(後編)

2022.12.27

開運、縁結びのご利益をいただくパワースポットへ 旅気分で京丹後/京丹波の神社巡り


神が住む神聖な場所として日本人が大切に守り続けてきた場所、神社。京都府には、およそ千八百弱(2020年文化庁『宗教年鑑』より)の神社が点在している。前編では京都市内のパワースポットを紹介したが、後編は京丹波、京丹後方面のおすすめパワースポットとして二つの神社と旅気分をかきたてる立ち寄りスポットを紹介する。



出雲大神宮
本殿の背後にそびえる、太古より崇められた神体山

 

丹後への入り口ともいえる丹波亀岡市。この地に社を構える「出雲大神宮」の御祭神は「大国主命(おおくにぬしのみこと)」と「三穂津姫命(みほつひめのみこと)」である。「元出雲」とも称されることから、島根の出雲大社より古いとも伝えられている。

 

 

 



石造りの荘厳な千年宮鳥居と灯篭が出迎える。右奥に聳えるのが、御神体山として古くから崇められてきた御影山。八百万(やおよろず)の神様たちが楽しそうに遊ぶ、そんな風景さえ思い浮かぶ。



「出雲大神宮」の創建に関して、宮司の岩田昌憲さんは語る。「二柱の御祭神も大切に祀られていますが、本殿の背後にそびえる『御影山』そのものが、太古の昔から神体山として、深く崇められていました。自然そのものが神からの恵みであること伝えてきた場所だったのです」。

 

 

御神体山へと続く本殿背後の鎮守の杜には、何本もの杉の巨木が屹立しているが、陽射しが降り注ぎ風が通り抜け、心地よい空気が流れる。



出雲大神宮に向かう際、見た人に幸運が訪れると言われる「彩雲」もお出迎え。 出雲大神宮に向かう際、見た人に幸運が訪れると言われる「彩雲」もお出迎え。

出雲大神宮に向かう際、見た人に幸運が訪れると言われる「彩雲」もお出迎え。



本殿背後の鎮守の杜へと続く参道。そこここに点在する神様の依代が参拝者を出迎えてくれる。 本殿背後の鎮守の杜へと続く参道。そこここに点在する神様の依代が参拝者を出迎えてくれる。

本殿背後の鎮守の杜へと続く参道。そこここに点在する神様の依代が参拝者を出迎えてくれる。



鎮守の杜に鎮座する巨岩は力の根源。まさに「パワースポット」

 

 

注連縄を巡らせた、ひと際大きな岩「神之磐座(かみのいわくら)」が見えてきた。社殿が創建される以前からこの場所に存在し、信仰の対象として崇められてきたといわれる。生い茂る樹々の中に忽然と姿を見せる巨岩。その力は、さまざまな縁を呼び込むとされている。



「神之磐座」の高さは大人の背丈2倍以上。その圧倒的な存在感は、まさにパワースポットそのもの。 「神之磐座」の高さは大人の背丈2倍以上。その圧倒的な存在感は、まさにパワースポットそのもの。

「神之磐座」の高さは大人の背丈2倍以上。その圧倒的な存在感は、まさにパワースポットそのもの。



御神体山から湧き出る「眞名井の水」は、ミネラルバランスの よい中硬水で、その優れた成分は科学的にも証明されている。 御神体山から湧き出る「眞名井の水」は、ミネラルバランスの よい中硬水で、その優れた成分は科学的にも証明されている。

御神体山から湧き出る「眞名井の水」は、ミネラルバランスのよい中硬水で、その優れた成分は科学的にも証明されている。



大国主命にまつわる動物は、やはり兎(うさぎ)。鳥居の前でかわいらしい石造りの「しあわせ、なでうさぎ」を見つけた。荘厳ともいえる「磐座」を拝み鎮守の杜を巡ったあとに、この愛くるしい表情に出合うと、「縁結びの神様といわれる大黒様は、男女の縁だけでなく人と人とを結びつけ社会を明るくしていく慈愛に満ちた優しい神様です」という、岩田宮司の言葉が思い起こされた。



思わずほっこりしてしまう「しあわせ、なでうさぎ」。体をなでると幸せが訪れると言い伝えられているとか。2023年の干支は兎だからぜひご利益にあずかりたい。 思わずほっこりしてしまう「しあわせ、なでうさぎ」。体をなでると幸せが訪れると言い伝えられているとか。2023年の干支は兎だからぜひご利益にあずかりたい。

思わずほっこりしてしまう「しあわせ、なでうさぎ」。体をなでると幸せが訪れると言い伝えられているとか。2023年の干支は兎だからぜひご利益にあずかりたい。

出雲大神宮
京都府亀岡市千歳町千歳出雲無番地
御守等の授与所は9時~17時(参拝は24時間可能/御神体山は禁足地)



元伊勢籠神社・眞名井神社
元伊勢
として知られる、歴史ある格式高き神社

 

屈指の名勝として知られる天橋立を望む傘松公園からほど近くに鎮座する「元伊勢籠神社(もといせこのじんじゃ)」。本殿前の拝殿に掲げられた幔幕に浮かび上がる菊の御紋。思わず身が引き締まる。「元」という一文字が物語るように、天照大神と豊受大神がこの地から伊勢神宮へ遷座された、いわば現在の伊勢神宮の前身であり、神社の歴史上最も重要な社のひとつであるとされている。



拝殿前に掲げられた菊の御紋。正式名称は籠神社だが、「元伊勢籠神社」の通称で親しまれている。 拝殿前に掲げられた菊の御紋。正式名称は籠神社だが、「元伊勢籠神社」の通称で親しまれている。

拝殿前に掲げられた菊の御紋。正式名称は籠神社だが、「元伊勢籠神社」の通称で親しまれている。



本殿の欄干に配された「五色の座玉」は、伊勢神宮と「籠神社」でのみ見られるとされる極めて貴重なもの。本殿の建築様式も伊勢神宮の正殿に近いとされている。 本殿の欄干に配された「五色の座玉」は、伊勢神宮と「籠神社」でのみ見られるとされる極めて貴重なもの。本殿の建築様式も伊勢神宮の正殿に近いとされている。

本殿の欄干に配された「五色の座玉」は、伊勢神宮と「籠神社」でのみ見られるとされる極めて貴重なもの。本殿の建築様式も伊勢神宮の正殿に近いとされている。



パワースポットとして名高い奥宮の眞名井神社へ

 

パワースポットとして知られる「眞名井神社(まないじんじゃ)」は、「籠神社」の奥宮にあたり、徒歩で10分ほど。境内には、古代からの祭祀場である「磐座(いわくら)」や、御霊水として知られる「眞名井の水」など、古からの歴史を彷彿とさせるスポットがいたる所に。「眞名井の水」は、その加護を得るために、遠方から汲みに訪れる人が絶えない。



古代からの祭祀場である磐座。御祭神として祀られているのは、五穀豊穣を司る「豊受大神(とようけおおかみ)」 古代からの祭祀場である磐座。御祭神として祀られているのは、五穀豊穣を司る「豊受大神(とようけおおかみ)」

古代からの祭祀場である磐座。御祭神として祀られているのは、五穀豊穣を司る「豊受大神(とようけおおかみ)」



極めてまろやかで優しい口あたりの「眞名井の水」。御霊水として、多くの人に愛されていることに納得。



「元伊勢籠神社」には、授与品としてのさまざまな御守りが揃う。右上から時計まわりに、物事が良い方向に向かうように願いを込めた導守、本殿裏から出土した勾玉に由来し豊受大神のご加護が籠められた勾玉守、春の天橋立の風景を描き、願いが天に届くように祈願する天願守り。上記すべて初穂料1,000円。このほか、「眞名井神社」参拝者限定で特別授与される桃守、豊藤守などもある。参拝したのち、ぜひ手に入れたい。

元伊勢籠神社・眞名井神社
京都府宮津市字大垣430
参拝時間 7時30分~16時30分(季節や土日祝など、延長の場合あり)
(御守等の授与所は8時30分~16時30分)



日本玄承社
次の時代の日本刀を切り拓く、3人の若き刀鍛冶

 

丹後は、古墳時代の刀剣が出土し古代の製鉄所ともいわれる遺跡が存在するなど、古より刀剣と縁が深い土地とされている。そんな丹後の地で、3人の若き刀鍛冶が工房を構え、日本刀を作り始めた。「日本玄承社」と名づけられたこの小さな工房を訪ねた。

 

 

1000度まで熱せられた玉鋼(たまはがね)と呼ばれる鉄が、炉から取り出された。合図とともにその玉鋼めがけて大槌が振り下ろされる。飛び散る火花、滴る汗。耳をつんざくような、鋭い、でも小気味よい金属音が響き渡り、玉鋼が少しずつ伸ばされていく。

 



小さな玉鋼めがけ、重い鎚を振りおろす。一瞬たりとも気を抜くことができない作業が繰り返される。 小さな玉鋼めがけ、重い鎚を振りおろす。一瞬たりとも気を抜くことができない作業が繰り返される。

小さな玉鋼めがけ、重い鎚を振りおろす。一瞬たりとも気を抜くことができない作業が繰り返される。



炉から取り出すタイミングは温度計など使用せず、熟練のカンだけが頼り。 炉から取り出すタイミングは温度計など使用せず、熟練のカンだけが頼り。

炉から取り出すタイミングは温度計など使用せず、熟練のカンだけが頼り。



何度も叩いて伸ばした玉鋼を重ね合わせ、また叩き伸ばしていく。1本の刀が出来上がるまでには、気の遠くなるような作業が繰り返される。 何度も叩いて伸ばした玉鋼を重ね合わせ、また叩き伸ばしていく。1本の刀が出来上がるまでには、気の遠くなるような作業が繰り返される。

何度も叩いて伸ばした玉鋼を重ね合わせ、また叩き伸ばしていく。1本の刀が出来上がるまでには、気の遠くなるような作業が繰り返される。



2019年に東京で立ちあげた「日本玄承社」が丹後の地に工房を構えたのは2022年のこと。同じ師匠のもとで修業した兄弟弟子の3人のうちの1人、山副公輔さんの祖父母が住んでいた空き家が使用できることになったのが転機となった。以来、黒本知輝さん、宮城朋幸さんも丹後に移り住み、共同で日本刀を作る日々が始まった。

 

目指すはアートの要素を取り入れた「令和の日本刀」

 

代表を努める黒本さんは語る。「日本刀は時代と共に反り具合や大きさが変わってきました。アートの要素を取り入れながらも伝統をきちんと踏襲した、『令和の日本刀』を生み出したいと考えています」。3人はいずれも30代。日本刀という、峻厳な力を持つ工芸を生み出す若き力。「日本玄承社」も、丹後のパワースポットと言えるだろう。



日本刀。それは日本人の精神性を反映した、単なる武器を超えた峻厳な存在。 日本刀。それは日本人の精神性を反映した、単なる武器を超えた峻厳な存在。

日本刀。それは日本人の精神性を反映した、単なる武器を超えた峻厳な存在。



若き3人の刀鍛冶たち。左から宮城朋幸さん、代表の黒本知輝さん、山副公輔さん。 若き3人の刀鍛冶たち。左から宮城朋幸さん、代表の黒本知輝さん、山副公輔さん。

若き3人の刀鍛冶たち。左から宮城朋幸さん、代表の黒本知輝さん、山副公輔さん。

日本玄承社
京都府京丹後市丹後町三宅314
日本刀鑑賞と鍛冶場体験やペーパーナイフ製作体験などのワークショップ的な活動も実施中。詳しくはHPを参照。



和久傳ノ森
安野光雅氏の作品に触れた後は、京丹後の食材を用いた美食を

 

 

丹後は、京都市内に暖簾を掲げる料亭として名高い「和久傳(わくでん)」の創業の地。その地に、美しい環境を守ることを目的とし、植物生態学者の宮脇昭先生ご指導のもと2007年より始まった植樹事業が「和久傳ノ森」だ。樹々は順調に育ち、四季折々の自然が息づく豊かな森となった。そんな森の中に2017年に誕生した「森の中の家 安野光雅館」と「工房レストラン wakuden MORI(モーリ)」は、丹後を巡る旅の立ち寄りスポットとして、連日多くの人が訪れている。

 

 



「森の中の家 安野光雅館」は2017年に開館。 「森の中の家 安野光雅館」は2017年に開館。

「森の中の家 安野光雅館」は2017年に開館。



シンプルな直線を主体とした、安藤忠雄さん設計の建物が「森の中の家 安野光雅館」。丹後の美しい自然の中にたたずむ建物の内部には、画家・絵本作家の安野光雅氏の作品が展示されている。その作品は、見る者の心を安らかにさせると同時に、人と人の繋がりや平和の大切さを、静かに力強く語りかけてくる。



安野光雅氏の作品は、3カ月に1回のサイクルで展示替えが行われる。作品詳細は、訪れる前に要チェックされたい。 安野光雅氏の作品は、3カ月に1回のサイクルで展示替えが行われる。作品詳細は、訪れる前に要チェックされたい。

安野光雅氏の作品は、3カ月に1回のサイクルで展示替えが行われる。作品詳細は、訪れる前に要チェックされたい。



作品を鑑賞した後は「工房レストラン wakuden MORI(モーリ)」で食事を楽しみたい。料亭「和久傳」で修業を重ねた料理長が手掛ける、丹後の食材を巧みに用いたメニューの数々は、カジュアルさのなかにも「和久傳」スピリットが感じられる独自のテイストだ。「れんこん菓子西湖(せいこ)」で知られる「紫野和久傳」の商品や、お土産選びもぜひここで。



写真左からローストビーフ散らし寿司、2200円(税込)、無農薬コシヒカリと鰻の炊き込みごはん、2706円(税込・季節により変更あり) 写真左からローストビーフ散らし寿司、2200円(税込)、無農薬コシヒカリと鰻の炊き込みごはん、2706円(税込・季節により変更あり)

写真左からローストビーフ散らし寿司、2200円(税込)、無農薬コシヒカリと鰻の炊き込みごはん、2706円(税込・季節により変更あり)



丹後産の野菜をふんだんに用いた、丹後野菜カレーのセット 2310円(税込) 丹後産の野菜をふんだんに用いた、丹後野菜カレーのセット 2310円(税込)

丹後産の野菜をふんだんに用いた、丹後野菜カレーのセット 2310円(税込)



シンプルでモダンなインテリアが森の中に映える店内。 シンプルでモダンなインテリアが森の中に映える店内。

シンプルでモダンなインテリアが森の中に映える店内。

和久傳ノ森
京都府京丹後市久美浜町谷764
森の中の家 安野光雅館 9時30分~17時(最終入館16時30分)
工房レストランwakuden MORI(モーリ)10時~18時(L.O.17時30分)



伊勢も出雲もそのふるさとは京都に。それもさもありなんと思わせる、清浄で力強いパワーにあふれた神社に出合う旅。神話や説話が育まれた地・京都だからこその愉しみだ。京丹後、京丹波方面のパワースポットはまだいっぱいだから、次の京都旅のリサーチには「海の京都DMO」と「森の京都DMOをチェックしてみては。身も心も生まれ変わるような、京都のパワースポット巡りの旅へ、ぜひ訪れてほしい。

 

 

 

 

Text by Masao Sakurai(office clover)
Photography by Yukiyo Daido

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。

ページの先頭へ

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。