醍醐の花見を題材にした「櫻幔幕図屏風」(明治時代)醍醐の花見を題材にした「櫻幔幕図屏風」(明治時代)

Lounge

Premium Salon

編集部&PJフレンズのブログ

2024.4.3

雛人形展2024 ~公家雅に魅せられて~

醍醐の花見を題材にした「櫻幔幕図屏風」(明治時代)

先日京都に行ったおり、衣紋道山科流 30 代家元後嗣 山科 言親 (ときちか) さんを訪ねました。

 

 

「京雛」と呼ばれる京都で作られる京人形の雛人形。通常立春を過ぎてから飾られ、3月3日以降にしまいますが、旧暦のひな祭り、つまり4月まで飾っている家もあるとのこと。山科家では4月1日から雛人形展が始めるということで、素晴らしい雛人形のコレクションを見せて頂きました。

 

 

山科家は藤原北家の流れで、平安時代末期〜鎌倉時代初期の公卿藤原実教(1150〜1227)を初代として始まり、後白河法皇より山科新御所とその周辺を所領として賜り、以後代々伝承し、家名の由来となったそうです。宮中で大納言・中納言・参議等の要職についた他、南北朝期以降は内蔵頭・御厨子所別当を世襲し、朝廷財政を運営されてきました。また、公家の家職として、装束の調進と着装をする衣紋道山科流並びに雅楽の笙を伝えるなど、有識故実をもって歴代天皇の側近として仕えました。衣紋道とは公家や武家の装束の着装法について、古くから伝えられてきた技術や考え方のことです。


泊まれる文化施設「山科伯爵邸 源鳳院」 泊まれる文化施設「山科伯爵邸 源鳳院」

泊まれる文化施設「山科伯爵邸 源鳳院」


平安時代に貴族の別荘地として栄えた岡崎エリアに佇む「源鳳院」 として、 白川通から一歩入ると、東山三十六峰を望む閑静な住宅街が広がり、その一角に時を止めたかのように「山科伯爵邸 源鳳院」が佇んでいます。

 

岡崎の地に1920年山科言綏(ときまさ)伯爵により建築され、2020年に築100年を迎えたそう。「源鳳院」は、そんな山科家の歴史と伝統が息づく邸宅で宮廷文化に触れながら、雅なひとときを過ごせる宿です。

 

回遊式庭園が広がる約500坪の邸内にわずか4室というプライベート感溢れる空間。大広間では宮廷文化講座やお稽古事、展示会等を定期的に開催しています。

 




様々な時代に作られた雛人形たち






山科さんに雛人形の歴史について伺いました。

 

ひな人形の起源には二つの流れがあります。一つは、平安貴族の少女が楽しんだ「ひひな遊び」であり、もう一つは三月上巳の祓です。

 

「ひひな遊び」は『源氏物語』にも出てきます。また、十二世紀半ばにまだ幼い近衞天皇と女御の藤原多子が「ひひな遊び」をしたという記録もあり、様々な調度を置いたドールハウスを使った子供の遊びであったことがうかがえます。ひひな遊びの記録は室町時代の公家日記にも断片的にみられ、季節を問わない遊戯であったとみられます。

 

一方で江戸時代最初期に後水尾天皇が著した『当時年中行事』によると、三月辰の日に、陰陽師の安倍家より人形(にんぎょう)が献上され、小さな四角い練り絹の真ん中に穴をあけたものを通し、二つに折って結び、衣に見立てたといいます。これを枕元に置いてあくる巳の日に陰陽師に下げ渡すのです。

 

さらにさかのぼると、子供に災厄がつくのを避けるため、身代わりとしての天児(あまがつ)と這子(ほうこ)が平安時代より作られていました。これらは江戸時代に至っても大名家などでは儀礼的に用いられたものです。先に紹介した三月上巳の人形は、この天児のような十字架状の人形であった可能性が高いでしょう。

 



国宝源氏物語絵巻の木版本



また今年の大河ドラマで話題の「源氏物語」の国宝源氏物語絵巻の木版本が展示されていました。戦前から戦後直後に制作された精緻な木版による複製で、貴重なものになります。 表現としては原本自体は紫式部の字ではなく(絵巻は平安時代末期に成立)、原本に忠実な木版本になるそうです。




貴族のひな人形 貴族のひな人形

貴族のひな人形



床の間には、有職雛四対が飾られる。有職雛とは公家の夫婦の装束を忠実に再現したもので、宮中や公家と大名家で飾られた「貴族のひな人形」が飾ってありました。公家は雛を段飾りにせずに、遊ぶ対象として平置きにするそう。着ている装束により、「束帯雛」「直衣雛」「小直衣雛」「狩衣雛」と呼ぶ。女雛は、「束帯雛」には「五衣裳唐衣(十二単)」、「直衣雛」以下には小袿姿とする。当時十二単の使用は宮中などに限られており、一般の公家夫人の礼装は小袿だったそうです。

 

掛軸は江戸後期の公家大原重成による画賛で、有職雛(束帯・小袿姿)の絵と和歌が記されています。

 

「折かざす三千世のももの花かづら 柳の眉にかけて契らむ 正三位重成併賛」

 

 


本年は上巳の節句(旧暦3/3)が4/11にあたるということで、ここ数年の雛人形展は桜や桃が開花する旧暦で開催しているそう。

 

日本でも屈指の人気を誇る文化都市「京都」。歴史を感じる貴重な場所ですが、外国からの多くの観光客により、どこに行ってもゆったりするのは難しい状況です。

 

東京では決して体験することができない、歴史と伝統が息づく邸宅で宮廷文化に触れるひと時。そしてその体験から自分が日本人であること、長い歴史の中では様々なビハインドストーリーとそれを守ってきた人たちがいたことに思いを馳せるいい機会になると思いました。

 

4月1日から14日までと短い期間ではありますが、京都に行く機会があれば是非立ち寄ってみてください。(以下「雛人形展2024予約フォームより要予約)

 

 


山科伯爵邸源鳳院
京都市左京区岡崎法勝寺町77
075-752-1110



山科 言親 Tokichika Yamashina

 

衣紋道山科流若宗家。 一般社団法人山科有職研究所代表理事、同志社大学宮廷文化研究センター研究員。 代々宮中の衣装である“装束”の調進・着装を伝承している山科家(旧公家)の 30 代後嗣。 三勅祭「春日祭」「賀茂祭」「石清水祭」や『令和の御大礼』にて衣紋を務める。蹴鞠や雅楽など御所文化の伝承普及活動にも携わる。

 

NHK「日曜美術館」をはじめ、各種メディアへの出演や、各地での展覧会企画、歴史番組の風俗考証等も行う。旧山科伯爵邸である源鳳院にて宮廷文化を題材にした講演会等の監修、企業や行政・文化団体への講演やクリエイティブに関するアドバイザー等を務めている。世界経済フォーラム(ダボス会議)のグローバル・シェイパーズに選出され、京都HUBの代表として活動する。現在、環境省の有識者委員会委員として京都御苑のデジタルアーカイブ事業推進の他、大阪商工会議所未来社会創成委員会委員なども務める。平成7年京都市生まれ、京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。







島村美緒  Mio Shimamura 島村美緒  Mio Shimamura

島村美緒  Mio Shimamura

2017年からプレミアムジャパンの代表、そして編集長として、日本のいいモノ・コトを紹介中。着物と映画、音楽、ジュエリー、スイーツ好き。

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。

Lounge

Premium Salon

編集部&PJフレンズのブログ

Premium Salon

ページの先頭へ

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。