馬具メーカーとシューズデザイナーがバッグに挑む「SOMÈS SADDLE × HT LABEL」

2016.06.30

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メイド・イン・ジャパンのブライドルレザー

国内屈指の馬具メーカーである「SOMÈS SADDLE(ソメスサドル)」が創業50周年の節目に、シューズデザイナーの坪内浩さんをデザイナーに迎えた「SOMÈS SADDLE×HT LABEL」。ソメスサドルが選び抜いた最高の革に、ファッションを知り尽くした坪内さんがエレガントな意匠を凝らしています。

このプロジェクトは半世紀におよぶ歴史を集大成するという意味で、ポイントは2つありました。一つは外部のデザイナーを起用し、見過ごしがちなヘリテージにスポットを当てること。もう一つは、オール・メイド・イン・ジャパン。それまでおもに海外から仕入れていたブライドルレザー(ロウ引きされたレザー)を日本でつくりました。

ブライドルレザーは牛の皮をベジタブルタンニンでなめし、蜜蝋や獣脂、植物製油を含ませ浸しますが、坪内さんがぜひとも採り入れたいと考えていた技法の“しぼり”では水に浸す工程が欠かせないため、油の配合だけでなく、タンニンの原料にまでさかのぼって一から組み立て直さなければならなかったと言います。完成までに一年以上、こうして海外をもしのぐかつてないブライドルレザーが誕生しました。

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伝統技法をそのまま活かすデザイン

「フリーハンドですーっと包丁を入れていく手さばきに惚れ惚れとし、“しぼり”や“二本針”に象徴される職人技の数々を眼前にして息を呑みました」と坪内さん。シンプルにこの技術を活かしたデザインをしようと思ったと言います。

複雑な形状を一枚の革で象る。これが、“しぼり”です。ヨーロッパ伝統のテクニックで、水に浸し、革の繊維を膨張させた状態でプレス成型し、乾燥により形を整えて完成。ブランドを代表する「CAGE」というモデルは底面まで深く、作るのは困難とされてきました。

「現場は苦労の連続でした。木型を一から起こしてもらいましたが、カーブが1度違ってもうまくいかない。数えきれないほど試作を重ねたそうです。もちろん革は天然のものですから、一枚一枚状態が異なりますし、天候にも左右される。老練な職人技がなければ実現しなかったでしょう」

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