日本の職人技術を、パリから世界に表現する——「アトリエ・ブランマント」総合ディレクター齋藤峰明さんインタビュー〈Vol.1〉

2016.05.13

パリのアトリエから発信するのは
グローバルに進化した日本のモノづくり

1月下旬、パリのなかでもエッジーなショップやギャラリーが集まるマレ地区に、「アトリエ・ブランマント」がオープンした。ここで展示されているのは、日本の伝統工芸の職人とヨーロッパのデザイナーによるコラボレート作品。これまでに見たことのないデザイン・機能に仕上がっている商品を前に、多くのパリジャン・パリジェンヌが関心を示す様子がそこにはあった。

このアトリエで総合ディレクターを務めるのは、1971年に渡仏し、エルメス本社で副社長も務めた齋藤峰明さん。現在はシーナリーインターナショナル代表として「アトリエ・ブランマント」の総合プロデュースを行う。日本の職人技術の新たな可能性を発信すべく、ユニークなアトリエを手がけた齋藤さんに、その真意を伺った——。

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まず興味深いのが、アトリエで展示されているのが繊維、陶芸、木工などの日本の職人と外国人デザイナーのコラボレート作品が中心だということ。その理由はアトリエの目的が、“作品の販売”であることに深く関係している。

「重要なのは、モノは使われて初めて価値が出るということです。しかし、これまで日本の職人さんが作ってきた工芸品はそのままだと、いまのライフスタイルにそぐわないことも多く、現代に合うように編集しなおさないといけません。昔のデザインのままでは通用しないのが現実です。そこで、日本の価値ある技術に海外のデザイナーによる新たなデザインを加え、手にとって使ってもらえるモノを作りたいと思ったんです。ただ“美しい”と言われて終わる工芸品では、将来的に続きませんから」

例えば展示されたのは、最高のキレ味を誇る二唐刃物鍛造所の包丁をドイツ人デザイナーがデザインした刃物や、きめ細やかな年輪が美しい吉野杉によるスピーカーなど。それらは欧米のインテリアとしっくりはまりつつ、使い心地も抜群によいのが特徴。これぞ、日欧のコラボこそなせる技かもしれない。

「いまの日本はライフスタイルがどんどん西洋化しているので、欧米のライフスタイルで使われるものを作らないと日本でも売れない。グローバルな視点で作ったものは日本でもヒットするんです。そのためにはマーケットの需要から商品開発をするべきで、それが日本の伝統工芸の世界に欠けていることとも言えますね」

その一例としてあげたのが、お土産屋などでよく見かける寄木細工だ。

「寄木細工は素晴らしい技術だけれど、作るのが楽な置物やティッシュペーパー入ればかりになるのはもったいない。範囲を広げ、もっとニーズの高いインテリアなどに活用すれば、世界的にも注目される素材なはずです」

そのような日本の優れた素材を海外の建築家やデザイナーに発掘してもらうため、今後アトリエでは、布生地や木工などの素材を展示することも予定している。そうすれば、クリエイターたちから声がかかり、実際に商品開発へと進む可能性もある。「川上(商品開発)から川下(販売)まで、全部やろうと思ってますよ」というのがいまの齋藤さんのチャレンジだ。


この日の取材が行われたのは、「イグアナアイ 青山本店」。パリ在住のデザイナーによるこのフットウエアブランドの日本展開は、齋藤さんが手がけたプロジェクトのひとつ。足袋を連想させるカタチをしたシューズは、素足を好む昔の日本人の暮らしを想起させる、軽く快適な履き心地。

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