日常/非日常のPREMIUM~日常02.イッセイ ミヤケ パルファム~コンテンポラリーな日本を映すプレミアムなモノとコト

2017.10.28


時計の上に香水ボトルが置かれた写真は、下のエッフェル塔のイメージと共に2002年にダニエル・ジョアノーによって撮影された「ロードゥ イッセイ」のイメージ写真シリーズの一部。その香りやボトルデザインと同じように、記憶に残る詩的な表現が私たちの心を捉える。L’EAU D’ISSEY ロードゥ イッセイ パルファム 15ml  ¥19,800(本体価格)/ブルーベル・ジャパン0120-005-130 http://cafedesparfums.jp/brand/ISSEY_MIYAKE/

Photography by Daniel Jouanneau  © Beauté Prestige International

 

日常02.

イッセイ ミヤケ パルファムの「L’EAU D’ISSEYロードゥ イッセイ」

 

 「自然の中で深呼吸しているような」 「『L’EAU(水)』のような透明感のある」 香りを。

1989年、三宅一生が香水を創るにあたり示した「L’EAU D’ISSEYロードゥ イッセイ」の前例のないコンセプトに、当時のヨーロッパの担当者は 「『水』のような香りなど、売れるはずがない」 と異を唱えたといいます。日本とは比べものにならないほど成熟した香水市場を持ち、着ることと同様、あるいはそれ以上に「自分の香り」を持つ文化を育んできた彼らにとって、「『水』のような香り」は理解しがたいものだったのかもしれません。

それでも、「『水』のような香り」 という三宅一生の揺るぎないコンセプトは、当時まだ新進気鋭だった、そして今日ではフランスを代表する調香師、ジャック・キャバリエに託されました。最終的に10種類以上の香りに絞り込まれたものの、まだ何かが欠けていると感じた三宅一生は、キャバリエをある場所に案内します。それは日本の精進料理店でした。古くからの日本のもてなしの作法である「打ち水」がなされ、しめやかな空気が支配する玄関や庭園を二人で散策した後、夕餉を囲み、日本の美の本質に触れる時間を共に過ごしてようやく、キャバリエは三宅一生が求める「『水』のような香り」を汲み取ったといいます。さらに色については、香水の官能性は金色や琥珀色によってのみ表現できるものではない、という考えのもと、「とてつもなく澄んだ、波のような水の色」が求められました。

 ボトルデザインにおいても「ロードゥ イッセイ」は革新的でした。美と同様の重要性を実用性に与え、真の美しさに行き着くためにはシンプルであるべきという哲学の香水に必要なのは、時を超えたデザイン。パリ滞在中のある晩に目にした、エッフェル塔の上で輝く満月がボトルデザインのコンセプトとなり、三宅一生、アート・ディレクターのファビアン・バロン、デザイナーのアラン・ド・ムルグの3名により、円錐形のシルエットのボトルに水晶のような球体のキャップという、普遍的で研ぎ澄まされた美しさを持つボトルが誕生したのです。また、発表時の1992年から97年の広告写真はアービング・ペンが撮影し、その後も気鋭の写真家たちに引き継がれています。こうして、三宅一生の仕事と哲学に魅了された才能溢れるチームによって誕生した「ロードゥ イッセイ」は、豪奢で華美な高級品というイメージが支配していた香水の世界に、全く新しい流れを生み出したのです。

 トップノートは瑞々しいフレッシュな香気を感じるハス、シクラメン、ローズウォーター、フリージア。ミドルノートはシャクヤク、白ユリ、カーネーション。ラストノートは木の香、果実、ムスク。「水」を表現した未知なる香りでありながら、なぜか馴染み深い、遠い記憶の岸辺に導いてくれる香り。私たちの内に潜む記憶と、まだ見ぬ未来が混在しているような香り ――――様々な詩的な表現で「ロードゥ イッセイ」は称えられています。

92年に発表された「パルファム」、「オードトワレ」に続き、94年にはメンズフレグランスの「プールオム」そして96年に「オードパルファム」と「サンミスト」、2011年に「フローラル」、2013年に「アプソリュ」を発表。「サンミスト」は、それ以前にはなかったアルコールフリーの香水で、その後、多くのブランドが取り入れる「サマーフレグランス」の先駆けとなりました。

 「水」という斬新なコンセプトからスタートした「ロードゥ イッセイ」は、「新しさ」と「時を超えること」が相反するものではないことを高らかに証明しました。古代ギリシャの吟遊詩人ホメロスが描いた、武将オデュッセウスの旅の叙事詩「オデュッセイ」の響きにも似た、日本を代表するデザイナーのこの香水は、この先も発表時のスピリットを踏襲しながら、広がり、絶えず流れ続けて、未来へと旅を続けることでしょう。

EMI EDT 2017_100ml+pack_CMYK_83x80_300dpi

誕生から25周年の節目を刻む今年、加わった新しいメンズフレグランス「L’EAU MAJEURE D’ISSEY(ロー マジュール ドゥイッセイ)」。「水」のエレメントの中でも、海をインスピレーションとしたこの新しいフレグランスは、潮風のさわやかさと波のような躍動感を併せ持つ。トップノートはベルガモットとグレープフルーツの爽やかなアロマ。ミドルノートはミネラルをたっぷり含んだ天然成分のアンバーグリスが潮の香り。ベースノートでは静謐な余韻を感じるアンバー系のウッディノート。調香はグラース出身のオーレリアン・ギシャールとファブリス・ベルグラン。 L’EAU MAJEURE D’ISSEY EAU DE TOILETTE ロー マジュール ドゥイッセイ オードトワレ 50ml¥7,700(本体価格)100ml¥10,500(本体価格)/ブルーベル・ジャパン0120-005-130

http://cafedesparfums.jp/brand/ISSEY_MIYAKE/

 

 

選・文 藤野淑恵

TOSHIE FUJINO エディター/ジャーナリスト

「W(ダブリュー)」日本版、「流行通信」、「ラセーヌ」の編集部を経て、2000年春に創刊した「Priv.(プライヴ)」(日経BP社発行)の編集長に。「日経ビジネススタイルマガジンDIGNIO」編集長、オウンドメディア「GENUIN(ジェヌイン)」の編集統括など、クオリティ・マガジンの編集に携わる。センテナリアン時代のクオリティライフ実現に向けて新しいライフスタイルやロールモデルを紹介し、BESPOKE LIVINGを提案することが現在のミッション。趣味・関心事はガーデンツーリズム、オペラツーリズム、ワインツーリズム、チーズ、ガンドッグ、庭造り、オールドローズ、ジェロントロジー、保護犬/猫など。