エリア特集~銀座編~変わり続ける銀座の中、変わらない“信頼”

2017.11.03
ホコ天②

多くの変化に晒されてきた銀座には、多くのタフな議論や交渉がありました。1998年、銀座と中央区は幾度もの協議の結果、「56メートルルール(銀座通り・晴海通り・西銀座通り・昭和通り沿道の建物の最高高さは56メートルとする地区計画)」を策定。しかし、2003年に松坂屋と森ビルによる200メートル近い超高層ビル建設が提案されたことに端を発し、2004年に銀座の開発事業に対する地元からの意思伝達機関・窓口として「銀座街づくり会議」を発足。さらに2006年には中央区が、銀座に新しい建物を建設する際には地元の合意が必要とする、「銀座デザイン協議会制度」を中央区の制度としてもらいました。

これらの議論や計画の策定、協議会の発足等には、銀座が商店主達の集合体だという個性が強く働いているのでしょう。

鶴の一声では、何も動かない。だが、時代の趨勢というひと言で何かを諦めることはしない。粘り強く話し合い、過去を現在に、さらに未来へとつなげていく信念が、街の基礎に深く深く浸透しているのです。

 「昔の資料を繙くと、大正時代には既に行政や交通問題に積極的に意見するために通り会が生まれ、戦前には銀座全体の連絡会を作ろうという動きがあったと分かります。銀座は昔から、信頼を大切にする街。新しい参加企業や商店を含めた街の人々、行政、お客さま、それぞれとどう信頼関係を築くかに、いつも心を砕いていると言えますね」。

 

ginza progressive1
銀座プログレッシヴ 会場 様子

竹沢さんは90年代初頭に研究者組織の社長を務め、その際に資生堂からの委託で銀座を調査・研究する業務を担当。そのプロジェクトをきっかけに多くの銀座人と知り合い、現在の職務へと繋がっていったのだそう。

そんな竹沢さんが本気で銀座に関わろうと思った理由は、「人」にあるそうです。

 「銀座の方達の、信頼感と温かさ。それに惹きつけられたんですね。よく銀座は高級という側面ばかりが強調されますが、人が温かい街なんです」。

 竹沢さんは、銀座らしさとは「信頼」だと言います。

 「銀座で買い物すれば間違いがなく安心という商品や店への信頼。銀座の店で聞けば本当の知識が得られるという人への信頼。これらは“銀座の現在”に対する信頼ですね。さらに、かつて父親が買った銀座で買ったスーツを息子が着られたり、時計も修理しながら使えるなど、“過去”に対する信頼もあると思います」。

 さらにもうひとつ、“未来”への信頼が銀座にはあると言います。

 「自分のために買った物を子どもに引き継げるだけの信頼ある商品が買えるのが、銀座。これは未来への信頼です。さらに銀座の人が、自分たちの後輩を強く信頼していることも、銀座ならではだと思います」。

 現在銀座にあるいくつものルールもまた、10年、20年経ち、次世代が街の中心となった際には、多くの議論をつくし、必要ならよい方向へと変えていけばいいと、銀座の人々は考えているそう。連綿と続く街の歴史の中で、多くのバトンが受け渡されてきた実績は、こんなところにも現れるのかも、しれません。

「銀座通連合会でも、海外企業の加盟社が増え、今後もこの傾向は続くでしょう。今までは日本人同士の呼吸合わせでやってきた議論を、また違った角度からする必要が出てくるかもしれません。でも、いたずらに細かなルールを作って文字化するのでなく、“銀座らしい”商売や文化というのもを互いに共有し、よりよい未来を作っていきたいと考えています」。

 そのためには、銀座自らが情報発信することも必要だと竹沢さん。この9月30日に数寄屋橋公園で初開催された「銀座プログレッシヴ」は、その取り組みのひとつです。トークショーや屋台から、今の銀座を解き明かすこのイベントは今後も継続予定(次回は11月11日、12日の予定です。ginza-progressive.com)。これ以外にも、温めている企画が様々にあるそうです。

 「変わっていくのが、銀座。時代により銀座の顔は変わっているので、祖母、母、娘それぞれが持つ思い出は絶対重ならないのだけれど、“好きな街は銀座”と言ってもらえる信頼関係が、これまでずっとありました。変わっていっても、信頼される。そんな街で有り続けられるよう、私もお手伝いを続けていきます」。

 

第1話:「はじまりは煉瓦街から 銀座150年の歴史 」
第2話:「昭和10年銀座全盛説」
第3話:「街自ら考え、行動する。それが、銀座の個性。 」

 

takezawasan
お話をうかがった人:竹沢えり子さん(銀座通連合会・全銀座会 事務局長・銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会 事務局長)
出版社勤務、企画会社経営を経て、1992年頃より銀座まちづくりに関わる。2011年東京工業大学社会理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。著書『銀座にはなぜ超高層ビルがないのか』(平凡社新書、2013)、共著『銀座 街の物語』(河出書房新社、2006)、『地域と大学の共創まちづくり』(学芸出版社、2008)ほか。

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