パフォーミング・アーティスト 折原美樹が日本人の肉体を超えて踊り続ける理由 ≪後編≫

2017.11.07
20170524_DSC2539a

©Tokio Kuniyoshi

-マーサ・グラハムのプリンシパルとして長いこと、活躍されていましたが、それ以外でも個人の公演活動をしていますね。

はい、2014年から始めました。自分の振り付けも始めました。自分で踊る「共鳴」というタイトルで2、3年のうちに5回はやりたいですね。2014年の第1回は、ミュージシャンの大江千里さんとコラボして大江さんのピアノ伴奏で踊りました。2017年4月に第2回目も公演しました。またIn The Boxという映像、踊り、音楽のコラボの舞台でも踊っています。自分のダンスの時にはマーサ・グラハムらしさを出来るだけ表現しないようにしているのですが、必死に脱皮しようとしていた頃よりも自然にマーサの良いところと自分らしさが調和してきているように感じます。

Miki Senri Amon after concert
After solo concert RESONANCE II with Amon Miyamoto and Senri Oe (ソロ公演後、宮本亜門さんと大江千里さんと  ©Senri Oe)

-踊り手にとって、老いというのは厳しい現実だと思うのですが、どのように年齢と折り合いをつけていくのですか。バレエの老いた白鳥の踊りマヤ・プリセツカヤの「瀕死の白鳥」を彷彿とさせる折原さんの踊りを見てとても感動したのですが。

年を取るのを避けることはできません。20歳の時の肉体とは違うことは明らかです。でも年相応の踊りがあると思うのです。その年だからこそ、その年でなければ表現できない踊りがあると思うのです。ご覧になったのはマーサ・クラークと言う人が作った「ノクターン」(曲はメンデルスゾーンのソングス・ウィザウト・ワーズの中の曲)という作品で、マーサも若い頃にこの作品を踊った時には観客から笑いが起こったそうです。でも年を取り、テクニックだけでなく、人間の深みを表現できるようになると凄味が出てきて、素晴らしい作品として残っているのです。若さだけでは表現できない振り付けなので、また踊ってみたいと思います。

Miki Stephen Peridance Gala
©Peridance  Miki Orihara & Stephen Pier (ハートスクールディレクターで、夫のスティーブン・ピアとPeridanceガラ公演にて ©Peridance)

 

-ご主人もダンサーで振り付け師ですね。同じ職業というのも難しいのではないですか。

夫、スティーブン・ピアとは2001年に結婚しました。ダンサーとは結婚したくないと思っていました。なぜなら、踊れなくなった時にダンサーである夫からもう踊らないほうがいいといわれるのは辛いと思ったからです。でも彼にはそういわれても、そして彼に対してもそうしなければならないのですが、それが大丈夫だと思ったのです。彼もヨーロッパやアメリカなどで活動してきて、いろいろな価値感を理解しているので、信頼関係を築けると思ったのです。

-先ほど、日本人の胴の長さが表現に深みを与えているという勇気が湧いてくるようなことをおっしゃっていましたが、その他に一般的に日本人の魅力は何だと思いますか。

優しくて、真面目、細かいことに気を配り、調和を大事にする。このことに日本人はもっと自信を持つべきだと思います。でももう少し自己主張をしたほうがいいと思います。ダンスでもデュエットの時などは調和も大事ですが、自己主張も大事ですから、このバランスが取れると日本人はあらゆる分野でさらに活躍できると思います。様々な国の生徒に教えていると、一人一人の個性もありますが、お国柄も大きく違います。それぞれに良さがあり、弱点がありますが、いいところを見つけて指導していくのも楽しく、自分の勉強になりますね。

 

折原さんの年を美しく重ねた踊りはダンスを超えて、見る人の胸に迫ります。またあの気迫と哀愁に満ちた「ノクターン」を見てみたいです。人はなぜ、劇場に足を運ぶのでしょうか。人はなぜ、パフォーミングアーツを見るのでしょうか。人間ほど最高のメディアはありません。さあ、今日も素晴らしいパフォーミングアーツを見に劇場に行きましょう。きっと、折原美樹さんの舞台のような魂を揺さぶられる公演に出会えるでしょう。

<プロフィール>

miki orihara head shoot

 折原美樹 

1960年12月1日生まれ。文化学院卒業後ニューヨークに移住。ジョフリーバレエ学校、アルビン・エイリー・アメリカン・ダンスセンター、マーサ・グラハム舞踊学校で学ぶ。1987年マーサ・グラハム舞踊団の正式メンバーになりプリンシパルダンサーとして活躍。日本、アジア、米国、南アメリカ、ロシア、ヨーロッパで公演活動を行う。2010年「ベッシィ賞」ニューヨーク・ダンス・パフォーマンス・アワードを受賞。(プロフィール写真 ©John Deane)

 

インタビュー 伊藤操(ライター、アートプロデュサー)