竹田城の雲海:「美しき城」vol.2 萩原さちこ

2016.02.08

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「日本のマチュピチュ」と呼ばれる天空の城

日本のマチュピチューー。いつしかそう呼ばれるようになった城があります。兵庫県朝来市の竹田城。標高357.7メートルの虎伏山山頂に残る石垣が、雲海から頭を出すのです。その姿は、まるで大海を彷徨う難破船のよう。幻想的な光景は旅行者や写真愛好家によって話題になり、日本屈指の絶景スポットとして有名になりました。数年前には「死ぬまでに見たい世界の絶景」として、世界遺産のモン・サン=ミシェルなどとともに紹介されたほどです。

ぐっと冷え込んだ空気が頬を刺す晩秋の早朝に、その絶景は現れます。重力という言葉を忘れてしまう、ふんわりとした神秘的な世界が、夜明け前の張りつめた空間に突如として開けてくるのです。白い雲は未知の世界へ続くランウェイのようで、そのまま歩いていきたくなるほど。とりわけ日の出直後は太陽の光に照らされて一面が黄金色やピンク色に輝き、しばし時間を忘れさせてくれます。

自然と対峙しているだけなのに、浮遊しているような不思議な感覚に陥るのはなぜでしょう。見ようとするものより、目に入ってくるもののほうが大きいと感じるから不思議です。視力や聴力を奪うような、人間の感覚を超越するエネルギーに圧倒されます。

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