熊本城の宇土櫓:「美しき城」vol.5 萩原さちこ

2016.02.29

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第3の天守と呼ばれた建造物

城というと、まず思い浮かべるのは美しい天守です。ですから、天守が現存していないとがっかりすることもあるでしょう。ところが、城の見どころは天守だけではありません。熊本城の天守は復元されたものですが、城内には天守よりも見逃してはいけない建物がたくさん現存しています。

13棟もの国指定重要文化財のなかでも、必見は宇土櫓です。なにも知らずに連れて来られたら、きっと天守と見間違えてしまうはず。そう、大きさも美しさも天守そのもの。いいえ、それ以上です。内部は5階+地階1階の6階建てと、天守に匹敵する大きさ。大天守と小天守に次ぐ存在感を放つことから、熊本城の“第3の天守”と呼ばれます。

規模だけでなく、装飾も天守にひけをとりません。通常、櫓の壁面は城外側の2面しか装飾されませんが、宇土櫓は天守と同じく4面すべてが破風などで華やかに飾られています。もっとも驚くのは最上階で、天守さながらに高欄(手すり)のついた廻縁というバルコニーまでついています。

そもそも櫓は二階建てが基本形ですから、三重五階地下一階の宇土櫓は特別仕様です。徳川将軍家の居城である江戸城、徳川幕府により築かれた徳川大坂城、尾張徳川家の名古屋城など、幕府系の城には三重櫓が複数ありますが、一般的な大名の城では1棟あるかないかです。熊本城には宇土櫓のほかに、天守を除いて合計6棟の五階櫓が建ち並んでいたというのですから、かつての威容は想像を絶します。

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