オーベルジュ内子:「プレミアム温泉」vol.33 石井宏子

2016.04.09

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春爛漫。夜桜の湯鏡にそっと滑り込む。

しばしうっとりと、見とれて立ち尽くすこの光景。ここが宿の温泉であったことを忘れてしまうほどです。シンプルなデザインに全面ガラスの窓。内湯と露天風呂の温泉は水鏡になって、幻想的な夜桜を映し出しています。かけ湯をするのに桶をいれると、湯面が揺れて、はらはらと散る桜吹雪のよう。とろりとしたお湯に、そっと滑り込み、温泉のぬくもりに包まれて夜桜見物。こんな贅沢がこの世にあるのでしょうか。

オーベルジュ内子は桜の宿でもあります。温泉やレストラン、そしてバーカウンターから眺められる場所は「ソメイヨシノ」例年4月初旬に満開を迎えます。でも、この宿の桜はそれだけではないのです。レセプション棟から、宿泊するヴィラ棟へ向かうにつれて植えられているのは40種類もの「八重桜」。開花はこれからですから、まだまだ2週間以上桜が楽しめるのです。ヴィラの部屋から桜を楽しむならば、4月中旬以降が狙い目。ソメイヨシノの淡いピンクの花吹雪が舞った後は、濃いピンク、白など、カラフルな八重桜の競演が始まります。鶯の鳴く声と桜の花びら。内子の温泉は春爛漫です。

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ゆらゆら揺れる和蝋燭の炎は強く儚く

日本の灯りは、そこにいる人の心までも溶かしてしまう魅力があります。この宿へどうしても出かけたくなる理由は、この灯り。かつて内子町を支えてきた産業のひとつが「木蝋」。後に「和蝋燭」という伝統工芸になって、現在は一軒だけになった大森和蝋燭屋で父と息子2人の職人が手仕事でつくっています。和蝋燭を灯す燭台も内子町唯一の鍛冶屋の児玉さんが、真っ赤に燃える鉄をたたいて作ったもの。これがテーブルに置かれると、美しい夜の始まりです。この宿のディナーの灯りは蝋燭の炎だけ。次第に暮れていく時間とゆらゆら揺れる灯りを楽しむ、ここだけにしかない美しい夜です。

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