弘前城の桜守:「美しき城」 vol.15 萩原さちこ

2016.05.09

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寿命をなくし桜に魔法をかける “桜守”

全国屈指の桜の名所、弘前城(弘前公園)。毎年開催される弘前さくらまつりには、日本中から200万人以上の人が訪れます。カーテンのように揺れるしだれ桜、満開の桜が頭上を覆う西濠沿いの桜のトンネル、ピンクの絨毯のように堀の水面を花びらが埋め尽くす花いかだなど、城内のどこにいても、息を飲む美しい景観に出会えます。

弘前城には、“桜守”と呼ばれる樹木医がいます。52種類約2600本に及ぶ桜の命を守る、桜の専属ドクターです。一般的に桜の寿命は60年ほどですが、弘前城内には樹齢100年を越える桜がなんと400本以上あります。「きちんと手入れをしてあげれば、寿命はなくなるんですよ」と教えてくれたのは、桜守の小林勝さん(弘前市都市環境部公園緑地課)。土質や水質がよほど粗悪でない限り、桜は日々の世話次第で永遠に咲き続けられるのだそうです。延命治療ではなく、寿命をなくしてしまうというのですから驚きです。

弘前城の桜は、たわわに実った果実のようにボリュームがあります。それは、ひとつの花芽のなかにある蕾の数が多いからです。蕾の数は一般的には4つほどですが、今年の弘前城の桜は平均で推定4.5個と多く、なかには7つや8つのものもあります。二の丸与力番所と東内門の間にある日本最古のソメイヨシノ(推定樹齢134年)にも、7つの蕾を持つ枝がたくさんあります。たんまりと密集した蕾が一気に開花するのですから、それは見事な晴れ姿になるのです。水堀を覆うように枝がしなだれるのも、花の重みが理由のひとつです。

花びらの1枚1枚がみずみずしく、生命力に溢れているのも魅力です。花びらは心なしか厚みがあり、ふくよか。シルエットがはっきりしていて、咲いたそばから萎んだり傷んだりせず、美しさを保ったまま風に舞っていきます。それはまさしく、桜が健康で花びらの1枚1枚にまで栄養が行き渡っていることの証。

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