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優美と夢幻、そして大衆性。今宵は、秋田・西馬音内盆踊りへ:「今宵も盆悩まみれ」 vol.22 佐藤智彦

2016.08.26

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美しい衣装と優雅な踊り。亡者踊りの雰囲気が夢幻の世界へ誘う

ボクが西馬音内(にしもない)盆踊りをはじめて見たのは2013年、毎年10月に伊勢神宮で執り行われる神嘗奉祝祭「祭のまつり」でのこと。まずは美しい端縫い衣装と編笠を被った姿、そして藍染の浴衣に彦三(ひこさ)頭布を被った姿と、神秘的な亡者踊りの雰囲気に圧倒された。さらに、優雅で舞うような振りと、力強い太鼓にかなりきつめの(失礼!)方言で唄われる地口(じぐち/歌詞のこと)と甚句が印象的な囃子方、この一体となった独特の世界観にすっかり魅了されてしまったのだ。

いつかは現地の雰囲気の中で見てみたいと思い、今年こそは、といざ実行。岐阜で郡上おどりと白鳥(しろとり)おどりを堪能したその足で秋田県・羽後町へ移動。二日目となる8月17日と最終日18日の二日間、本場の空気に触れることにした。

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羽後町の中心を流れる西馬音内川

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町のいたるところに西馬音内盆踊りのモチーフが見られる

岐阜から富山へ抜け、日本海側を北上することおよそ700km。田畑に囲まれた羽後町に着き、西馬音内盆踊りの会場となる本町通りを目指す。ふだんは静かだという通りには篝火が焚かれ、通りの両側には観覧用の有料席や店舗の2階や櫓に用意された桟敷席が並び、観光客で大変な賑わいだ。時間になると通りには踊り子たちが登場し、夢幻の世界へと誘う。

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夜、二万石橋を渡って盆踊り会場に向かう人たち

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開始を待つ観光客たち。外国人の姿も多く見られる

さて東北を代表する盆踊りであり、阿波踊り・郡上おどりと並んで三大盆踊りの一つとされる西馬音内盆踊りは700年余りの歴史を持つといわれる。源親上人が開創した蔵王権現(現・西馬音内御嶽神社)境内で踊った豊作祈願の踊りがルーツの一つとされる。さらに400年前に滅んだ西馬音内城主・小野寺茂道とその一族の霊を慰めるために踊った盆踊りがもう一つ。この二つの踊りが一体となって寳泉寺境内で踊られるようになり、天明年間(1781~1789)に現在の本町通りへと移り、継承されている。

大正年間には、風俗を乱すものとして警察に弾圧され、一時は衰えたこともあったものの、復興を望む住民感情の高まりや、私財を投げ出す地主の活動もあって再び復興。昭和10年(1935年)には「第9回全国郷土舞踊民謡大会」に出場したことで全国的に広く知られるようになり、昭和56年(1981年)には国の重要無形民俗文化財に指定され、初の海外公演となる「サンフランシスコ桜まつり」に出演。今では毎年8月16日から18日の三日間踊られ、数多くの観光客も訪れる一大イベントとなっている。

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櫓の上の囃子方

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いよいよ盆踊りがスタート!最初は子どもの踊り子が中心 

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