旅行

「美しき城」 vol.48

熊本城の今:城郭キュレーター 萩原さちこ

2016.12.26

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難攻不落の名城・熊本城を襲った出来事

城にまつわる2016年最大の出来事は、4月に起きた熊本地震による熊本城の被害でしょう。未曾有の大地震は、熊本城にも大きな影響を及ぼしました。

4月14日の前震(M6.4)では、国指定の重要文化財建造物10棟が被災。この時点の被害は深刻でありませんでしたが、4月16日本震(M7.3)で甚大なものとなり、13棟の重要文化財建造物はすべて被災しました。北十八間櫓と東十八間櫓の2棟は全壊、五間櫓や長塀など3棟は一部倒壊、そのほかの建造物では屋根や壁が激しく破損。復元建造物は20棟が被災し、石垣の崩壊や壁の破損も広範囲にわたりました。

とくに石垣の被害が深刻で、崩落に加え部分的な膨らみや緩みなどの被害は517面(うち崩落50か所、229面)、約2万3600平方メートルに及びます。全体の約30パーセントです。

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石垣崩落のメカニズム

新聞などの報道を通じて、石垣の内部構造を初めて知ったという人も多いのではないでしょうか。石垣は、内部に裏込石(栗石)と呼ばれる小石がびっしりと詰まっています。小石と小石の間に隙間があることで排水が助けられ、また隙間に振動を吸収し分散する機能があります。

ところが揺れが一定のレベルを超えると、圧力がかかりすぎて小石間との隙間が詰まり機能しなくなってしまいます。上下左右から圧力がかかることで裏込石の隙間が詰まって沈下し、外側に押し出されます。すると石垣の表面に「はらみ出し」と呼ばれる膨らみが生じ、耐えきれなくなると内側から爆発するように崩落します。ですから、石垣が自然崩落する場合は、上部や端からではなく、中央部分から破裂するように崩れます。

石垣の隅部(隅角石)は、長方形の石材を長辺と短辺が交互にかませて積む算木積みで重さを分散し、強度を高めてあります。“奇跡の1本石垣”と報道された飯田丸五階櫓の南東隅がまさにその例で、石垣の中央付近は崩れたものの、隅角の6~7石は柱状に残りました。1列の隅角石だけで、重さ約17トンの櫓を支えています。

大きくはらみ出してしまった石垣は、積み直すしか方法はありません。現在の熊本城内で緩みや膨らみが確認できる石垣は20パーセント近くもあるといいます。

 

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