「美しき城」 vol.49

御坂城と富士山の絶景:城郭キュレーター 萩原さちこ

2017.01.09

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冠雪の富士山をのぞむ、日本一高い城

鎌倉時代から室町時代にかけて、城は高い山に築かれるのが主流でした。もちろん、地域差がありますから標高や規模はさまざまです。そのうち、全国でもっとも標高の高いところにある山城といわれるのが御坂城です。標高はなんと、1570メートル以上にも及びます。

通常であれば、城は山の最高所に主郭(中心となる区画)を置きます。そして、周辺の尾根や斜面を削ってスペースを配置し、その間を堀で仕切って独立させます。ところが御坂城の場合は、御坂峠を取り込む形で両翼に広がる東西の尾根に城が築かれているのが特徴です。御坂峠は、かつて甲州(現在の)から駕篭坂峠、御殿場、足柄峠を超えて鎌倉を結ぶ主要街道だった鎌倉往還御坂路のルート上にあり、富士吉田側と甲府盆地側を往来するとき必ず通る場所。その峠が城のほぼ中心を貫通するようにつくられているのです。

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葛飾北斎も描いた絶景

浮世絵師の葛飾北斎による江戸時代後期の「冨嶽三十六景 甲州三坂水面」には、御坂峠から見える富士山が描かれています。この景観を思わせる絶景が、登城口となっている御坂隧道の富士河口湖町側入口横にある天下茶屋前からのぞめます。「甲州三坂水面」のように河口湖面に映る逆さ富士は見られませんが、この季節であれば冠雪した美しい姿に出合えます。この場所には文豪も訪れたようで、作家の太宰治も天下茶屋に滞在して執筆活動をしたといわれています。

標高1294メートルの天下茶屋から50分ほど歩くと、標高1596メートルの御坂山山頂に到着。ここからさらにいくつかのピークを越えながら尾根伝いに西へと進むと、やがて城域に入ります。長く険しい道のりですが、途中にもいくつか富士山をのぞめる絶景ポイントがいくつかあり、疲れを癒してくれます。

 

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