「美しき城」 vol.51

岩櫃城と真田家:城郭キュレーター 萩原さちこ

2017.01.23

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岩盤が露出した、天険の要害

むき出しの岩盤が異様な雰囲気を醸し出す、吾妻川の北岸にそびえる岩櫃山。岩櫃城は、標高802メートルのこの山に築かれています。山城ファンなら唸る、堅牢な名城です。

天守や石垣が誕生する前、南北朝時代や戦国時代は山を城地とする山城が主流でした。豪壮な石垣はなく、土づくりの城です。一般的に山城は山頂に築かれますが、岩櫃城は例外で、山頂では標高594メートルの中腹に築かれています。

とにかく、岩肌が露出した特異な外観が印象的でしょう。まさに天険の要害という表現がぴったりで、迫り来る敵を睨にらみつけるような威圧感があります。

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武田氏滅亡の命運を分けた城

岩櫃城といえば、昨年の大河ドラマ「真田丸」での登場が記憶に新しいところではないでしょうか。そう、真田昌幸(真田信繁の父)が追い詰められた武田勝頼を迎え入れようとしたのがこの城です。しかし実現はせず、結果的に武田氏は滅亡することになります。昌幸が勝頼のために築いた居館跡(潜龍院跡)があり、少なくとも受け入れ準備はされていたとみられています。

1563(永禄6)年、武田信玄の家臣だった真田幸隆(真田信繁の祖父)が岩櫃城を攻略し、以後、岩櫃城は信玄の西上州経路における拠点として機能しました。上杉謙信の関東進出の動きを察知する戦略拠点も担っていました。謙信が没すると武田氏の拠点として支配的な城へと変貌したとみられ、1582(天正10)年に武田氏が滅亡し、その後織田信長が横死すると、北条氏との抗争へと突入しました。

 

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