プレミアムジャパン・アートプロジェクト<建築家シリーズ> Vol.24

建築と社会の幸福な連帯を目指す建築家、大西麻貴+百田有希(後編)

2017.03.30

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皆が同じ方向に机を並べている不自然さ

「『Good Job! センター香芝』は小説に喩えるなら、ヴァージニア・ウルフの『波』に似ていると思います。小説の中で6人の個性の異なる人物のモノローグが重なり合うように、様々な居場所が同時に目に飛び込んでくる多声的な空間となりました」と大西。さらに彼女はこのプロジェクトが秘めた可能性について話を続けた。

「この施設に限らず、大勢の人が使う建築は管理という観点で語られがちですが、私たちは管理という言葉は好きではありません。視察に来た人たちからは『閉じていないことが信じられない』と言われたりしました。この建物では、個室がほとんどなく、人と人を壁で完全に隔てたりといったこともほとんどしていません。

見学に来た人は音のことなどを気にしますが、たんぽぽの家の人たちは皆さん大らかで、それが空間の雰囲気にもなっています。皆が思い思いの場所で、自由に仕事をしている様子を見ていると、私たちが普段同じ方向に机を並べて仕事をしていることをむしろ不自然に感じます」

現在彼らは、図書館のリノベーションや公民館のプロジェクトにも携わっている。公共の仕事では建物が完成し、それが使われる様子のイメージを多くの人々と共有し、それを具体化することが建築家に求められる。

「最近は、建築をつくることが社会的に望まれていないと感じることもあります。しかし私たちは、建築をつくることは素晴らしく、創造的であることを多くの人と一緒に味わいたいと思っています」と大西は語る。

社会に必要とされる建築を目指すことで、建築の持つ創造的な可能性をより押し広げる。彼らが追い求めているのは、スタイルの追求を超えたところにある、建築と社会の幸福な連帯と言えるだろう。

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【プロフィール】
大西麻貴(おおにし・まき)
1983年愛知県生まれ。2006年京都大学工学部建築学科卒。2008年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2008年大西麻貴+百田有希/o+h設立。2016年より京都大学、横浜国立大学、法政大学非常勤講師。

百田有希(ひゃくだ・ゆうき)
1982年兵庫県生まれ。2006年京都大学工学部建築学科卒。2008年京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。2008年大西麻貴+百田有希/o+h設立。2009~14年伊東豊雄建築設計事務所勤務 。
http://onishihyakuda.jp/

取材・文/鈴木布美子、撮影/岸本咲子、コーディネート/柴田直美

 

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