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第7回《前編》:アジアにおける“日本の美食力”はどうなるか!?~2018年の「アジアベストレストラン50」いよいよ発表

2018.03.25
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2016年に「アジアベストレストラン50」を受賞した日本のレストランのシェフたち。このランキングに入るには、日本国内だけでなく、アジア圏全体からの支持を得なければならない。

ジア圏のトップ50のレストランを決める、「アジアベストレストラン50」の2018年のアワードが、来る3月27日にマカオで開催される。このアワードは「世界ベストレストラン50」の地域アワードとして2013年にスタートした。広大なアジア圏30弱の国と地域を対象にした、レストランの人気ランキングである。今年で、早くも6回目を迎えることになった。国や地域や食ジャンルは不問。あらゆるレストランが対象になるところが、ユニークな点だ。この一年のアジアにおけるレストランの隆盛や人の動きが、一目瞭然になるリストでもある。平たく言えば、アジアの今年の“美食力”を表す指標でもあろう。否、食だけでなく、深読みすれば、国や都市における、観光誘致や流通や広報的なパワーの指標にもなるので、食の専門家でなくとも注目して欲しいと願う。

「アジアベストレストラン50」アワードの模様(2017年)

今年6回目を迎える「アジアベストレストラン50」のアワードは、3月27日にマカオで開催される予定。こちらは、昨年の受賞シェフたちの様子。

 

ここで、あらためてこのアワードの趣旨と、仕組みを整理しておきたい。

まず誤解しないでほしいのは、このアワードは投票による人気ランキングで、レストランやシェフへの評価だけではないということだ。この点だけは、チェアマンとしても、はっきり申し上げておきたい。それは、投票の仕組みからも明らかだ。オフィシャルサイト内に、投票方式のページがあるので詳しくはそちらを参考にして欲しいが、かいつまんで言えば、アジア圏にいる投票者(シェフや食の専門家やジャーナリスト)318人の投票によって、毎年の50のランキングが決められるものである。 

「アジアベストレストラン50」オフィシャルサイト
https://www.theworlds50best.com/asia/en/our-manifesto.html#

 

こで最も重要なキモは二つあって、①投票者は過去18ヶ月以内に実際に訪れたレストランしか投票できないこと。そして投票内容は個人に委ねられていて、②理由はなんでも構わない、ということである。まず①から何を読み解くかと言えば、そのレストランの集客力がものをいう、ということ。それはレストランの実力はもちろんのこと、その店がある街や都市、国へのアクセスのし易さという要素も見逃してはならない。その都市への交通の利便性や治安もそうだろうが、実は行政、とりわけ各国各都市の政府観光局の強さなども影響する。逆に言えば、食やレストランが旅行の理由の最優先になる昨今、国や都市の行政が、レストランを支援するのは、道理というものだ。まあこのあたり、アジア各国の動きと比べ、残念ながら、いまのところ日本は感度が鈍いと言わざる得ない。

②の投票理由もこのアワードならではのユニークなところ。日本の人は、レストランと言えば、すぐに「美味しさ」に重きを置きがちだが、このアワードの評価は味だけではない。先のアクセスのしやすさもそうだが、レストランのインテリアやデザイン性、楽しさ、意外性、演出力、スタッフのもてなし、シェフの個性や哲学なども投票の理由になる。

 

く引き合いに出されるミシュランと比較すると明快だ。ミシュランは、その店の料理に対する“評価”が星の数でなされる。その基準がある程度一貫しているから、良くも悪くも星が大きく入れ替わることもない。一方、「ベストレストラン50」は、数多くいる投票者による毎年の投票で決まる人気“ランキング”なのである。評価と人気ランキング。双方には、それぞれ理念や公平性を担保するシステムがあり、利点と面白さと一長一短があり、単純に比べるものではない。この「ベストレストラン50」のランキングに対して、「あのレストランより、もっと美味しいところがある」というような意見は日常だが、それは問いかけから論点がずれているのである。

とは言え日本という国が、豊かな食材や食文化、優れた料理人の数とレベルにおいて、世界トップレベルであることは世界が周知しているところだ。日本人としてもチェアマンとしても、日本のレストランの活躍を誰よりも望んでいる。幸い、今年のランキングにおいて、日本は過去最多のランキングが期待されている。合わせて初ランクインのニューカマーの期待も高い。

 

昨年バンコクで開催された会場の模様。レッドカーペットが敷かれ、文字通り「食のアカデミー賞」に相応しい演出。

 

して、マカオでの初開催というも注目してほしい。マカオがこのアワードを招致した理由は、カジノだけでなく美食でも観光誘致を目論む魂胆だということだ。そうそう、最後にこの美食の祭典の隠れた見所を一つ。授与式はレッドカーペットが敷かれ、ドレスコードもブラックタイ。ドレスアップしたシェフたちの英姿を見られるのも、このアワードの一つの魅力だ。シェフやフーディーズを、ファッション性でもセレブレートするところも、日本と大きく違うところ。そうした演出も、一つの“美食力”であることを知ってほしい。

 

初入賞を果たした時のフロリレージュの川手寛康シェフとの一コマ。ブラックタイのドレスコードを守り、個性的に演出する川手シェフには敬意を感じる。アワードの模様は各国のメディアを通じて世界配信されることもあり、国際的なステージでは、シェフであろうと、いやシェフだからこそ服装戦略も重要なのであると思う。

 

になる今年のランキングは、速報としてこのプレミアムジャパンでマカオからお伝えする予定だ。

 

《後編に続く》

 

<プロフィール>

中村 孝則(なかむら たかのり)

コラムニスト。1964年神奈川県葉山町生まれ。ファッションからカルチャー、旅やホテル、ガストロノミーからワイン&シガーまで、ラグジュアリー・ライフをテーマに、執筆活動を行っている。また最近は、テレビ番組の企画や出演、トークイベントや講演活動も積極的に展開している。現在、「世界ベストレストラン50」日本評議委員長も務める。剣道教士7段。大日本茶道学会茶道教授。