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第7回《後編》:アジアにおける“日本の美食力”~「アジアベストレストラン50」 2018結果発表!日本評議委員長からの総評

2018.03.30
サンペレグリノとアクアパンナがスポンサーを務める2018年度の「アジアベストレストラン50」

サンペレグリノとアクアパンナがスポンサーを務める2018年度の「アジアベストレストラン50」。第6回目を迎えた同アワードで入賞したシェフたち。今年は、11の国と地域から選ばれた。日本は国別として最多の11軒のレストランがランクインした。

 

サンペレグリノとアクアパンナがスポンサーを務める、2018年度「アジアベストレストラン50」の授賞式が、去る3月27日にマカオのウィン・パレスで盛大に開催された。このアワードは2013年から始まり、今年で6回目を迎え、初のマカオ開催となった。筆者は第1回から全て参加しているが、今回はその変遷を踏まえて、日本評議委員長(チェアマン)の立場から、このアワードを振り返ってみたい。


2位の「傳(東京)」は、本年度の「日本のべストレストラン」 賞も獲得した。壇上に登った 長谷川在祐シェフは、その喜びをスタッフと共に分かち合った。

 

結果の詳細は下記の一覧をじっくりご覧いただきたいが、日本からは「傳(東京)」を筆頭に過去最多となる、11軒のレストランがトップ50入りを果たした。この数は、今回の国別ランキングとしても最多を誇る。それだけではない。部門賞でも日本人シェフとレストランが「最上位新規入賞レストラン賞」に「ラシーム(17位、大阪)」、「シェフズ・チョイス賞」に「NARISAWA( 6位、東京)」、「アジアのサステナブル・レストラン賞」に「レフェルベソンス(20位、東京)」の3つの賞を獲得した。日本のレストランの人気と実力を国内外に示した目覚ましい結果であったと、内外のメディアや関係者からも多くの賞賛の声や評価が寄せられている。 

 

 

まず、ランキングに関して特筆すべき点は、昨年11位だった「傳」が大きくジャンプアップして2位にランクインしたことだ。同じように3位に躍進した「フロリレージュ(東京)」とともに、アジアNO.1の座を巡る争いは会場を大きく湧かせた。今年はトップ5のうち、1位の「Gaggan (タイ・バンコク)」以外すべて入れ替わるという、大きな変動となった。全体の50のリストでも、8店が新たにランクイン。再登場の2店を含めて、10のレストランが入れ替わった。こうした動きは過去6年間にも例がない。

トップ5に象徴されるのだが、今回大きく躍進したレストランに共通する要因は何かといえば、積極的に海外に出向いて活動を行ない、かつアクティブな情報発信を行なっていることが挙げられる。彼らはポップアップ・レストランやシェフ同士のコラボレーション、あるいは学会やトークイベントを通じて、海外ファン獲得に繋げている。彼らはそうした活動を積極的にSNSなどで情報配信している。そうした情報をキャッチアップして、レストランの訪問の動機付けにしている若いフーディーズや投票者が、近年増えつつあると筆者は感じている。特にシェフ同士のコラボレーションは、相互の技術力や発想力の向上だけでなく、ファンを共有するメリットもあるだろう。

今回、初のマカオ開催で入賞したシェフたちと。来年の「アジアベストレストラン50」2019年も、このマカオで開催されることが決定。もちろん筆者もチェアマンとして参加する予定。日本のナンバーワンが期待されるだけに、注目してほしい。

それとは逆に、発信よりクオリティや料理哲学を追究するレストランが高い順位をキープし続けることも、見逃してはならない。初回から入賞を続ける「NARISAWA(6位、東京)」は、シェフたちが投票する「シェフズ・チョイス賞」を受賞したことは重要な意味を持つ。同じく初年度から入賞している「日本料理 龍吟(9位、東京)」や、「HAJIME(34位、大阪)」といった、クリエーションに磨きをかけ続けているレストランにも高評価がなされている。料理を巡るクオリティを優先する投票者たちがいることも、このアワードの多様性であり読み解きどころでもあると思う。

左から、今回復活での入賞を果たした「ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ(48位、福岡)」の福山剛シェフ、「シェフズ・チョイス賞」を受賞した「NARISAWA (6位、東京)」の成澤由浩シェフ、「フロリレージュ (3位、東京)」の川手寛康シェフ。

 

多様性という意味では、「ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ(48位、福岡)」や、ラシーム(17位、大阪)」のように、東京以外でフランス料理を追求するレストランが入賞したこと。あるいは東京であっても、イタリア人のシェフ、ルカ氏が日本の食材でクリエーションする「イル・リストランテ ルカ・ファンティン(28位、東京)」が初入賞したことも注目して欲しい。“多様性”というのは、このアワードの隠れた理念でもあるのだ。

 


6年連続で入賞した「HAJIME(34位、大阪)」の米田肇シェフは、昨年のミシュラン三つ星昇格に続き、その実力を示した。

 

 初入賞を果たした「イル・リストランテ ルカ・ファンティン(28位、東京)」のルカ・ファンティン シェフも喜びを全面で表現。

 

第7回のコラム《前編》でも触れたが、このアワードはレストランの味の評価だけではない。あえて一言で表現すれば、「ダイニング・エクスペリエンス」なのだと思う。そのレストランを知り興味を持ち、足を運ぶ。その上で空間や時間を体感する。それこそがエクスペリエンスなのだ。その結果が、このランキングに現れていると解するべきであろう。裏を返せば、情報配信にはじまり、皿の最後の盛り付けの微細に至るその全てが、レストランのパフォーマンスに含まれる時代になったということだ。いい悪いは別として。そのどの部分が評価されているのかを読み解くのかが、このランキングの面白さでありユニークさなのだと思う。ある意味で、読み手あるいは食べ手にもリテラシーが求めれる時代に来たのだ。この最新ランキングを参考に、ぜひご自身で、まずは日本のレストランに足を運んで欲しいと願う。海外のレストランについては、別の機会にお伝えするとして、入賞された日本のレストランにあらためて、おめでとう!の言葉を贈って締めくくりたいと思う。

 

<プロフィール>

中村 孝則(なかむら たかのり)

コラムニスト。1964年神奈川県葉山町生まれ。ファッションからカルチャー、旅やホテル、ガストロノミーからワイン&シガーまで、ラグジュアリー・ライフをテーマに、執筆活動を行っている。また最近は、テレビ番組の企画や出演、トークイベントや講演活動も積極的に展開している。現在、「世界ベストレストラン50」日本評議委員長も務める。剣道教士7段。大日本茶道学会茶道教授。