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《第1話》杉本博司氏(現代美術作家)× 齋藤峰明(エグゼクティブ・キュレーター)

2018.07.11
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1990年代以降の世界的な美術シーンで、最も成功を収めたひとりと言われる、現代美術作家・杉本博司さん。プレミアムジャパン エグゼクティブ・キュレーターの齋藤峰明とは、齋藤がエルメスジャポン社長を務めていた2003年に銀座メゾンエルメスフォーラムで行われた「歴史の歴史」展などを通じ、旧知の間柄です。写真からそのキャリアをスタートし、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、造園、執筆まで、多岐に亘る活動を長年続けてきた杉本さんに、「内なる日本的なもの」を中心に、お話を伺いました。

 

之浦測候所とは何か

齋藤峰明(以下、齋藤)
お久しぶりですね、杉本さん。ご活躍は遠巻きながらも拝見していますが、最近はなかなかお会いする機会がなく……。今回は対談にご登場いただき、ありがとうございます。

最近の杉本さんのトピックといえば、やはり昨年2017年10月、神奈川県小田原市に開館した江之浦測候所ですよね。能舞台や茶室、ギャラリーなどを持つ、芸術文化施設。アートの出発点に立ち戻って人類の将来を考える場所であり、構想から竣工まで20年以上かけて進められたプロジェクトだと聞いています。僕も先日伺いましたが、非常に素晴らしい場所でした。

杉本博司(以下、杉本)
箱根外輪山を背にして、相模湾を望む場所にありましてね。実は1周年を機に、見学エリアを拡大しようと考えているんですよ。今の倍になりますね。

© 小田原文化財団

 

齋藤
それはすごい!今でもかなりの広さだと思いますが。

 

杉本
現状ですと、早い人であれば1時間ほどで1周回れますが、拡がると3時間はかかる計算になりそうです。

齋藤
杉本さんは江之浦測候所の開館に際し、「新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し点の夏至、通過点である春分と秋分。天空を測候する事にもう一度立ち戻ってみる、そこにこそかすかな未来へと通ずる糸口が開いているように私は思う」と語られていますね。地球と太陽の位置を観測し測候することを強く意識され、「冬至光遙拝隧道」や「夏至光遥拝100メートルギャラリ−」などを作られています。神社を作ったりはなさらないんですか。

杉本
磐座(いわくら)というのですか、天然記念物のようなものを見つけたんです。榊の森を通って行く場所に、それをお祀りするという形で神社を作ろうと考えています。

© 小田原文化財団

齋藤
測候所のある場所は、一面のミカン畑ですよね。あんないい場所はない。本当によく見つけられました。

 

杉本
日本中でもあれほどの場所はないと、私も思います。もっともっと江之浦に注力したいのですが、70歳を過ぎたというのに何かとお声がけをいただくことが多くて、なぜか忙しい(笑)。

に流れる日本的な美意識への覚醒

齋藤
杉本さんは1970年、22歳でアメリカに渡られ、現在もニューヨーク在住。僕も71年に19歳で渡仏しましたが、昔から杉本さんと似ていると思う点があります。それは、日本との関係です。杉本さんはアメリカにいながらずっと、日本について深く考えていらっしゃいましたよね。国際的に高い評価を受けてきた写真作品やその活動の根底には、いつも日本というものが流れていたと感じます。杉本さんは、ご自身の「内なる日本的なもの」をどう位置づけているのでしょうか。

杉本
日本的な美意識が、自分の身体の中に、血として流れているのです。ただそれに気づいたのは渡米後。学生時代は日本よりヨーロッパに興味があり、大学の経済学部では唯物論やマルクスなどを学びまして、日本美術史などには一切興味がありませんでした。

しかし22歳で海外に出てみると、日本についてたくさんの質問を受けたんです。LAのアート・センター・カレッジ・オブ・デザインに通っていたのですが、70年代のカリフォルニアは禅イズム全盛期でしたしねぇ。「これはまずいぞ」と感じて、自分なりに日本美術史や哲学史を学ぶようになりました。

 

《本対談は全4回を予定しています。第2回に続く》

 

<プロフィール>

杉本博司

現代美術作家。
1948年東京生まれ。1970年渡米、1974年よりニューヨーク在住。活動は写真、彫刻、演劇、建築、執筆など多岐にわたり、現在も精力的に新作を発表。作品はメトロポリタン美術館をはじめ、世界中の著名美術館に収蔵されている。2008年に建築設計事務所「新素材研究所」を設立。そして、2009年公益財団法人小田原文化財団を設立。2017年10月、小田原市に「江之浦測候所」を開館する。2001年ハッセルブラッド国際写真賞、2010年秋の紫綬褒章、2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ叙勲、2017年文化功労者ほか、受賞・受章多数。

 

公益財団法人小田原文化財団
◆小田原文化財団 江之浦観測所
所在地: 神奈川県小田原市江之浦362番地1
TEL:  0465-42-9170(代表) 
休館日:   火曜日・水曜日、年末年始および臨時休館日
入館料:   一律3,000円(税別)
       ※完全予約・入れ替え制(事前チケット購入、当日券なし) 詳細はコチラ

https://www.odawara-af.com/ja/enoura/

 

構成/木原美芽、写真/山村隆彦(人物)