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《第2話》金井政明さん(株式会社良品計画代表取締役会長)× 齋藤峰明(エグゼクティブ・キュレーター)

2018.10.26
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プレミアムジャパン エグゼクティブ・キュレーターの齋藤峰明と株式会社良品計画代表取締役会長・金井政明さんとの対談の第2回。誕生時から息づく社会意識と、日本のモノづくりと対比した無印良品の位置づけお話いただきます。

印良品は現代の民具

齋藤:

特に欧米などでは、企業に対し社会に対する姿勢を求めていると感じます。これだけ無印良品が受け入れられているのは、モノと同時に社会が求めている姿勢を提供しているからだという気がしますね。

金井:
そうおっしゃっていただけるとうれしいですが・・・頑張ります!(笑)
2~3年前NYの講演の後、ジャーナリストが「MUJIは現代の“民藝”だ」という表現をしたんですが、それは違うと思ったんですよ。“民藝”は、ちょっと中途半端な気がするんです。いわゆる日本の伝統工芸は、そもそも武家から公家などが使う“工芸品”の領域で発展してきたもの。対して大蔵大臣でもあり民俗学者でもあった渋沢敬三さんたちが追求したのが“民具”。生活上での工夫や知恵がそのまま形になっているので、美しくしようという意図はまったくない。じゃあ“民藝”はというと、その間。民具も欲ある人間が「もう少し美しくなるんじゃないか」と手を加えたり、著名な作家が手掛ければ“民藝”になってしまうわけです。

私はジャーナリストの“民藝”という表現を聞いて「いや違う、MUJIは“民具”だ」と思ったんです。MUJIは“民具”の領域を徹底的に追求すべきで、“民藝”と表現すると難しい無印良品がもっと難しくなってしまいます。(笑)
現在良品計画には、オリジナルのデザイン家具のブランドIDEEもありますが、そちらはいわゆる“民藝”、あるいは“工芸”の領域。MUJIはあくまでも“民具”というということを探求したいんです。

齋藤:
民具でミニマルなデザインというと、例えばアメリカのシェーカー教徒の考え方が近い?

金井:
確かに彼らも自分たちの生活のために必要なものを作り、売ろうとは思っていない。(後から販売もしましたが)自分たちが使うわけだから、ロゴを入れる必要もないので、ノーブランド=無印なんです。ただおもしろいもので、椅子の見えないところに自分のイニシャルを入れてたりするんですよね。以前社員に、その気持ちはわからないでもないと話したことがあるんです。ある日、無印良品の靴の後ろに反射板のラインが入っていて、反射板のデザインとサイズの意味を聞いたら、その幅が6.4cm。6(ム) 4(ジ)だと言うから、あぁ、シェーカーの職人さんと一緒だと笑ってしまいました。

齋藤:
それ、いいじゃないですか(笑)
社員としての主張、誇りを持ってらっしゃるからでしょうし。作る人のアイデンティティの現れですからね。

以前有楽町店にうかがった時、カラフルなコーナーがあって、なぜMUJIに色のついた家具が?と思ったらイデーの家具だったんです。無印良品は、ある意味ストイックな思想。でも人間は同時にエピキュリアン的なワクワクするものも欲しいと思うはずだと。横軸と縦軸というか、ストイックなものと色気があってワクワクするものの両方で成り立っているという意味で、イデーと無印良品が存在するのでしょうか?

金井:
そうです。やっぱり生活にはファッションもアートも欲しい。そこをいいバランスで生活したいと思うんです。私たちは無印良品を“裏方の商品”とも言っているんです。例えば、カッシーナの家具を使っている人が、ダストボックスの選択に困るかもしれない。その時、無印良品のようなデザイナーの名前も何の表現もないシンプルなダストボックスの方が、その空間にマッチする。そんな感覚があるんです。

イデーを表すなら、90年代の頭に考案した“ブルー無印”が近いかも知れません。「わけあって、安い」という当時の無印良品のキャッチコピーに対して、「わけあって高い」というのもやろうじゃないかというのが“ブルー無印”。 “民具”の無印良品だけではなく、生活には民藝や工芸も必要。それをイデーでやろうと思っています。


イデーショップ自由が丘店 (写真提供:良品計画)

齋藤:
実は今回初めて言うのですが、私がエルメス社長の時、無印良品とコラボレーションした店を作りたいと妄想したことがあって(笑) 昔ながらの木造の商店を利用して、無印良品とエルメスを両方扱う店にしたいと真剣に思っていたんですよ。でも言い出せなくてそのままに(笑) 僕はたまたまエルメスの延長線上で考えていましたが、無印良品とイデーやブルー無印の考え方をお聞きして、すとんと納得できました。

金井:
両方あるからいいと思うんです。両方がなくて、一般的なショッピングセンターにあるようなファッションだけだったら、つまらない社会ですよね。

会への意識は誕生当初から

齋藤:
世の中って無印が提案する方向に進んでいる感じがあるんですよ。でも会議室に掲げられている田中一光さんが残した言葉を見ると、そもそも無印良品を立ち上げた時点で、そういう考えだったんだなと驚きました。

『地球資源の枯渇、環境汚染、交通・都市の問題、産業や生活の廃棄物、さらに福祉や高齢化社会問題など、いままで豊かな生活だけを追い求めたデザインに、いくつもの課題が山積してきた。デザインがこうした時代におせっかいな概念にならないよう、注意しなければならない。』

これは田中さんがいつ書いたものですか?

金井:
1995年の著書の言葉です。無印良品では、最初からこういう議論をしてるんです。

齋藤:
すごいですよね。京都議定書の採択だって97年かな?その後、環境や日常が良くなるかと思ってたら、どんどん悪くなって21世紀に。田中さんが考えてらしたことを、形にしているから、世界中が今“MUJI”を志向しているんじゃないかと思いますね。

金井:
無印良品がメインストリームになったら?というひとつの答えとして、それによって人間社会が変わるべきだと思っているんですね。ひとりひとりの生活の意識、生活が美しくなれば社会だって良くなるんです。でも残念ながら今は金融資本主義含めて、自分の国がとか、自分の宗教が、自分の民族がと、みんなガンガン主張している。無印良品は『このぐらいでいい』という、理性的な満足感を持たなきゃいかんとずっと吠えているわけです。

 

《本対談は全3話を予定しています。第3話に続く》
※第1話はコチラから

<プロフィール>

金井政明

株式会社良品計画 代表取締役会長
1957年長野県生まれ。1976年、西友ストアー長野(現・西友)に入社。1993年に良品計画に転籍し、売り上げの柱となる生活雑貨部長として活躍。その後常務、専務を歴任し、2008年に代表取締役社長に就任。良品計画グループ全体の企業価値向上に取り組み、2015年より現職。

構成/牛丸由紀子、写真/山村隆彦(人物)