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《第3話》金井政明さん(株式会社良品計画代表取締役会長)× 齋藤峰明(エグゼクティブ・キュレーター)

2018.11.09
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プレミアムジャパン エグゼクティブ・キュレーターの齋藤峰明と株式会社良品計画代表取締役会長・金井政明さんとの対談の第3回は、無印良品の未来について。社会を変える仕組みからあっと驚く企画まで、次々と湧き上がる金井会長の思いを教えていただきます。

い商品は生活も社会も変える

齋藤:
例えば日本食も別に日本が好きだから食べているわけではなく、欧米の人が自分の健康とか環境とかを大事にしようとする中で、たまたま日本食に気がついて認知されたと思うんです。だから無印良品の思想も、世界のみんなが必要だと気づいているはず。その思想がもっと受け入れられるよう、ぜひもっと世界で展開していただきたい。

金井:
今も内部で一生懸命あがいて、何とかしようと思っています。そういう“性格の良い商品”を作って、多くの皆さんに伝わるよう山ほど売ることが私の使命だと。山ほど売るというのは、結果的には社会を変える力があるから。世のため人のためにという気持ちぐらいになれば、無印良品は変わると思う。

齋藤:
でも無印良品の精神からすると、大量生産やモノを破棄するというのは違うのでは?

金井:
モノなんていっぱい買うなということなんです。パリやロンドン、北京でも、世界の主要な都市ではどんどん住む空間が狭くなっている。その空間をどう使ったらいいかという時に、私は必要最低限のモノだけで暮らしていた、少し前の日本の暮らし方が世界の最先端だと思っているんです。畳とふすま、必要な時は布団やテーブルを出せばいい。ソファがあってダイニングテーブルがあってといった、コンチネンタルな生活の仕方を見直すべきかもしれません。そういうことをやっていきたいですね。

齋藤:
無印良品の思想が生活全体に広がっていくというのは、十分共感・理解できるし、そうなっていくんだろうなと思いますね。家内はドイツ人なんですが、日本の建築も寺院も素晴らしい、昔の家も素晴らしい。それなのに、なぜ日本の家にはごちゃごちゃとモノがあふれているの?と、言われます。でも説明できない(笑)

金井:
やっぱり戦後のアメリカからですよね。大量に消費社会という概念が入ってきた。これだけ人口が増えモノが消費されて、毎年「今年も暑いね」と言ってるわけだから、いい加減目覚めた方がいいと思っています。 (笑)
それと明治維新をきっかけに、日本の文化は、野蛮だといって伝統的なものにふたをしちゃいましたよね。例えばベルサイユ的な赤坂の迎賓館。当時は西洋式なものを取り入れて、一生懸命日本人が作ったわけです。でもあそこに各国の主賓をお招きして・・・?と、今だったら思う。

に対する新たな取り組み

齋藤:
無印良品の食についても教えてください。農業とか地球環境という側面で関わるのは理解できるんですが、無印良品の役割をどう考えてらっしゃいますか?

金井:
現在は一部農業も自分たちで手掛けています。でもあれだけ苦労して、なぜこんなにお金にならないんだというのが正直な気持ち(笑) 作ったお米で日本酒も作ったんです。パリのレストランでも販売したいな、と(笑)

気づいたのは、日本の農業は今まで売ることに関して戦略がなく、ただ作るだけだった。だから儲からない構造になってしまいました。作る人が売ることを考えないと、絶対成長しないと思ったんですね。一方で、食品の流通はグローバル化していて、やはり誰が食べるか考えずに農薬を使って面積あたり最大量の収穫だけを考える。そんなものづくりもいかがなものか。


無印良品イオンモール堺北花田 (写真提供:良品計画) 
2018年3月にリニューアルオープン。無印良品初となる食をテーマにした大型専門売り場を設け、産地直送の野菜・鮮魚などの生鮮食品も販売。フードコートも併設する。

そう考えた時に、分断している作る人と食べる人をつなげよう、それをつなげられるのはお店だよね、と。それで始めたのが北花田店。やる気のある農家が作った商品を並べ、買いに来る人と農家に交流してもらう。そうすれば買い手も作り手の苦労も意図もわかる。人間の根源的な部分で重要な「食べること」をもう一度考えていこうと、取り組んでます。

齋藤:
今の商品ラインアップの延長線上というより、その考えはやはり当初の思想から?

金井:
それもありますが、日本では農業も漁業も林業も、やる人は本当に減っているんです。でも人類が100憶人に向かう時に、誰が日本に食料を輸出してくれるんでしょうか?他の国も食生活が豊かになっている今、日本なんて相手にされないし、欲しいと言っても買い負けますよ。その状況に手を打ちたいというのがひとつ。もうひとつは、現在世界ではまだ10憶人が飢餓状況だという現実。食料もあるけど芋だけだから、栄養失調になる。これはなんとかしたい。豊富な栄養素を持つユーグレナ(ミドリムシ)を培養して世界の子供たちに食べさせるなど、栄養改善プログラムの実施を私たちも関わることでお役に立てれば嬉しいと思います。

齋藤:
今の社会は、アマゾンみたいに強いものが勝つアメリカ式の社会じゃないですか。経営者が皆社会を良くしようという考えを持っていればいいんだけど。糸井重里さんの「ほぼ日」もなぜ上場?と思ったけど、やっぱり強くならないと社会は変えられないということなのかもしれない。でも私の野望なんだけど、日本の精神性みたいなもので、この世界をよくできるんじゃないかと思っているんです。そういう意味では、無印良品が企業としてこういうことをやっていることがすごい。だから、無印良品がますます力をつけていただいて、世界に寄与してほしいと思いますね。

金井:
田中一光さんが名づけた「良品計画」という社名の通り、もっと良いことをいろいろやろうと思ってます。頑張ります。


※第1話はコチラ、第2話はコチラから

 

<プロフィール>

金井政明

株式会社良品計画 代表取締役会長
1957年長野県生まれ。1976年、西友ストアー長野(現・西友)に入社。1993年に良品計画に転籍し、売り上げの柱となる生活雑貨部長として活躍。その後常務、専務を歴任し、2008年に代表取締役社長に就任。良品計画グループ全体の企業価値向上に取り組み、2015年より現職。

 

 

構成/牛丸由紀子、写真/山村隆彦(人物)