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四谷 とんかつ 三金:「食の王道」vol.17 広川道助

2016.03.03

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ひとりで来店すると、まずお茶とともに新聞が出されます。メニューを見ると「キャベツとしじみの味噌汁のお代わりは自由。味噌汁も一杯目は豚汁と変更も可能」と書かれている。さらに、キャベツにかけるドレッシングは、サウザンと柚子ぽんずの二種類が置かれているという、とにかく客思いのサービスが徹底した店なのです。

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酒は、グラスビールが250円、八海山や春鹿といった日本酒が1合650円と良心的価格。アテもポテサラやイカフライなどほとんどが500円以下です。

なにより、グランドメニューの「ロースかつ定食」や「ヒレかつ定食」にカニクリームコロッケやカキフライ、メンチカツなどが、これまた500円以下でトッピングできることが嬉しいサービスです。

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私は常々、メインの定食にトッピングが出来るかどうかが、洋食屋やとんかつ屋の指標のひとつと考えています。

頼めばやってくれるところは多いでしょうが、一見で来店した客がそこまで頼むのは腰が引ける場合も多い。そんな場合まで、三金は考えてくれるのです。

しかも、味もなかなかです。高価な銘柄豚の定食を出す店には及ばないかもしれません。しかし、「はやしSPF豚」を使ったカツは揚げキリもよく、豚の甘さが引き立っています。

私は、ひと口目は塩で食べることが多いのですが、きちんと「岩塩」が用意されている。さりげなく吟味された調味料が置かれているのも、東京の料理屋の好ましい姿です。

そして、この店の最大の美点はごはんの美味しいこと。魚沼産のコシヒカリを使ったごはんは、冷めても美味しく、弁当にしたときに旨さの差異が明白に出ます。

そんな細かいことにまで気が配られているのに、雰囲気はいたってカジュアルで、一番高いロースかつ定食(200グラム)でさえ、2100円。どの要素も主張していないのに、実は高水準でまとまっている——それが本来の東京の粋な料理店の姿だったんじゃないかなあ、とひさしぶりに店を訪れ、思いました。

そういえば、この店のBGMはジャズでした。いまの店主、かなりの洒落者なのかもしれません。

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 「三金(さんきん)」
住所:新宿区四谷1丁目8-3 四谷三信ビル 2F
電話:03-3355-3299
営業:[月〜土]11:30〜15:00/17:00〜21:30
            [日・祝]11:30〜15:00/17:00〜21:00
不定休
予算:ロースかつ定食(100g 1450円〜200g 2100円まで)

 

《プロフィール》

広川道助

学者の家系に育つ。西欧で一時期を過ごし、早い時期から食の世界を志す。20代はフレンチに凝ったが、その後、日本料理の深遠さに目覚め、ここ数年は和食全般を系統だてて食することにこだわる。伝統芸能や茶道も齧るが、これまたあまりに深いので、いまだ入口あたりをちょろちょろ。昨年、若いころに通いながら、最近ご無沙汰だった料理店の主人が相次いで亡くなったのが後悔してもしきれなかったので、今年は円熟の料理人を訪ね歩き、しっかり頭に刻んでおこうと考えている。

 

【広川道助の〈食の王道〉】一覧記事はこちら

https://www.premium-j.jp/dousuke-hirokawa/