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さまざまな塩の製法:「本日もいい塩梅」vol.8 青山志穂

2016.07.01

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江戸時代から続く伝統的製塩法「揚浜式塩田」

専売制度によって一度は途絶えた日本の製塩文化ですが、その中でも、この石川県珠洲市の揚浜式塩田だけは、文化的価値を認められ存続を許された、江戸時代から続く唯一の塩田です。テレビドラマでも取り上げられ一躍有名になりましたが、この海岸から汲み上げてきた海水を豪快に塩田に撒く様子は、一度見たら忘れることができません。

塩田に撒かれた海水は、太陽と風の力で濃縮され、砂に付着して塩になります。その塩がついた砂を集め、海水をかけ流し、これを繰り返して濃い塩水を作っていくというのが、この揚浜式塩田の基本的な方法です。適度な濃さになった海水は平釜に移され、煮詰めて結晶させていきます。塩の収穫量は天候次第であり、膨大な労力もかかることから、今では全国にほんの数か所しかなく、石川県珠洲市の「奥能登塩田村」や、千葉県旭市九十九里浜の「塩製造サンライズ」で見ることができます。

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干満の差を利用して行う「入浜式塩田」

かつては干満の差が大きい沿岸沿いに多く存在したのが、入浜式塩田です。海水を濃縮して釜で炊いて塩にするまでの流れは揚浜式塩田と同じなのですが、大きく違うのは、海水の取水方法。こちらは、塩田の周囲に溝を掘り、干満の差を利用して、満潮時にだけ海水が塩田に入るようにしておきます。満潮時に塩田に入った海水は、溝から塩田の下部に浸透し、毛細管現象によって塩田の表面に引き上げられます。こうすることで、海水を汲みに行く手間が省けるので、かつては波の穏やかな沿岸沿いの地域で広く採用されていました。しかしやはり天候次第で、まだ作業量も多く、塩の収穫量も多くないことから、現在ではこの製法を採用しているところはやはり少数です。香川県宇多津町と沖縄県の屋我地島で見ることができます。

同じ「塩田」でも、海外のように広大な塩田に海水を引き入れてそのまま濃縮・結晶させてから収穫するのとは大きな違いがあり、どちらも日本独特のものです。

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