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白隠正宗 愛国純米酒きもと造り:「気になる日本酒」 vol.33 あおい有紀

2016.07.12

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コミュニケーションツールとしての役割

高嶋社長が蔵に戻った時の生産量は200石弱でしたが、普通酒、本醸造がメインでした。改めて自分の酒蔵の日本酒を飲んだ時に、残念な味わいであったことに大きなショックを受けます。経営も大きな負債を抱えるなか、蔵人を一掃し一から立て直しをはかりました。

「思い返せば苦労も沢山ありましたけど、夢中でやらせていただいてるので、基本いつもワクワクしています」と。現在は700石ほどの生産量ですが、米を多く使う純米系の方が地域の農業に貢献できる、というシンプルな想いから、平成24年より純米蔵となりました。

現在約86%が静岡県産米で、誉富士を中心に、雄町、愛国などを使用していますが、そんな高嶋社長が考える白隠正宗は、“一晩中だらだら飲み続けられる酒”。

「日本酒は最高のコミュニケーションツールだと思うのですが、優秀な酒はだらだら飲めなきゃだめ。飲み飽きする味だと、コミュニケーションツールとしては能力が低いものになりますよね」

高嶋社長は、音楽が好きでDJを20年続けていますが、音楽と酒造りとの共通点もおおいに感じると言います。「最近特にハウスが好きなのですが、人間愛を歌っているものが多いんですね。音楽で表現しながら会場にいる人達とコミュニケーションを取りつつ、人との繋がりを感じてもらえればと思っていますが、酒造りも同じように表現方法のひとつで、アウトプットの手段だと感じています」そこで、お燗酒に向く、ゆったり飲み続けられる味わいをと、現在全体の4割がきもと造りとなっています。

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南伊豆発祥の米を使い、循環型の酒造りを

今回ご紹介する、「白隠正宗 愛国純米酒きもと造り」は、70%精米の静岡県産愛国を使用。もともと、愛国、神力、亀の尾が、米の日本三大原種で、愛国は、南伊豆で発見されたと言われています。頂いてみると、とても口当たりが柔らかく優しい味わいで、乳酸の香りはほとんどなく、バランスがとれ綺麗な味わいながら米の旨味、甘みがふんわり膨らみます。

お燗酒でも試したところ、55度くらいまで上げたところで、米の香りがより広がり、酸味が立って輪郭が出てきました。滑らかで柔らかい余韻が、次の杯へと誘ってくれます。気づくと一晩で一升瓶が空いていた!ということにもなりかねない(笑)、危険なほどに自然と寄り添ってくれるお酒です。

高嶋社長は、静岡で造られた愛国を精米し、その米ぬかを発酵させて田んぼの肥料にして、また米を作り…を繰り返す、超循環型の酒造りを、この愛国純米酒で取り入れています。最終的には使用する米を全量循環型にし、酒造りで出る酒粕でお酢や漬物を作ったりと、田んぼ、酒蔵、加工所、働く人達…まさに酒蔵を中心とした一つの村のような形で地域貢献ができれば、と考えています。

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