戸越のおむすび屋「お米や」:「お米が主役」 vol.36 柏木智帆

2016.07.12

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「デザイン目線」で生まれたお店から商店街が元気に

この店舗、実は、昔ながらの青果店をリノベーションしたそう。建築デザイン担当は、「BLUE BOTTLE COFFE(ブルーボトルコーヒー)」全店舗などのデザインを手掛ける世界的に著名な若手建築家・長坂常さん。お米やを経営するデザイン会社「OWAN」代表の大塚崇雄さんによると、「壁を極限まで取り払って外に開かれたデザインは、お米やと商店街が、どういうコミュニケーションをしていったらいいかということが考えられています」。古くて、新しく、懐かしくて、開放的。そんなお米やの空間に、魅力を感じて訪れる外国人観光客もいるそうです。大塚さんは、戸越に2009年にカフェ「PEDRA BRANCA(ペドラ・ブランカ)」、2012年に珈琲豆焙煎所「MR.COFFEE(ミスターコーヒー)」を続々とオープンして、2014年におむすび屋「お米や」をオープンしました。

でも、なぜ、デザイン会社がお店を始めたのでしょう?

大塚さんに尋ねると、経営する3店舗の1つ1つにデザインの要素が詰まっていることが分かりました。

「PEDRA BRANCA」を開くと、若手のクリエーターが集まり、ギャラリーやイベントを行うようになり、アイデアが生まれるようになりました。そこで、大塚さんは、「カフェを起点に地域活性化が実現できるかもしれない」と思い始めました。

その後、カフェ近くの珈琲焙煎所を営んでいた高齢男性が店を閉めることになり、その建物をリノベーションして「MR.COFFEE」をオープン。「日本の零細な中小企業の経営をサポートするブランディングの仕事がしたかった」という大塚さん。「そのためには、まずは自分自身がブランドを持っていないと説得力がないと思ったのです」

2店舗を経営することで、次第に街の人とのつながりが生まれていくと、廃業するという青果店から、「店の建物を活用してほしい」と声が掛かりました。「デザインの本質は、社会課題の解決」。その具体的なアクションができると思った大塚さんは、「お米や」のオープンを決意しました。

大塚さんの活動の根底にあるのは、「シェアリング・ニュー・ローカリズム」。

「身近な街の課題を解決するために、別の地域の課題を分かち合う、掛け合わせることで、新しい価値の文化やサービスを生み出すことができると思っています」と大塚さん。「都会の商店街のシャッター化と、地方でお米の販売に苦労している農家。両方の課題のソリューションを生み出せると考えたのです」

実際に、新潟の若手農家が生産したお米でつくったおむすびを大消費地・東京で販売することで、若手農家たちに貢献しています。今では1軒の農家の生産量ではお米が足りなくなり、同じ品種を生産している別の農家からも購入することになりました。

戸越では、ここ2、3年で若手経営者の店が続々と増え、商店街に活気が生まれています。さらに、品川区と南魚沼市との行政を絡めた地域間交流や、有志でNPOを立ち上げて新潟県の田んぼでの農作業体験イベントも始めるなど、商店街の人たち、近隣地域の人たち、新潟県の人たち、ごはん好きの人たちとのつながりがどんどん広がっています。

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商店街を行き交う人を眺めながら おむすびをほおばる幸せ

人と人とをむすぶ、お米やのおむすび。

店長の山口真央さんによると、「普段は玄米しか食べないけど、ここのおむすびだけは白米でも食べる」という女性客もいるそう。使っている具材は、いずれも無添加で優しい味つけ。濃い味の具材でお米を食べさせるおむすびではなく、お米と具材の自然な旨みを味わうおむすびです。「お米やのおむすびは、つわりがない」と、妊娠中の女性客が毎日おむすびを買いにきたこともあったそうです。平日の朝は出勤途中の男性客も多いそうですが、全体的には女性客が多め。休日には、ひっきりなしにお客が訪れ、昼過ぎには売り切れてしまいます。

お年寄りや子どもまで幅広い世代からの人気も高く、常連客の小さな女の子が「いらっしゃいませー」と呼び込みを手伝うなど、地域の商店街らしい光景に遭遇することも。屋外と隔たりのない店内で椅子に座り、道を行き交う人たちを眺めながら、おむすびをほおばる幸せ。風が吹き抜ける中、心地よい朝食やブランチ、昼食が楽しめます。

■お問い合わせ
店名:お米や
住所:東京都品川区戸越4-8-6
電話:03-6421-6908
営業時間:平日8:00~15:00 土日9:00~15:00
※定休日は、月ごとに下記Facebookページに掲載
価格:おむすび1個140~180円(税込)
※ 春・夏は、いなりずし、秋・冬は、いかめしなども販売。
お米やFacebookページ
https://www.facebook.com/okomeya.tokyo/?fref=ts

写真提供:お米や(1、2、4枚目)

取材・文/柏木智帆

【柏木智帆の〈お米が主役〉】一覧記事はこちら
https://www.premium-j.jp/chiho-kashiwagi/

 《プロフィール》

柏木智帆

フリーランスライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材活動をする中、生産の現場に立つために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたって千葉県で無農薬米をつくりながらおむすびのケータリング屋を運営。2014年秋からは消費や販売に重点を置くため都内に拠点を移して「お米を中心とした日本の食文化の再興」と「お米の消費アップ」をライフワークに活動。神奈川新聞契約ライター。「日常茶飯」をテーマにお米とお茶のお取り寄せサイト「和むすび」(http://www.wa-musubi.jp)を運営