【東京 台東区駒形】松波:「食の王道」vol.37 広川道助

2016.07.28

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しかし、最近の寿司屋のように、あたかも日本料理店と見まがうような手の込んだ料理が出るわけではありません。あくまで寿司屋は寿司屋の領分で勝負なのです。

さて、にぎりに移ります。実は、はじめて食べたときに、こんなに衝撃を受けたにぎりは他にはありませんでした。

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というのも、酢飯が芯がぎりぎり残るほどに固い。ところが、この酢飯がしっかりと仕事を施したネタに絶妙に合うから不思議なのです。これは、すきやばし次郎でも、ほかの与志乃出身店でも味わったことがない、松波オリジナルの酢飯といっていいでしょう。今回は、少し柔らかくなった気がしますが、それでも上質のネタと見事に合うにぎりです。

女性にはにぎりをふたつに切るのも大将のこだわりです。大きな口を開けて食べてほしくないという、紳士の気遣いなんでしょう。

大将のそんな進取の気性があらわれたにぎりが、かつて握っていた「キャビアの軍艦巻」でした。海苔で巻いた酢飯の上に漆黒のキャビアが乗った軍艦巻はここでしか食べられず、キャビアの塩気が海苔、酢飯と調和していました。いまは原価が高すぎてやっていないそうですが、こんな粋な遊びが似合うのも松波さんだからこそ。ぜひ復活していただきたいものです。

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そしてもうひとつ、松波らしい美しいにぎりが、この季節でしかいただけない、しんこです。初夏ならではの味わいを堪能しました。

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最後にかんぴょうを巻いてもらってひと通り。江戸前の技を堪能し、お腹も気分の満足の一夜です。

 
「松波」
住所:東京都台東区駒形1-9-5
電話:03-3841-4317
営業:17:0021:00 土日祝休み

《プロフィール》

広川道助

学者の家系に育つ。西欧で一時期を過ごし、早い時期から食の世界を志す。20代はフレンチに凝ったが、その後、日本料理の深遠さに目覚め、ここ数年は和食全般を系統だてて食することにこだわる。伝統芸能や茶道も齧るが、これまたあまりに深いので、いまだ入口あたりをちょろちょろ。昨年、若いころに通いながら、最近ご無沙汰だった料理店の主人が相次いで亡くなったのが後悔してもしきれなかったので、今年は円熟の料理人を訪ね歩き、しっかり頭に刻んでおこうと考えている。

 

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