甲州ファーストボトル2014 :「いますぐ飲みたい日本ワイン」vol. 44 柳 忠之
ワイン造りのコーチ、コンサルタントという職業
ワインの世界にはコンサルタントと呼ばれる人がいます。ワイン造りのコーチのような存在で、ワイナリーに常にいるわけではありませんが、品質の高いワインを作るにはどうしたらよいか、オーナーやワインメーカーにアドバイスする職業です。
とくに売れっ子になると活動範囲を次第に海外まで広げて、地球の反対側まで飛び回るコンサルタントも少なくありません。北半球と南半球では季節が逆ですから、地元が暇な時期に赤道の向こうで活動することも可能なんですね。それでこのようにワイナリーからワイナリーへ飛行機を使って飛び回るコンサルタントを、フライングワインメーカー(空飛ぶ醸造家)と呼んだりします。
80年代以降、醸造技術が急速に進歩したため、コンサルタントの存在は大きなものとなりました。フランスならカリスマ醸造家のミシェル・ロランに先日亡くなられたドゥニ・デュブルデュー教授。イタリアだとカルロ・フェリーニやフランコ・ベルナベイ、そしてリカルド・コタレッラなどが有名です。
イタリアのワイン評価本「ガンベロロッソ」で最優秀エノロゴ(醸造家)に選ばれたこともあるコタレッラは、トスカーナのバンフィやカンパーニャのモンテヴェトラーノでその手腕を発揮する著名な醸造家で、一時、ボルドーの名門シャトー、コス・デストゥルネルのコンサルタントになるらしいと噂が流れたこともあります(その後、デマと判明しましたが)。
そしてなんと、このコタレッラ助言のもと造られた日本ワインがあるというんですね。
イタリアの有名醸造家が関わった、勝沼の甲州
それがこの「甲州ファーストボトル」。コーヒーで知られるカルディが、コタレッラにコンサルティングを依頼し、山梨の大和葡萄酒で醸造されたワインです。
「なんでコーヒーのカルディが?」と思ったら、同社はワインの輸入販売も手がけているんですね。スタッフがエミリア・ロマーニャのワイナリーでコタレッラと出会い、日本ワインの可能性について意気投合。このワインの開発に至ったのだとか。
名コンサルタントの面目躍如というところでしょうか、国産ワインコンクールでは銅賞を獲得しています。
柑橘系のアロマがきれいに香る、すっきりと爽やかなスタイル。口に含むときれいな酸味が爽快感をさらに高めてくれます。アフターテイストに感じられるほろ苦さがよいアクセントとなり、軽やかだけれど、適度に厚みのある味わい。季節的にはちょっと早いですが、水炊きなどシンプルな鍋料理に合いそうですね。
1998円(税込み)/カルディ http://kaldi-online.com/category/SAKE/4560148209186.html
取材・文/柳 忠之
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