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「食の王道」vol.66

【東京 東麻布】東麻布 天本:グルメキュレーター 広川道助

2017.02.16

天本さんはもともと福岡の料理屋のせがれに生まれ、青山の寿司屋「海味」で長く修業。その後、滋賀にあった日本料理「しのはら」でも研修して日本料理の腕を身につけたため、仕入れのルートも東京に限らず、直接現地から送ってもらっているそうです。

それを丁寧に調理するわけだからうまくないわけがないのですが、その程度なら、それなりの値段を取る料理店ならやっているでしょう。天本さんの店のすごいところは「天本劇場」といわれる、客を楽しませる技にあるといえるでしょう。

大きな伊勢海老が入荷すれば、まずは荷をほどいてカウンターにもっていき、「写真撮りたい」といえば、伊勢エビを片手にポーズする。巨大蝦蛄、からすみも捌く前にすべてカウンターに登場するのです。

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素材のよさがなければできないパフォーマンスですが、このカウンターとの一体感が、客に「私たちにだけこんな満足を与えてくれている」という気持ちを持たせ、「次回も天本に行かなくちゃ」とばかり、予約を取らせる原動力になるわけです。

もちろん、そこに料理が伴っていなくてはいけません。北海道から玄界灘まで、どんな時化のときでもきちんとネタを取り揃え、赤酢のかなり効いた酢飯で握ります。

日本酒の品ぞろえも素晴らしく、客のほうであれこれいわず、店主におまかせするのが一番だと思います。

さらに付け加えれば、天本さんのネットワークの広さが料理をサポートするのです。日本料理でわからないことがあれば、電話一本で「しのはら」の大将が指南してくれ、〆のねっとりと甘い玉子焼きはパティシエの小山進さんの監修とのこと。

5 copy-min食材、人、客をつなぐ幅広いネットワークと天本さんの腕前がすべて集まれば百人力も当たり前。わずか半年でミシュラン二つ星に輝いた理由もよくわかります。

6 copy-min7 copy-min残念なのはその寿司を簡単に味わえないことですが、天本さんはキャンセルが出たり、ネタが余ってバラチラシを作れると、フェイスブックで告知をするそうです。彼をフォローしてその瞬間をうまくとらえると、意外と早く行けるかもしれません。

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東麻布 天本
住所:東京都港区東麻布1-7-9 ザ・ソノビル102
電話:03-6885-2274

 

《プロフィール》

広川道助
学者の家系に育つ。西欧で一時期を過ごし、早い時期から食の世界を志す。20代はフレンチに凝ったが、その後、日本料理の深遠さに目覚め、ここ数年は和食全般を系統だてて食することにこだわる。伝統芸能や茶道も齧るが、これまたあまりに深いので、いまだ入口あたりをちょろちょろ。昨年、若いころに通いながら、最近ご無沙汰だった料理店の主人が相次いで亡くなったのが後悔してもしきれなかったので、今年は円熟の料理人を訪ね歩き、しっかり頭に刻んでおこうと考えている。

【広川道助の〈食の王道〉】一覧記事はこちら
https://www.premium-j.jp/dousuke-hirokawa/