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「食の王道」vol.67

【東京 神宮前】傅: グルメキュレーター 広川道助

2017.02.23

厨房の様子は客席からもよく見えますが、5〜6人の若い料理人がキビキビと動いています。そして主人の長谷川さんは、厨房内にいるより、客席を軽やかに動き回り、客とのコミュニケーションを取ることを第一と考えているようです。

長谷川さんが厨房にいないことを訝しがっているわけではありません。彼がいなくてもしっかりとした料理を出せる体制を整えている「チーム長谷川」のすごさが、彼の動きを見ているとよくわかるのです。

なによりも驚いたのは、長谷川さんが客の情報を驚くほどよく覚え、その日の客ひとりひとりに対してフェイストゥフェイスで接していることです。人気シェフから直接声をかけられただけでお客は嬉しいものですが、彼からその日の料理を説明され、そこに前回の情報が加わっていたら、なおさらです。

数カ月前に取った予約を楽しみに訪れた客はなにをしてほしいのか……長谷川さんはそれをきちんとつかみ、満足感を最大にするためにこの店を作ったのだ、ということに、いまさらながら私は思い至りました。

カウンターで料理人然として接するのではなく、客ひとりひとりにその日の料理の楽しさを語りかけ、あたかも親しい友人宅で歓待されたような気分で家路につく体験を、「新生・傳」ではやりたかったのではないでしょうか。

料理の大枠は神保町時代と変わっていないようですが、ル・ゴロアにいた料理人が加わって、よりイノベーティブな料理になったように思います。なにより、どれも美味しく、楽しい。

4 copy-min5 copy-min「NOMA」など世界の最先端のシェフと広く交友をもつ長谷川さんの料理だけに、こちらも広い視座で評価しなければいけないなと痛感した一夜でした。

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「傳」
住所:東京都渋谷区神宮前2-3-19 建築家会館JIA館
電話:03-6455-5433
営業:17:00〜LO22:30(土祝〜LO21:00 日曜休・祝日不定休)

 

《プロフィール》

広川道助
学者の家系に育つ。西欧で一時期を過ごし、早い時期から食の世界を志す。20代はフレンチに凝ったが、その後、日本料理の深遠さに目覚め、ここ数年は和食全般を系統だてて食することにこだわる。伝統芸能や茶道も齧るが、これまたあまりに深いので、いまだ入口あたりをちょろちょろ。昨年、若いころに通いながら、最近ご無沙汰だった料理店の主人が相次いで亡くなったのが後悔してもしきれなかったので、今年は円熟の料理人を訪ね歩き、しっかり頭に刻んでおこうと考えている。

【広川道助の〈食の王道〉】一覧記事はこちら
https://www.premium-j.jp/dousuke-hirokawa/