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「チョコレートで感じる日本の香り」 《第七回》明治ザ・チョコレート(その2)メイジ・デモンストレーション・ファーム

2018.03.06


「明治ザ・チョコレート」とメイジ・デモンストレーション・ファームで収穫したカカオの実

 

イジ・デモンストレーション・ファームのあるベトナムを視察させてもらうことになった。嬉しいことにカカオの植樹からチョコレートになるまでをすべて体験できるという。期待に胸を大きく膨らませて旅立った。

カカオ農園への旅については拙著『ショコラが大好き!』でも書いているが、あの事前のアポなしの極めてワイルドな旅とは違い、今回はカカオやチョコレートのスペシャリストで「チョコレート博士」こと明治の大阪工場長で農学博士の古谷野哲夫さんの解説付きである。ちなみに連載《第四回》で紹介した古谷野さんのお話はこの旅中に訊いたことだ。
カカオ農園に到着すると「メイジ・デモンストレーション・ファームにようこそ!」と赤字で書かれた横断幕が掲げられ歓迎ムード。ここで明治は「メイジ・カカオ・サポート」として技術指導や肥料の無償配布などの支援活動を行なっているという。


カカオの木は周りに植えられた大きな木の陰で、直射日光や強風から守られ育つ

カオ農園に足を踏み入れるとカカオの葉がたくさん落ちていて地面がフカフカしていた。農園には、7〜8種類のカカオの木が800本あり、コーヒー、コショウ、アボカド、ドラゴンフルーツ、パイナップルといった作物が一緒に育てられている。ところどころにカカオ豆を取った後の実の殻が集められていて半ば堆肥化していた。古谷野さんによれば、アグロフォレストリーという農法なのだそうだ。


収穫体験:カカオの実一個採るだけでも慣れないとかなり大変な作業

グロフォレストリーとはアグリカルチャー(農業)とフォレストリー(森林学)をあわせた造語。森林伐採などで荒廃した土地に、多種多様な農産物を混合して栽培する農法のことで、事業として成り立つうえに、十年ほどで森の生態系を蘇らせることから「森をつくる農業」と呼ばれ世界的に注目されているのだという。

この農法を生みだしたのは、ブラジル北東部のトメアスーに入植した日本人移民たち。主作物と想定していたカカオの栽培がうまくいかず、アマゾンの過酷な環境の中でジャングルを切り開き、コショウ栽培を始めるなど、紆余曲折を経てたどり着いた農法だった。その壮絶なストーリーは涙なくしては訊けない。古谷野さんはブラジルでカカオ豆のリサーチをしているときにトメアスーの日系人が設立した「トメアスー総合農業協同組合(CAMTA)」と出逢い、2009年に明治との共同プロジェクトが始まることになった。今では明治ザ・チョコレートの、エレガントビター、サニーミルク、フランボワーズで使用している他、業務用のチョコレート「グリーンカカオ」として販売している。「グリーンカカオ」はドライフルーツのような味わいがあって、そのまま食べても楽しめるうえ、トメアスーのカカオ農家を応援することにもなるので一消費者としては小売も希望したいところだ。


「明治ザ・チョコレート」は日本が世界に誇れる上質な味わいとデザインを目指している

 

治のスペシャリティチョコレート担当の佐藤政宏さん(下、集合写真右)によると、明治のチョコレートは、スタンダード、健康志向、スペシャリティという3つのカテゴリーに分けられている。スペシャリティチョコレートは、選び抜いたプレミアム・カカオを使用し、カカオの特徴を際立たせた日本が世界に誇れる上質な味わいのもので、明治ザ・チョコレートはこのカテゴリーを牽引していく存在だという。

自分たちが求める理想のカカオ豆を安定的に供給してもらうことについては、連載《第四回》で紹介したようにブラジルやベネズエラを始めとする国々のカカオ農家支援活動「メイジ・カカオ・サポート」を通じて構築したサスティナブルなシステムがそれを可能にしているのだった。

Meiji_transplant
植樹体験:アグロフォレストリーについて話を訊いた後だったので、この農法を生みだしたブラジルの日本人移民に敬意を表して、植樹にはコショウの根が残る場所を希望した

 

園では、ポットで発芽させたカカオの苗を植えて育て、実がつくと収穫して、実からカカオ豆を取り出して発酵させ天日干しをする。数年かかる工程を数時間で体験させてもらった。実から取り出したばかりのカカオ豆にはまわりにみずみずしい果肉がついている。ベトナムのカカオは糖分が高く酸味の強いカカオ豆になりやすいため、果肉がついたままの豆を絞って水分量を減らしてから発酵させる。この時にできるフレッシュな絞り果汁(カカオパルプジュース)はたまらなく美味しい。小さなコップに入れられた果汁を恍惚として飲み干した。


発酵体験:上は実から取り出したばかりのカカオ豆。下は発酵して数日が経ったカカオ豆

 

った豆は発酵箱に入れて発酵させる。発酵中の豆の中に手を入れると、ヌルヌルしていて予想外にかなり熱いがなんだか心地よい。白い果肉は数日経つとチョコレート色に変わり温度も摂氏50度程になるという。豆の中に入れた手は取り出した後もしばらくしっとりとしていた。発酵を終えたカカオ豆は、手作業で外に運び天日干しをする。

チョコレートに情熱を注ぐ明治の皆さんとベトナムのカカオ農園にて。「チョコレート博士」こと古谷野哲夫さん(中央、ブルーのキャップ帽)を囲んで。カカオの実がたわわに生ったカカオ農園では、その場でココナッツの実をカットして振る舞ってくれた。右端はカカオ農園のオーナー

 

うして乾燥したカカオ豆はチョコレート工場に運ばれて、ローストして砕き皮を取り除いてから、砂糖などを加え磨り潰してチョコレートにする。
明治のカカオクリエイター佐久間悠介さん(上、集合写真左端)が額に汗して準備万端に整えてくれていたおかげで、自分だけの板チョコレートを完成させることができた。


明治のカカオクリエイター佐久間悠介さんの指導で、ベトナムのチョコレート工場で作ったfarm to barチョコレート。実際に自分で手がけたのは型に流しただけだけれど出来上がると感激だ。プロの手(佐久間さん)によるテンパリングを経ているので仕上がりはきわめて美しい

 

後は一般募集の旅として企画する可能性もあるのだとか。ブラジルの日系移民が生みだしたアグロフォレストリーや、カカオ農家支援活動「メイジ・カカオ・サポート」を通してプレミアム・カカオを安定供給してもらうシステムなど、チョコレートへの情熱と志の高さが生み出すジャパン・クオリティの魅力に触れた旅だった。これから参加する人は、知識が豊富になるのはもちろんのことチョコレートへの愛がますます深くなることだろう。

 

《第四回:明治ザ・チョコレート(その1)ホワイトカカオ》はコチラ

 

text © Mika Ogura 2018

 

【プロフィール】
小椋三嘉(おぐら・みか)エッセイスト、食文化研究家

十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。

 

【商品情報】

●明治ザ・チョコレート

(写真下段左から)
・力強い深み コンフォートビター (カカオ70%)
・華やかな果実味 エレガントビター (カカオ70%)
・濃密な深みと旨味 ベルベットミルク (カカオ51%)
・優しく香る サニーミルク (カカオ54%)

(写真上段左から)
・深遠なる旨味 抹茶 (カカオ58%)
・鮮烈な香り フランボワーズ (カカオ44%)
・可憐に香る ブリリアントミルク (カカオ55%)
・軽やかな熟成感 ビビッドミルク (カカオ54%)

各3枚入り