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~日本の香りを味わう~

《第2回》 二都物語《前編》 TORAYA PARIS

2018.04.12

「道明寺製 桜餅(関西風)」

 

の装いをスーツケースに詰め込んで日本を旅立ったのに、パリは3月に入ったというのに雪まで降って予想外の寒さだった。友人たちからは「パリの雪景色なんて滅多に見られないのだから貴女はラッキーよ」と言われても、どんよりとしたグレイの空がちょっぴり恨めしい。

そんな天候の中TORAYA PARISにはすでに桜の季節が訪れていた。桜のディスプレイが店内に施され、テーブルに座っているだけでお花見気分である。さらに嬉しいことには期間限定の「道明寺製 桜餅(関西風)」が始まったところだった。パリ暮らしに区切りをつけて日本に帰国してからは、季節になると道明寺を食べるのが習慣になり、日本にいるときは食べないとなんだか落ち着かなくなっていた。それだけにパリで桜餅に出逢えただけでかなり嬉しい。

 

お花見気分を味わえる店内

 

の前の「桜餅」からは存在感のあるなんとも魅惑的な匂いが立ちのぼっている。日本から出向している職人さんが毎日パリの厨房で生菓子を作っているのだそうだ。

 

TORAYA PARISの「桜餅」は関西風と関東風の二種類ある。フランスでは道明寺粉を使った菓子の人気があって、香りの強い桜葉を好むということもわかったので、2000年初め頃から関東風に加えて関西風も販売するようになったという。今年はどちらも二週間ごとで提供された。

同じ「桜餅」でも餡が道明寺製の生地に包まれた関西風に対し、関東風は餡にクレープ状の生地を巻いているので、両者を食べ比べてみると形状は言わずもがな食感も味わいもかなり違う。まったく異なる和菓子と言ってもいいくらいだ。地域で異なる日本の食文化の例としてもわかりやすいので、桜の季節にパリで二種類の「桜餅」を味わう機会があることはいろいろな意味で素敵なことだ。

「関東風の桜餅」

 

店舗内で偶然にお会いしたある家族は、いつも母娘孫の3代揃って定期的にランチに来るという常連で家族中が和菓子ファン。とりわけ安倍川餅をはじめとしたモチモチとした食感の和菓子がお好きだとのこと。「桜餅」の人気も納得できる話だった。

TORAYA PARISは1980年にオープンした。私がパリに暮らし始めた80年代終わりから90年代にかけては、日本のお客さんが多かった記憶があるが、今は多くが地元の常連らしき人たち。ランチタイムはお店のほとんどのテーブルが予約でいっぱいになる。毎日通う人もいてマイ・テーブルまで決まっているそうだ。

本茶への関心も高い。私がパリに暮らしていた時は、写真家の夫を訪ねてフランスの俳優さんが自宅に来ることがあり、ティータイムにお菓子や日本茶を出したものだった。とりわけ玄米茶は口に合うようだった。TORAYA PARISでも夕方にはカフェインが少ない玄米茶やそば茶を頼む人が多いという。抹茶は一年中人気があり、冷たい抹茶も好まれているそうだ。実際に味わってみると生菓子との相性はとても良く、とりわけ抹茶は器も含めて茶の湯の雰囲気が楽しめるのも魅力だ。

 

「アプリコット羊羹」と玄米茶

 

TORAYA PARISでもうひとつ私がオススメしたいものに、パリ生まれのフルーツ羊羹がある。春夏限定の「いちじく羊羹」と「アプリコット羊羹」、夏季限定の「レッドベリー羊羹」、そして秋冬限定の「焼りんご羊羹」と「ポワールキャラメル羊羹」の五種類が季節によって一種類づつ登場する。私が訪れた時は「アプリコット羊羹」だった。桜の季節にふさわしい花の形をしていて、アプリコットのピューレが入っている。フルーツ羊羹は名前に“羊羹”とついているが、伝統的な練り羊羹とは異なって生菓子である。それだけにみずみずしいフルーツの食感と餡が口の中で重なり合うのがたまらなく快感なのである。パリに行く機会があれば季節のディスプレイと共に是非味わってみていただきたい。

リに来る予定のない人にも朗報がある。日本でもパリ限定の商品の一部を味わうことができる、とっておきの場所がある。次回ご紹介する予定なのでお楽しみに! こうして思いがけず一足早く桜餅とお花見を楽しむことができ、私は小春日和の気分でTORAYA PARISを後にした。

 

text © Mika Ogura 2018

 

【プロフィール】
小椋三嘉(おぐら・みか)エッセイスト、食文化研究家

十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。

 

【商品情報】

 

  • 道明寺製 桜餅(関西風)
    Délice de Cerisier Domyoji

    価格 サロン 6.80€(税込)/ 物販 5.50€(税込)

 

  • 桜餅(関東風)
    Délice de Cerisier
    価格 サロン 6.80€(税込)/ 物販 5.50€(税込)

 

  • アプリコット羊羹
    Yokan aux Abricot
    価格 サロン 6.00€(税込)/ 物販 5.00€(税込)

 

【店舗情報】
TORAYA PARIS
10, rue Saint-Florentin 75001 Paris FRANCE
TEL +33 (0) 1 42 60 13 00
https://www.toraya-group.co.jp/toraya-paris/ja/

※2018年の場合は、3月の前半に道明寺製 桜餅(関西風)、後半に桜餅(関東風)を2週間ごとに発売しました。
※生菓子は2週間に一度入れ替わります。
各商品の販売期間等詳細は店舗に確認下さい。