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~日本の香りを味わう~

《第8回》進化するかき氷① ル・ショコラ・アラン・デュカス

2018.07.12

 

 「Kakigori 抹茶&ショコラ」

 

き氷の冷んやり感がありがたい季節になった。抹茶や柚子といった日本食材が海外でも使われるようになって久しいが、かき氷もまた日本のお菓子として興味を持たれていることをご存知だろうか?

フランスではKAKIGORIとして、数年前から南仏のリゾート地を中心に日本によくある業務用機械で作るかき氷が見られるようになり、まだパリにまでは到達していないものの徐々に広まっているのだとか。雑誌でも取り上げられるようになったことや、3年前にフランスの人気テレビ番組でスターパティシエが、日本の旅で最も印象に残ったものとしてかき氷をあげたことで、さらに多くの人々の興味を引くこととなった。

ル・ショコラ・アラン・デュカスのエグゼクティブ シェフ・ショコラティエ、ジュリアン・キンツラーは来日して初めてかき氷を知った。数年前からフランスで働く同僚のパティシエから前出の噂を聞いていたこともあり、日本に店がオープンして最初の夏となる今年、チョコレートとかき氷を合わせたデザートのアイディアが浮かんだ。

本の伝統的なかき氷の魅力を保ちながら、これまでの経験を活かして、繊細でより洗練されたデザートに進化させてみたかったという。どこにもないかき氷を作り出すため、日本の老舗店で定番のかき氷を味わったりもした。

「Kakigori エキゾチック&ショコラ」

 

こうして生まれた3種類の「Kakigori」は、日本独自の美学である“裏勝り”を反映したかのようなデザートになっている。ドーム状に盛られた姿は一見きわめてシンプル。ところが食べ進めるうちに変化に富んだ食感と、かき氷とは思えないような華やかな味わいが、口の中で重なるように次々と現れるのだから、まさに“裏勝り” 的サプライズだ。

またドーム状になったかき氷の部分は、グラニテ(仏)あるいはグラニータ(伊)の手法を用いている。両者の違いは日本のかき氷は削った氷にシロップをかけるのに対して、グラニテはシロップを含んだ氷を削っていくこと。さらに例えば「抹茶&ショコラ」なら仕上げにも抹茶のシロップをかけているので、より香り高いフレーバーに仕上がり、食感もシャリシャリしている。

「Kakigori カフェ&ショコラ」

 

人の好みではあるが私はグラニテのファンである。レストランでは口直しとして出されることが多い。以前アラン・デュカスの本を作っていた時に、デュカスの料理学校でチョコレートのソルベとカフェのグラニテを使ったデザートを学び、自分で作る術を身につけた。シロップが凍ったらフォークで削るという作業を根気良く何度も繰り返すことでグラニテが出来上がる。ただ自分でやってできる量はほんの少しだけ。

「Kakigori」は洗練された形でグラニテがたっぷりと楽しめるのだからかなり嬉しい。

ル・ショコラ・アラン・デュカスのエグゼクティブ シェフ・ショコラティエ、ジュリアン・キンツラーが「Kakigori 抹茶&ショコラ」を作って見せてくれた。左下から時計回りに進む。

 

「Kakigori 抹茶&ショコラ」を作るところを見せてもらった。

やかなチョコレートのソルベを置いて、レモンのマーマレードをまとわせる。そこに砂糖をからめたカカオニブ、抹茶クリームを乗せて、抹茶のグラニテでドーム状に包み込んでいく。チョコレートはすべてパリの工房でカカオ豆から作るので、使う素材によって産地を使い分けている。ちなみに抹茶と合わせているのはハイチ産のカカオ豆から作ったもの。ソルベに添えているカカオニブ(砕いたカカオ豆)は、砂糖とからめて加熱することでカリッとした食感を保ち、カカオ豆の芳しいアロマをより引き立たてている。

完成した「Kakigori」は、抹茶、レモン、カカオ豆、チョコレートという異なる各素材が調和して実に魅力的な味わいだ。抹茶の奥深い和の味わいが全体を包んでいながら、高級フレンチのデザートの風格を携えることになり、ここでしか味わえない味覚体感ができるものに仕上がっている。

最後まで丁寧に作り上げていく

 

案の基となったのは、ジュリアンがベージュ アラン・デュカス 東京でシェフ・パティシエとして働いていた時代に、日本料理の名だたる店とのコラボ企画で個性的な主人たちと一緒に仕事をする経験をしたこと。とりわけ印象的だったのは、京都のある料亭で抹茶のお菓子を作るのに濃茶ほどの分量を使うのを目の当たりにした時のこと。フランス菓子では抹茶の分量はスパイスほどとされていたので心底驚いたそうだ。

「Kakigori 抹茶&ショコラ」にはそれらの経験が味わいにしっかりと反映されているので、ぜひ試してほしい。

 

ジュリアン・キンツラー(左)とアラン・デュカス(右)

 この時に出逢った和食材には、白味噌を始め興味を抱いたものが多々ある。例えば赤紫蘇は酸味のある赤いフルーツに似た香りがあり、グラニテにしてみたら好評だったので、今度はチョコレートと合わせたデザートを試してみたいという。

化したかき氷「Kakigori」に続き、“ネオ和菓子”ならぬネオデザートがまたひとつ生まれそうだ。

 

(予告)進化するかき氷 《後編》では、老舗和菓子店のかき氷をご紹介します。

 

 

text © Mika Ogura 2018

 

【プロフィール】
小椋三嘉(おぐら・みか)エッセイスト、食文化研究家

十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。

 

【商品情報】

 

  • Kakigori 抹茶&ショコラ

抹茶のグラニテ。ソルベ・ショコラ、カカオニブ、抹茶クリーム、レモンのマーマレード入り。抹茶ソース。
東京工房限定 ¥1,700 (税抜)

 

  • Kakigori エキゾチック&ショコラ

レモングラスと生姜の香るパッションのグラニテ。ソルベ・ショコラ、ソルベ・ココナッツ、ソフトキャラメル、チョコとココナッツのクランブル入り。マンゴーパッションソース。お皿とスプーン付き。
テイクアウト限定 ¥1,000(税抜)

 

  • Kakigori カフェ&ショコラ

カフェのグラニテ。ソルベ・ショコラ、カカオニブ、カフェクリーム、オレンジのマーマレード入り。カフェソース。
六本木限定 ¥1,600(税抜)

 

【提供期間】
2018年9月中旬まで

 

【店舗情報】

ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房
東京都中央区日本橋本町1-1-1
TEL 03-3516-3511

 

ル・ショコラ・アラン・デュカス 六本木
東京都港区六本木6-12-2 六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り 
TEL 03-5775-1185

http://lechocolat-alainducasse.jp/addresses

 

※商品の販売期間等の詳細については各店舗にお問合せください