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~日本の香りを味わう~

《第10回》麻布野菜菓子

2018.08.09


野菜の水羊羹

 

布野菜菓子は屋号からもわかるようにすべての菓子に野菜を使っている。私が“野菜好き”ということもあるが、野菜を使い創意工夫を凝らした菓子が並んでいる光景は眺めているだけで楽しくなる。先日麻布で約束があり時間より早く着いたこともあり、周辺を散策しているうちに「野菜餡のどら焼き」が食べたくなって立ち寄ってみた。

その日は毎年初夏になると季節限定で登場する「野菜の水羊羹」が、中央の陳列台でとりわけ誘惑のオーラを放っていた。ミニトマト、紫芋、南瓜、無花果の全4種あって、フレーバーのラインナップからしてかなり興味がそそられる。結局「野菜餡のどら焼き」に加え「野菜の水羊羹」も全種類を携えて帰宅することになった。 

数日間しっかりと冷やしてから密閉された容器をそっと開けてみた。最初に開けたミニトマトの容器からは、芳しく甘みのあるフルーティな香りが立ちのぼった。すべてを皿の上に乗せたら、瑞々しい水羊羹が4種4色に輝いた。野菜の旨味が閉じ込められた水羊羹は、口の中でつるんとして、ほどなく消える。紫芋や南瓜は普段は密度の高い野菜たちなのに、水羊羹になったら濃厚な味わいを保ちつつも軽やか。

ほてった舌と身体に嬉しい食感と味わいだ。

野菜の水羊羹 ミニトマト

 

だ麻布十番駅ができる遥か前の話だが、私は一時期麻布十番に暮らしたことがあった。

週末になるとローストチキン丸ごと一羽を売りに来るフランス人がいたし、当時からこの辺りは特徴のある食べ物関係の店が多いところだった。麻布野菜菓子は4年ほど前に南麻布から麻布十番に移転してきた。併設したカフェでのみ味わえるカフェメニューも面白い。ほどなくして野菜を使った創作菓子の店として、注目されるようになった。 

 

麻布野菜菓子の花崎年秀さんに野菜に特化した理由を尋ねてみた

花崎さんは麻布野菜菓子の経営者でありグラフィックデザイナーでもある。グラフィックデザイナーとして野菜の懐石料理店の立ち上げに参加したことがきっかけで、野菜を使った創作菓子店という発想が浮かんだのだという。すぐに実現の画策を試みたものの、諸処の理由から企画はしばらく眠ったままになっていた。これほど面白い企画なのだから誰かが始める前に自分でやりたいという気持ちが募り、紆余曲折を経て、2012年に南麻布でついに思いを叶えることができたそうだ。 

最初に野菜を使ったゼリーを商品化したことで、どんな野菜が菓子に適しているか次第にわかってきて、野菜水羊羹やどら焼きも商品のレパートリーに加えた。カフェメニューで出したものが評判で商品化したこともある。ただカフェメニューは手作りで提供していても、商品に関しては工場に発注して作ってもらっているため、作ってもらうことが可能かどうかも含めクリアしなくてはならない案件が多々あり商品化は容易ではないのだとか。

野菜餡のどら焼き 紫芋

 

「野菜餡のどら焼き」は小豆、紫芋、南瓜の全3種類。ここのどら焼きは、野菜の風味がしっかりと感じられ、和菓子というより洋菓子のような和洋折衷の香りと味わいがある。半分に切って断面が見えるように並べてみた。「野菜の水羊羹」にも共通することだが野菜そのものの自然な色合いにも魅了される。

崎さんによれば、和菓子の変わり餡は大抵の場合は炊き上げ時の焦げ付きロスを避けるため、少なくとも6~7割以上の白餡をベースにするものだが、麻布野菜菓子の野菜餡は白餡より野菜の割合を多くして素材本来の味わいを前面に出す。そして次に隠し味を足していく。いわゆる和菓子屋なら当然という基礎に則ってやっているわけではなく、自分で美味しいと思う味になるように調整しているのだという。それがここだけの味わいを生み出すことに繋がっているのだろう。「野菜の水羊羹」と「野菜餡のどら焼き」共にお勧めしたい。

さて次はどんな野菜の創作菓子が登場するのだろうか。

 

text © Mika Ogura 2018

 

【プロフィール】

小椋三嘉(おぐら・みか)エッセイスト、食文化研究家

十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。

 

【商品情報】

  • 野菜の水羊羹4個セット(季節限定商品)

¥1,415(税込)

 

  • 野菜餡のどら焼き6個セット

¥1,847(税込)

 

 【店舗情報】

麻布野菜菓子(あざぶやさいがし)
住所:東京都港区麻布十番3-1-5
TEL: 03-5439-6499

http://www.azabuyasaigashi.com/access/

※単品購入は店舗にて可。商品の販売期間等の詳細については店舗にお問合せください