〜日本の香りを味わう〜

《第25回》クリオロ 桜を愛でながら堪能できるさくらスイーツ

2019.04.01

 
さくら抹茶ケーキ

各地で桜が満開を迎えている。日本には固有種、交配種を含めて数百種類もの桜が存在するという。桜文化が根付いた日本で暮らしていると、誰もが数ある花の中でも桜の花に特別な思いを寄せるようになるのではないだろうか。フランス・パリに暮らしていた時は、桜もあったが、春の訪れを感じる花と言えば、たんぽぽ色をしたミモザだった。

植物の葉を使った食べ物フェチの私にとって、桜の季節といったら桜餅である。それも桜葉も食べることを考慮して作られたものでないといけない。桜葉の塩漬けで知られる静岡県松崎町では、桜餅のことを桜葉餅と呼び、桜葉をさまざまな食べ物に使っている。桜餅の桜葉のあの芳しい香りは、葉に含まれるクマリンという成分が葉を塩漬けにすることで生まれるそうだ。塩漬けの桜葉は、ほとんどが他の桜よりクマリンを多く含み産毛の少ない柔らかで食べやすいオオシマザクラという山桜で作られている。ちなみに花の塩漬けは、関山という八重桜で作られることが多いという。


さくら抹茶ケーキ

リオロで桜の香る可愛らしいさくらスイーツを見つけた。クリオロのオーナシェフのアントワーヌ・サントスさんは、2009年に中目黒に店をオープンした時、花見客がたくさん来店するようになって、さくらスイーツを考えるようになった。

独自のさくらスイーツをあみ出すために、和菓子を食べ歩く、製菓材業者から葉の塩漬け、桜の塩漬け、桜パウダー、桜酒といったさまざまな桜製品を取り寄せて試作を繰り返す、と考えられることは何でもやってみた。「塩漬けの花や葉は塩を抜き過ぎると風味まで消えてしまうため、塩味をどのように調和させるかが一番難しかった」そうだ。


さくらチーズケーキ

こうして生まれた「さくら抹茶」は、抹茶のダコワーズ生地を底辺に、抹茶のクリームと桜の紅茶を使ったムースが層を成し、トップには桜を漬け込んだシロップ入りナパージュ(ゼリー状のツヤ出し)をかけて、桜の花の蜜漬けを飾った華やかなパティスリーだ。それでいて和菓子のような風情を漂わせている。また「さくらチーズケーキ」は塩漬けの桜とチーズの相乗効果を生かして、桜の香るふんわりとした優しい口どけに仕上がっている。


クリオロのオーナシェフのアントワーヌ・サントスさん。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ(略してC.C.C.)」が、毎年チョコレートを品評して、その結果をガイドブックにして発表している。サントスさんはC.C.C.の2018年度版ガイドブックの海外部門にてアワーズを受賞した。

ントスさんは24歳の時に来日した。日本の生け花を習得するためだった。当時働いていたパティスリーの隣の本屋で花道の本を見て、そのとき取り組んでいた飴細工の技術を磨くために有益だと感じたのだという。

来日して京都で1年間暮らしたのちに、ヴァローナ社の技術コンサルタントとして上京。その後独立して2001年秋にクリオロ(当時の店名はエコール・クリオロ)をオープンした。今では在日歴は25年となり、母国フランスで暮らした24年間を超えた。最初は味の美味しさの基準も洗い方さえわからなかった米も、今では土鍋で炊いて毎日食べるようになった。奥さんの愛さんがソムリエだったこともあり、試作にアドバイスをもらうなど、日本人の味覚について少しずつ学びながら、フランスのレシピを日本に適応した独自の味に作り替えていった。

「カステラを始めとする焼き菓子の文化が根付いていることもあって、日本人はフランス流のオリジナリティや濃い味わいのある菓子より、やわらかさとか、微妙な食感の違いを感じられる菓子をより好む傾向にあると思います」。こうして20年近くの間にさまざまなパティスリーを生み出した。


さくら苺ケーキ

さくらスイーツの中でも「さくら苺」は、サントスさんにとってとりわけ思い入れのあるパティスリーだ。桜のムースには桜餅を連想させるみやびな風味があり、濃厚な苺のコンポートと絶妙な味わいを醸し出す。フランスに生まれ、日本で長年暮らしているサントスさんだからこそできた味わいだろう。

さまざまな事を思ひだす 桜哉(かな) 松尾芭蕉 ※1

サントスさんにとって桜は、いつも店から見えるところにあった。中目黒に店の他にもかつて店のあった上野も、3年前に新しく移った板橋区向原の本店の近くにも桜の木が多くあり、本店のテラスからは桜を愛でながらスイーツを楽しむことができる。

花より団子、ならぬ、花も団子も、という人に嬉しいクリオロのさくらスイーツ。桜の花盛りの今の季節にぜひ味わってみてはいかがだろうか。

※1 出典:松尾芭蕉著『笈之小文』平野屋佐兵衛(1709)

text © Mika Ogura 2019

 

【プロフィール】

小椋三嘉(おぐら・みか)エッセイスト、食文化研究家

十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。

 

【商品情報】

●さくら抹茶ケーキ【季節限定】


春を感じさせる華やかな桜と抹茶を使った季節限定ケーキ。春を感じさせる桜のムースと、抹茶の甘い香りを一緒に味わえる上品な仕上がり。
1個(直径約15cm×高さ約4cm) ¥3,500

 

●さくら苺ケーキ【季節限定】

 
アーモンドたっぷりの生地に、苺の果肉がたっぷりのコンポートと、桜が香る口どけ滑らかなムースが女性に大人気。
1本(サイズ約4cm×約5cm×約17cm)¥1,890

 

●さくらチーズケーキ

 
桜の花の蜜漬けや桜葉の塩漬けを使用。チーズのコクと、ナチュラルな桜の香りが春らしい味わい。
1本(高さ約4.0cm×幅約5.5cm×長さ約16.5cm)¥1,620

○今回ご紹介した3商品はネットでも購入可、日本全国配送可能

 

【問い合わせ】

クリオロ東京本店
東京都板橋区向原3-9-2
TEL:03-3958-7058
https://www.ecolecriollo.com/