ファッションジャーナリストの生駒芳子氏が総合プロデュースを手掛けるブランド「HIRUME」が、2019年の新コレクションを発表した。
「HIRUME」は日本の伝統技術や素材をベースとしながら、現代的なデザインへと仕立てたファッションアイテムを展開している。伝統工芸の技術の素晴らしさを世に伝えるとともに、後継者の育成を支援する目的も担っているブランドだ。


牛首紬(うしくびつむぎ)のジャケットとワンピース
今期は石川県白山市で生産される、日本三大紬の1つ「牛首紬(うしくびつむぎ)」を、コートやジャケット、ワンピースに仕立てている。
牛首紬は、玉繭と呼ばれる2匹の蚕によって作られた1つの繭から製糸した糸を用いて織られる生地で、美しい光沢と保温性や通気性に優れているのが特徴だ。2匹の吐く糸が複雑に重なった玉繭は、糸を繰り出すのが困難なため手作業で行われるが、弾力性に富んだ糸となって丈夫な生地ができる。洋服に仕立てれば、牛首紬の魅力を存分に感じることができるはずだ。
牛首紬のワンピースとジャケットを手に取ってみた。牛首紬独特の光沢と柔らかさ、表面に浮き立つ節の風合いに目を見張る。ジャケットに袖を通すと、肩や腕に沿うように軽やかで着心地がよいことに驚く。弾力性と伸張性も兼ね備えているため、しなやかで、しわにもなりにくいという利点もすばらしい。きものだけに留まらず、洋服として身にまとうことで、牛首紬の魅力はもっと拡がっていくはずだと確信する。
また、漆や蒔絵を使ったアクセサリーには、新たにブローチとペンダントをラインナップしている。シルバーやゴールド、ブラックとホワイトの漆を重ねて塗り、さらに研ぐことで生み出される輝きは、奥から滲み出るような繊細な美しさに目を奪われる。
伝統的な工芸と現代ファッションが出会って生まれた「HIRUME」のアイテムは、私たちの身体を美しく彩りながら、日本の伝統工芸の未来を照らす一筋の光明ともなっている。身に付けるだけで日本の美意識や繊細な手仕事を感じることができるアイテムは、私たちのライフスタイルに新たな価値観を生み出してくれることだろう。
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