手ごたえのある重さを感じながら、桃泉果(とうせんか)の封を開けた。熟した桃の甘く魅惑的な香りが脳を刺激する。中身を取り出してナイフを入れると、ゼリーの中に閉じ込められた迫力のある白桃の断面が現れた。
この菓子に出逢ったのは、何年か前にある桃好きな人への贈り物を探していた時のこと。当時住んでいた銀座界隈でかなり時間をかけて吟味した末に、ようやくこれだと思えたのが桃泉果だった。早速購入して食してみた。白桃を丸ごと1個使っているので存在感があって華やかだ。白桃の香り、味わい、さらに食感も良く、かなり満足できたこともあって、贈る相手が喜んでくれることを願いながら一番大きな箱を選んだのだった。桃泉果にはそんな想い出がある。何よりも贈った相手がたいそう感激してくれたことが嬉しかった。
宗家 源 吉兆庵に桃泉果のつくり方について訊いてみたところ、詳細については企業秘密だが独自の技法を使って、白桃の風味や果肉の食感を損なわぬように仕上げているそうだ。源 吉兆庵の創業の地、岡山県は、桃の産地として知られ果物が豊富に採れる。その自然の恵みを活かして果物を使った商品を開発していて生まれたものだという。白桃をまるごと使用することにしたのは、商品価値を高めると共に驚きと感動を届けたいという願いからだった。


枇杷を使った風流でやさしい味わいの「歳々果」
桃泉果は、宗家 源 吉兆庵を代表する菓子「自然シリーズ」のひとつだ。そもそも菓子は古くは “果子”と伝えられ、果物や木の実を指したといわれる。このシリーズは菓子の原点ともいえる果実をまるごと生かした旬の味わいをコンセプトにしていて、自然の恵みである果実の姿・形・味わいをそのまま和菓子に仕立てた繊細な菓子なのだ。このシリーズはどれも季節感を満喫できるのが魅力となっている。
桃泉果のように、初夏から夏にかけて季節限定で登場するものは他にも色々あって、ゼリーの中にカットした枇杷の実を入れた歳々果もそのひとつ。軽やかさがあって風流でやさしい味わいだ。桃泉果と共にお勧めしたい。
text by Mika Ogura
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