インドの小さな出版社が手掛けるハンドメイドの本が、世界で高い評価を受けていることをご存知だろうか。かつてマドラスと呼ばれたインド南部の街、チェンナイを拠点とする「タラブックス」は、1994年に2人の女性が中心となって設立した小さな出版社だ。子供向け、大人向けを問わず、鮮やかな色彩と温かみのあるタッチで描かれたビジュアルブック、仕掛け絵本などを制作している。中には、手すきの紙へシルクスクリーンで一色ずつ印刷、製本もすべて手作業で行うハンドメイド本もある。たった50名ほどのスタッフで編集から印刷、製本、販売までを行うというこれらの作品は、世界のブックマニアの間で反響を呼び、タラブックスは“奇跡の出版社”と称されるまでになった。


タラブックスの創設者。左がV・ギータ、右がギータ・ウォルフ
2019年6月25日(火)から8月18日(日)まで、京都の細見美術館で、このインドの小さな出版社の軌跡を紹介する展覧会「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」が開催される。同社の代表作10冊やインド中央部に暮らすゴンド族の原画と資料、仕掛け絵本制作のきっかけとなったインド伝統の絵巻物などが多数展示され、間近で鑑賞できる展覧会だ。
彼らが作り出すハンドメイド本は、アートピースのように美しい。目に入るビジュアルが美しいという意味だけではなく、触れた時のふんわりとした紙の感触やインクの盛り上がり、ページを開くたびに感じられる香りまで、五感をフルに刺激してくれる工芸品のようにも思える。


『夜の木』The Night Life of Trees/2006
彼らの代表作『夜の木 The Night Life of Trees』は、黒地の紙へ大胆な色彩の大木を印刷した作品で、インド中央部で暮らすゴンド族の民族画家たちの手によるもの。この本は、2006年に出版された後、何か国語にも翻訳され世界中で愛されることとなった。それまで、インド国内でもさほど知られていなかった民族画の存在にスポットをあて、出版物として世界へ発信したのはタラブックスが初めてだという。
インド各地の伝統文化や語り継がれてきた物語を、スタッフ1人1人の丁寧な仕事によって1冊の本へと落とし込み世界へ届ける、そんなタラブックスのアナログなモノ作りが、デジタル全盛の現代に与えるインパクトは大きい。
◆「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」
2019年6月25日(火)~8月18日(日)
細見美術館
京都市左京区岡崎最勝寺6-3
10:00〜18::00(入場は17:30まで)月曜休館
https://www.emuseum.or.jp/
Premium Japan Members へのご招待
最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。