御茶ノ水駅からすぐ、急な坂道を昇りつめた先に見えてくるエレガントな建物。7か月間もの休館を経て、リニューアルを果たした「山の上ホテル」だ。設備の老朽化にともなう改修のためのリニューアル工事であったが、建設当時の魅力的な姿を取り戻す、というフィロソフィーも込められていたという。
ロビーに入ると変化の大きさに驚くはずだ。あの赤いじゅうたんが敷き詰められていたロビーはそこにはなく、じゅうたんの下に竣工当時のままに残っていたという、大理石の床に施されたアールデコ様式の意匠が目を引く。「山の上ホテル」は、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計により、1937(昭和12)年佐藤新興生活館として建設。戦後はGHQの女性将校の宿舎という時期を経て、1954(昭和29)年、ホテルとして開業した。今回のリニューアルは、ヴォーリズが設計した当時の美しい姿へ還す、というのが主眼だったのだ。


優美ならせん階段。一粒社ヴォーリズ建築事務所に残っていた設計図をもとに、竣工当時の姿を取り戻した。


スイートルーム501号室。客室は、40年前の前回改修時のコンセプトをよく守り、今回のリニューアルでも手を加えていない。多くの文豪に好まれたままであるのがうれしい。1~2名 45,000円(税・サービス料別)


畳にベッドが置かれたスタンダードツイン(和室)。和洋折衷のくつろぎがある。2名28,000円(税・サービス料別)
尾崎士郎、池波正太郎、三島由紀夫など「山の上ホテル」を愛した文化人は多い。客室に缶詰めになり、執筆に専念する彼らが愛したのは、清潔で清楚なサービス、そして素晴らしい食を提供することだった。客室わずか35室のホテル内にレストランとバーを合わせて7店もが揃うという、充実したダイニング。今回のリニューアルもその伝統を守り、よりオーセンティックな食体験を用意している。
リニューアルを記念した特別メニューを提供しているのは、「山の上ホテル」のシグネチャー的存在の「てんぷらと和食 山の上」。天ぷらと和食の贅を堪能できる。「フレンチレストラン ラヴィ」でも、人気のあった伝統料理を盛り込んだスペシャルなコースを用意している。


「てんぷらと和食 山の上」が提供するリニューアル記念特別コース(ディナー)20,000円(税・サービス料別)


左:クラシカルな雰囲気が新鮮な「フレンチレストラン ラヴィ」。
右:リニューアル記念特別コース(ディナー)のメインは国産牛フィレ肉のポワレ ロッシーニ風。リニューアル記念特別コース(ディナー)18,000円(税・サービス料別)
1930年代の竣工当時の姿へと還った「山の上ホテル」。都内でも数少ないこの小さな独立系ホテルは、旧き良き美しさを取り戻しながらリニューアルするという難題をクリアし、変わらない洗練とくつろぎを大切にしながら、いま、新たな歴史へと一歩を踏み出した。
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