黄葉した落葉、小枝。地面に吹寄せ文様が描かれ始める秋分の頃

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2019.9.17

蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)
昼と夜の長さがほぼ等しくなり、
虫たちが巣ごもりの支度を始める頃

日本の季節は春・夏・秋・冬の四つだけではなく、初春の立春から始まり、晩冬の大寒に終わる二十四節気、さらに二十四節気をそれぞれ三つに分けて一年を72等分した、七十二候という細分化された繊細な季節がある。

 

「今=ここ」にある季節を、コンテンポラリーに切り取ったビジュアル、そして季寄せ───
季節の気配・花鳥風月・草木などの折々の自然に眼差しを向ける感性豊かな暦・歳時記を意識した日常ほど、贅沢なものはない。

秋の七草の一つでもある萩は丸い葉が特徴 秋の七草の一つでもある萩は丸い葉が特徴

2019年9月23日〜10月7日
二十四節気 / 秋分

二十四節気の秋分とは、春分と同じように昼夜の長さがほぼ等しくなり、太陽が真東から昇り、真西に沈む頃。秋分の日を中日にして、その前後3日間を合わせた日が秋彼岸で、「萩の餅」から由来する「おはぎ」をお供えする。3月の春分の頃は春彼岸と言い、共に季節の変わり目、昼夜の長さが同様になる季節。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、過ごしやすい季節である。この頃に野山を彩る秋の七草は、おみなえし、おばな(すすき)、ききょう、なでしこ、ふじばかま、くず、はぎの7種。古来より、風情豊かに咲く様子が和歌や俳句に読まれてきた。山上憶良が万葉集で詠んだ二首一組の歌「秋の野に咲きたる花指折りかき数ふれば七種の花」(万葉集 巻8 1537山上憶良)、「萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花」(万葉集 巻8 1538 山上憶良)がその由来とされている。粥を食べて無病息災を祈る春の七草に対して、秋の七草は「花野」とも呼ばれる秋の野の情緒を愛で、慈しむものである。

 

七十二候では、秋分は第四十六候(初候)雷乃収声(かみなりこえをおさむ)9/23〜9/27(2019)、第四十七候(次候)蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)9/28〜10/2(2019)、第四十八候(末候)水始涸(みずはじめてかるる)10/3〜10/7(2019)の三つの季節に分けられる。

 

夏から初秋にかけて、夕立とともに轟いていた雷がすっかり影を潜め、入道雲の代わりに鱗雲(うろこぐも)、鰯雲(いわしぐも)、鯖雲(さばぐも)といった秋空の雲が広がってきた。朝夕すっかり涼しくなるこの時季になると、冬の気配に敏感な虫たちが土の中に巣ごもりの支度を始める頃だ。蝶の幼虫はさなぎとなり、てんとう虫やクワガタは成虫のまま木の根元に来春まで潜る。田んぼでは実った穂が頭を垂れ、稲刈りの季節となる。田からは水を抜き乾かして、実った稲穂の収穫に取り掛かる。空気に乾きを感じるようになる季節でもある。


都会の小さなグリーンスペースにもオーナメンタルなグラスが秋の風景に馴染む 都会の小さなグリーンスペースにもオーナメンタルなグラスが秋の風景に馴染む

第四十七候(次候)
蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)

万葉の歌人が秋草を詠んだ、里山の秋の野は遠くても
ビルの合間のオアシスのような都心の小さなスペースにも
萩、松虫草、吾亦紅、蓼の花━━━。
さやさやと風に揺られる季節の植物を慈しむことはできる。
合唱をそろそろお開きにした虫たちが、土に潜って戸を塞ぎ、
黄葉した落ち葉や松の葉が、地面に吹寄せ模様を描き始める頃。

秋草の花もやがて実をつけ色づき始める 秋草の花もやがて実をつけ色づき始める

秋分の歳時記・季寄せ

二十四節気 / 秋分
七十二候 /
第四十六候(初候)雷乃収声(かみなりこえをおさむ)9/23〜9/27(2019)
第四十七候(次候)蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)9/28〜10/2(2019)
第四十八候(末候)水始涸(みずはじめてかるる)10/3〜10/7(2019)

 

気配:鱗雲 鰯雲 鯖雲
花:萩 撫子
茶花:藤袴 松虫草
襲(かさね)の色目:萩(表-蘇芳 裏-青) 藤袴(表-紫 裏-紫)
行事:衣替え 秋の社日 五宮神社 花馬祭(長野) 北野天満宮 ずいき祭(京都)
鳥:きつつき
虫:赤とんぼ
装い:単衣 袷
料理:里芋の煮物 おはぎ
菓子:麦落雁 花野
魚貝:まがれい さば
野菜:しいたけ 里芋
果物:ぶどう
星座:はくちょう座
季語:秋彼岸 秋衣 花野
俳句:秋の野に鈴鳴らしゆく人みえず(川端康成)

秋風に揺れるグラスプランツ 秋風に揺れるグラスプランツ
Photography by Mai Kise

 

参考文献:『季語・歳時』『二十四節気と暦』国立天文台 暦計算室 貴重資料展示室、『合本俳句歳時記第五版』角川書店、『かさねの色目-平安の配彩美』青幻舎、『四季の暮らし美しい朝夕巻一四季の着物秋・冬』講談社、『きもの歳時記』平凡社、『美しい季語の花』誠文堂新光社、『新日本古典文学大系 萬葉集 二』岩波書店

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