日本の季節は春・夏・秋・冬の四つだけではなく、初春の立春から始まり、晩冬の大寒に終わる二十四節気、さらに二十四節気をそれぞれ三つに分けて一年を72等分した、七十二候という細分化された繊細な季節がある。
「今=ここ」にある季節を、コンテンポラリーに切り取ったビジュアル、そして季寄せ―――
季節の気配・花鳥風月・草木などの折々の自然に眼差しを向ける感性豊かな暦・歳時記を意識した日常ほど、贅沢なものはない。


2020年1月6日〜1月19日
二十四節気 / 小寒
二十四節気の中で小寒(しょうかん)とは、寒の入りを迎え一年でもっとも寒い時季の始まりの頃。小寒、それに続く大寒(だいかん)を合わせて、立春になるまでの寒の明けまでの一ヶ月を「寒の内」と呼ぶ。小寒は、寒さが極まる手前の意味であるが「小寒の氷、大寒に解く」という故事があるように、むしろ大寒よりも寒く感じることもある。厳しい寒さの中、武道の寒稽古が始まるのもこの頃。一年でもっとも寒いこの「寒」の間に出すのが寒中見舞い。年賀状を出せなかった、或いは返信が遅れた場合には、寒中見舞いで相手の健康を気づかい、年始の挨拶をする。正月の松飾りを飾る「松の内」を過ぎ、1月7日の人日の節句には七草粥を食べる習慣がある。1月11日は正月に年神様にお供えした鏡餅をいただく鏡開き。1月15日は門松やしめ縄などの正月飾りを燃やし、正月の間お迎えしていた年神様を送る火祭り、左義長(さぎちょう)の日。これは地域によっては「どんど」、「どんど焼き」とも呼ばれる。
七十二候では、小寒は第六十七候(初候)芹乃栄(せりさかう)1/6〜1/10(2020)、第六十八候(次候)水泉動(すいせんうごく)1/11〜1/15 (2020)、第六十九候(末候)雉始雊 (きじはじめてなく)1/16〜1/19(2019)の三つの季節に分けられる。
春の七草は、せり、なずな、ごきょう(ははこぐさ)、はこべら(はこべ)、ほとけのざ、すずな(蕪)、すずしろ(大根)。冷たい沢の水辺にこの時期に生えてくるのが、せりだ。七草粥をいただくことで邪気を払い、一年の無病息災を願う。厳しい寒さの中ではあるが、すでに地中では水が動き始める頃。自然は少しずつ前進し、微かな温もりに春を思う。雑木林では、雉の雄が雌を求めて「ケーン ケーン」と高鳴く声が聞こえ始める頃だ。


第六十九候(末候)
雉始雊 (きじはじめてなく)
冴え冴えと冷え切った空に
「ケーン ケーン」と、こだまする高鳴き。
赤、緑、茶色-−−。
美しい羽色を持つ雉を求めて
薄っすら雪の積もる
雑木林を踏みしめ歩けば、
不意に、飛び立つ騒がしい羽の音。
暮れゆく景色の中で目に映ったのは
長い尾の雉の輪郭だけ。


小寒の歳時記・季寄せ
二十四節気 / 小寒
七十二候 /
第六十七候(初候)芹乃栄(せりさかう)1/6〜1/10(2020)
第六十八候(次候)水泉動(すいせんうごく)1/11〜1/15 (2020)
第六十九候(末候)雉始雊 (きじはじめてなく) 1/16〜1/19(2019)
気配:寒の入り 花:寒牡丹 茶花:福寿草 葉牡丹
襲(かさね)の色目:松重(表-青 裏-紫)
行事:鏡開き 人日の節句 越前海岸水仙祭り(福井)
鳥:雉 鶴 装い:袷
料理:七草粥 あんこう鍋 菓子:花びら餅 若草饅頭
魚貝:あんこう 甘えび 野菜:蕪 小松菜 水菜
星座:ペルセウス座 季語:初春 松の内
俳句:よく光る高嶺の星や寒の入り(村上鬼城)


Video editing by Mei Tsukishiro(Park Sutherland)
Music by Yosuke Tsuchida
参考文献:『季語・歳時』『二十四節気と暦』国立天文台 暦計算室 貴重資料展示室、『合本俳句歳時記第五版』角川書店、『かさねの色目-平安の配彩美』青幻舎、『四季の暮らし美しい朝夕巻一四季の着物秋・冬』講談社、『美しい季語の花』誠文堂新光社、『日本の行事を楽しむ12カ月 くらしの歳時記』主婦の友社
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