日本の季節は春・夏・秋・冬の四つだけではなく、初春の立春から始まり、晩冬の大寒に終わる二十四節気、さらに二十四節気をそれぞれ三つに分けて一年を72等分した、七十二候という細分化された繊細な季節がある。
「今=ここ」にある季節を、コンテンポラリーに切り取ったビジュアル、そして季寄せ―――
季節の気配・花鳥風月・草木などの折々の自然に眼差しを向ける感性豊かな暦・歳時記を意識した日常ほど、贅沢なものはない。


2020年2月4日〜2月18日
二十四節気 / 立春
二十四節気の中で立春(りっしゅん)とは暦の上での春の始まり。一年のうちで一番寒い季節だが、風や日差しに次第に春の気配がたち始める。中国や台湾では立春を「春節」と呼び、春節を新しい年の始まりとしているように、旧暦では一年の始まりは立春からと考えられた。
二十四節気や七十二候と同様、日本の季節をあらわす節目に「雑節(ざっせつ)」(節分、お彼岸、社日、八十八夜、入梅、半夏生、土用、二百十日、二百二十日)があるが、このうち八十八夜、二百十日、二百二十日の三つは、立春を始まりとして数えられる。
七十二候では、立春は第一候(初候)東風解凍 (はるかぜこおりをとく)2/4〜2/8(2020)、第二候(次候)黄鶯睍睆 (うぐいすなく)2/9〜2/13 (2020)、第三候(末候)魚上氷 (うおこおりにあがる)2/14〜2/18(2020)の三つの季節に分けられる。
東風は「こち」とも読み、春風を意味する。暖かい春風が吹き始める頃、湖の厚い氷は次第に解け始める。北国の軒先に下がるつららからもやがて雫が落ちはじめるなど、春の兆しはそこかしこに見られる。春を告げる鳥といえば、うぐいす。麗らかなうぐいすのさえずりは、春を待つ人々の心に響く。水がぬるみ、氷が割れた川や湖では、生命力に満ち溢れた魚が盛んに泳ぎまわり、薄氷の上に跳ね上がる。


第一候(初候)
東風解凍 (はるかぜこおりをとく)
固く結んだ丸い蕾が
ひとつ、またひとつ、
枝先から開き始める2月。
写真に切り撮った梅の枝の
陽光きらめく印象とは裏腹に、
冷え冷えとした空気に包まれる梅林。
早春の景色が満開になるのは、
馥郁と梅香る東風が頬を撫でる頃。


立春の歳時記・季寄せ
二十四節気 / 立春
七十二候 /
第一候(初候)東風解凍 (はるかぜこおりをとく)2/4〜2/8(2020)
第二候(次候)黄鶯睍睆 (うぐいすなく)2/9〜2/13 (2020)
第三候(末候)魚上氷 (うおこおりにあがる)2/14〜2/18(2020)
気配:雪解け 花:梅 満作 茶花:椿 山茱萸(さんしゅゆ)
襲(かさね)の色目:梅(表-白 裏-蘇芳) 梅重(表-濃紅 裏-紅梅)
行事:初午 御事始 偕楽園の梅まつり(茨城)
鳥:うぐいす めじろ 装い:袷
料理:あおやぎのぬた和え 具足煮 菓子:うぐいす餅 薄氷
魚貝:伊勢海老 あおやぎ 野菜:あさつき 果物:いちご
星座:オリオン座 季語:立春 東風 鶯
俳句:東風吹くや耳現はるゝうなゐ髪(杉田久女)


Video editing by Mei Tsukishiro(Park Sutherland)
Music by Yosuke Tsuchida
参考文献:『季語・歳時』『二十四節気と暦』国立天文台 暦計算室 貴重資料展示室、『合本俳句歳時記第五版』角川書店、『かさねの色目-平安の配彩美』青幻舎、『四季の暮らし美しい朝夕巻一四季の着物春・夏』講談社、『美しい季語の花』誠文堂新光社、『日本の行事を楽しむ12カ月 くらしの歳時記』主婦の友社
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