シェフ ルカ・ファンティンシェフ ルカ・ファンティン

Stories

Premium X

未来に向けて日本の食を発信する新世代のシェフたち

2020.5.29

11. 「BVLGARI Il Ristorante LUCA FANTIN」シェフ ルカ・ファンティン~ 料理人としての人生をイタリアと共に歩む

13歳からの料理人人生を形成した濃い経験

日本在住のイタリア人シェフとして初めてミシュラン一つ星を取得したのは2011年のこと。以来9年間連続で星を守り続ける「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」を率いる、料理長のルカ・ファンティン。ファッションやジュエリーの愛好者でなくてもそのブランド名「ブルガリ」は世界的に有名だが、銀座に初となるレストランをオープンした当初はブランド名のみを冠した店名だった。しかし、2015年、シェフの栄光と実力をたたえて彼の名前を入れた名に変更された。同ブランドとしては異例のことだった。

 

イタリア北部の街、トレヴィーゾに生まれ育ち、13歳からレストランの厨房で修業をスタートさせたというルカ・ファンティン。爽やかでちゃめっ気あふれるキャラクターから、日本ではイタリア料理界の若きプリンスのような存在として紹介されることも多かったが、実際はそれだけでもない。修業期間の長さと内容の濃さ、さらには多くの偉大な料理人がこの人を育成したという事実がある。トレヴィーゾのホテル料理専門学校にはレストランのアルバイトを続けながら14歳から19歳まで学び、以降はミラノ、ローマ、スペインを渡り歩いて、星付きレストランで腕を磨いてきた。2006年には巨匠ハインツ・ベックが率いるローマ「ラ・ペルゴラ」でスーシェフとなり、この3年後の秋にブルガリがオープンする現在のレストランのエグゼクティブシェフに抜擢され、来日した。

 

「『ラ・ペルゴラ』にいた時代に、サンセバスチャンで開催された世界料理学会で『龍吟』の料理長、山本征治さんに出会ったんです。鱧をさばいて、その前後の骨の様子をレントゲン写真で撮影して我々料理人に見せてくれた。もう、本当に驚いてしまって。こんなすごい料理人がいる国、日本で働くという話が来た時、躊躇なく受けようと思いました」

春のメニューから「鰆のカルパッチョ 春玉ねぎとホワイトビネガーのソース添え」。2016年に自身の書籍『LA CUCINA DI LUCA FANTIN』を出版してから、ますますビジュアルの美しさにも磨きがかかった。 春のメニューから「鰆のカルパッチョ 春玉ねぎとホワイトビネガーのソース添え」。2016年に自身の書籍『LA CUCINA DI LUCA FANTIN』を出版してから、ますますビジュアルの美しさにも磨きがかかった。

春のメニューから「鰆のカルパッチョ 春玉ねぎとホワイトビネガーのソース添え」。2016年に自身の書籍『LA CUCINA DI LUCA FANTIN』を出版してから、ますますビジュアルの美しさにも磨きがかかった。


大切なのは、料理人としての背骨をどこに持つか

輝かしいキャリアを武器に日本で働き始めたルカ・ファンティンだったが、来日当時に比べるとその料理はずいぶん変わったと言われる。当初より人々に愛され、リピーターが多いことは変わらないが、この変化は「成長」というよりはもっと別の部分によるところが多い。

 

「日本語が少しわかるようになったとか、日本の食材についての知識が増えたとか、そういうことではないんです。私が作る料理の背骨にある“精神”みたいなものが、この10年で確実に濃くなっていった感がある。視点を変えて言えば、イタリア料理とは何なのかについて、もっと深く考えるようになったというか」

 

これはルカ・ファンティンがよく語ることだが、彼は自身の料理をれっきとした「イタリアン」だと断言する。日本の食材を多用するが、いわゆる出汁や醤油、みりんなどの和の調味料は使わない。日本料理の風を感じつつも、仕上がる料理は「イノベーティブ」や「フュージョン」ではなく、あくまでもイタリア料理だと胸を張る。クリアな味とシンプルな食材使いが尊ばれ、長い説明を好まれないイタリア料理ゆえに、「イタリア人のお客様に何と言われるか、結構緊張するんです」とルカシェフ。日本料理や日本の食材をあまり知らない彼らが料理を口にした瞬間に「故郷を思い出します」と笑顔で言ってくれたなら、美味しさはもちろんだが、ルカ・ファンティンの一皿がイタリア料理である証なのだという。

 

「東京って本当にすごい街だと思います。日本料理、フレンチ、イタリアン、中国料理など、他の都市でもトップを張れるようなクオリティーのレストランが軒を連ねており、その中で自身の料理哲学で勝負をし続けるのはエキサイティングなこと。しかし、目をつぶって私の料理を味わった人が『あぁ、これがイタリア料理か』と思ってくださったなら、それは料理人としてだけではなく、イタリア人としての誇りでもあります。いつか、今の自分の経験を母国の料理界の発展にも役立てたいと思っています」

ルカ・ファンティン LUCA FANTIN
1979年、イタリア・トレヴィーゾ生まれ。地元のホテル料理専門学校を卒業。13歳からレストランでアルバイトを始め、専門学校卒業後はミラノ「クラッコ」、ローマ「オステリア・デル・オルゾ」、スペイン二つ星「アケラッレ」「ムガリッツ」、ローマ「ラ・ペルゴラ」スーシェフ。2009年より「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン(元ブルガリ イル・リストランテ)」エグゼクティブシェフ。2020年「アジアのベストレストラン50」では17位にランクイン。

 

ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン
BVLGARI Il Ristorante LUCA FANTIN
東京都中央区銀座2-7-12 ブルガリ銀座タワー9F
03-6362-0555
ランチ 12:00-13:30 (L.O.)
ディナー18:00-20:00 (L.O.)
ランチコース 8,000円(平日のみ)、10,000円、16,000円
ディナーコース 18,000円、26000円
*税・サービス料別
※現在 臨時休業中。
※営業再開時にコース内容、金額ともに変更の可能性があるため事前に確認のこと。

 

Premium X 未来に向けて日本の食を発信する新世代のシェフたち

和食はもちろんのこと、フレンチ、イタリアン、中国料理と、日本の飲食業界には秀逸なレストランが群雄割拠。しかし、さらにその奥を眺めてみれば、未来の日本の食を背負って立つ新世代が芽吹き、目を見張る活躍を見せている。あらゆる垣根を越えて食と向き合うシェフ12名を「Premium Japan」編集部で選抜。目指すベクトルを聞いた。

 

(敬称略)

Text by Mayuko Yamaguchi

 

 

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当サイトに掲載しているレストラン情報の内容が変更になっている可能性があります。公式サイトなどから最新情報をご確認ください。

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。

Stories

Premium X

未来に向けて日本の食を発信する新…

Premium X

ページの先頭へ

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。