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非日常04.銀座メゾンエルメスのウィンドウディスプレイ

2018.02.16
Shigeki Fujishiro Large

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(写真上)銀座メゾンエルメスの記念すべき100回目のウィンドウディスプレイはプロダクトデザイナー藤城成貴による「GAME」(2018年3/13まで)。晴海通りに面した2つの大きなウィンドウは、銀座の街に開かれた「エルメス劇場」。2018年のエルメスの年間テーマである「演じる。遊ぶ。プレイフルな人生!」を、アナログなゲームで表現。ベルト、スニーカー、手袋、スカーフなどのエルメス製品がディスプレイされたゲームの中をボールが転がり、すり抜け、スパイラル状の仕掛けで登っていく。(写真下)ソニー通りに面した16の小窓のディスプレイにはだるま落としやコマなど日本の玩具のモチーフも。© Satoshi Asakawa / Courtesy of Hermès Japon

 

 

「世界にひとつだけ」。銀座・数寄屋橋交差点に程近い銀座メゾンエルメスは、海外、国内の他のエルメスのブティックとはひと味違う、「唯一無二」を有するブティックです。それはイタリア人建築家、レンゾ・ピアノ設計によるコンテンポラリーなガラスブロックの外観、最上階の「ル・ステュディオ」というミニシアター、さまざまなアーティストと空間を創造するギャラリー「フォーラム」。そして、銀座を行き交う人々の視線を誘い続けている、ウィンドウディスプレイ。2001年の銀座メゾンエルメス竣工時以来、2カ月毎に登場する内外の気鋭のクリエイターたちによるウィンドウディスプレイは、その独創的な創作で存在感を放ってきました。

 晴海通りに面したおよそ7平米の2つの大きなウィンドウと、ガラスブロックと同じサイズの16の小窓―――このウィンドウをデザインするにあたり、すべてのクリエイターに与えられるルールは2つだけ。エルメスの製品を主役にすること。そしてその年の「エルメスの年間テーマ」を表現すること。これまでに100のウィンドウディスプレイが、東京・銀座の、そしてエルメスの「今」を表現してきました。ジャスパー・モリソン、フォルマフンタズマ、マッシモ・バルトリーニ、パトリシア・ウルキオラ・・・・・・才能溢れる国際的なクリエイターたちが2カ月間のウィンドウのために創造した、なんとも贅沢なオーダーメイドなのです。

Tokujin Yoshioka 2009 large 2

Makoto Azuma L-1

(写真上)吉岡徳仁によるウィンドウディスプレイ「吐息」(2009.11.19~2010.1.19)は吐息に吹かれたスカーフがふわりと舞う動きで日常の世界からの「美しき逃避行」(2009年のエルメス年間テーマ)を究極のシンプリシティで表現したもの。(写真下)フラワーアーティスの東信によるウィンドウディスプレイ「時の庭」(2012.11.14~2013.1.22)。小さな温室で数十種類の植物を栽培し、植物の刻む「時間」にこの年のエルメスのテーマ「“時”の恵み」を重ねた。© Satoshi Asakawa / Courtesy of Hermès Japon

100のウィンドウディスプレイを手掛けてきたのは、アーティスト、プロダクトデザイナー、フォトグラファー、フラワーデザイナーなどなど、そのジャンルや表現手段もさまざまですが、現在もっとも影響力を持つクリエイターたちと言っても過言ではありません。デザイン評論家のアリス・ローソーンは銀座メゾンエルメスのウィンドウディスプレイを「21世紀初頭デザインの回顧録」と評すると同時に、「最新の日本デザインを知ることができる場所」と語ります。これまで吉岡徳仁、深澤直人、原研哉、nendoといった、日本を代表するクリエイターたちがこのウィンドウディスプレイを手掛けました。

 2004年、「色とファンタジー」を年間テーマとする年に吉岡徳仁が手掛けた「吐息」と題されたクリエーションは圧巻でした。映像の中の女性がふうっと息を吹きかけるとエルメスの象徴ともいえるスカーフがそれに呼応してひらりと舞う―――徹底したシンプリシティの中にある「感覚的」な表現は内外から高い注目を集めました。「美しき逃避行」を年間テーマとする2009年にも吉岡徳仁は再び「吐息」を題材に、街行く人を別世界に誘ったのです。

Mai Miyake large 2

Haruka Kojin Large1

(写真上)ミヤケマイ 「雨奇晴好」( 2007.5.17~7.17 )左のショーウィンドウに掛かる掛け軸の鯉のぼりが龍になって瓦葺の屋根を舞い昇るというストーリー。この年のテーマは「さあ、踊りの輪に!」。(写真下)荒神明香「と、そこに」(2010.9.16~11.16)は2010年のテーマ「語り継がれる“ものがたり”」を表現した作品。一面にちりばめられた大小さまざまなレンズの奥に大きくなったり逆さまになったりして見える、エルメスの製品が見る人の想像力をかきたてた。© Satoshi Asakawa / Courtesy of Hermès Japon

本の若手クリエイターを起用することも銀座メゾンエルメスのウィンドウディプレイの特徴のひとつ。現在の100回目のウィンドウディスプレイを手掛けているプロダクトデザイナーの藤城成貴、ウィンドウディスプレイの制作をきっかけに、現在ではエルメスの製品のデザインも手掛けるグルーヴィジョンズ、銀座メゾンエルメスのウィンドウで発表したモチーフが自身の代表作にもつながった荒神明香など。銀座の街に開かれたエルメス劇場から世界へと、日本の新進気鋭のクリエイターたちが発信する舞台の役割も果たしています。

 銀座メゾンエルメスのホームページでは、現在のウィンドウディスプレイはもちろん、過去のアーカイブを見ることができます。クリエイターの思いを知り、過去のウィンドウを24時間どこにいても眺めることができるタイムマシーンのような素敵なウェブサイトですが、やはり東京の、銀座の、数寄屋橋交差点に程近いガラスブロックの建物の前に立って、スピード感あふれる雑踏の中でウィンドウディスプレイを覗き込む楽しさにはかなわないでしょう。2018年のテーマは「演じる。遊ぶ。プレイフルな人生!」―――エルメスとクリエイターが繰り広げる、「今」を感じに出かけてみませんか?

 

2018.3.17 (土)、3.18 (日)両日、銀座メゾンエルメス フォーラム(東京都中央区銀座 5-4-1 8F)を会場に銀座メゾンエルメスのウィンドウ 100 回記念トークイベントが開催される。3.17 (土)15:00-16:00はデザイン評論家、アリス・ローソーンによる講演。ウィンドウディスプレイの歴史から、銀座メゾンエルメスのウィンドウの特徴までを、ビジュアルとともに考察。3.18 (日) 11:30-12:30は2015年に銀座メゾンエルメスのウィンドウディスプレイを手がけたグラフィックデザイナーの服部一成とアリス・ローソーンの対談。 3.18 (日)15:00-16:00は2018年3月に、101回目のウィンドウディスプレイを担当するオーストリア人デザインユニット、ミシェール’ トラクスラーが、ウィンドウ制作のプロセスや舞台裏などをビジュアルとともに語る。すべて参加無料。詳細・応募はスペシャルサイト:http://www.maisonhermes.jp/feature/670959にて。

 

 

選・文 藤野淑恵

 

TOSHIE FUJINO エディター/ジャーナリスト

「W(ダブリュー)」日本版、「流行通信」、「ラセーヌ」の編集部を経て、2000年春に創刊した「Priv.(プライヴ)」(日経BP社発行)の編集長に。「日経ビジネススタイルマガジンDIGNIO」編集長、オウンドメディア「GENUIN(ジェヌイン)」の編集統括など、クオリティ・マガジンの編集に携わる。センテナリアン時代のクオリティライフ実現に向けて新しいライフスタイルやロールモデルを紹介し、BESPOKE  LIVINGを提案することが現在のミッション。趣味・関心事はガーデンツーリズム、オペラツーリズム、ワインツーリズム、チーズ、ガンドッグ、庭造り、オールドローズ、ジェロントロジー、保護犬/猫など。