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日常06. イントゥーカのニット

2018.03.02
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イントゥーカ2018S/Sコレクションより。袖口にかけてゆったりとしたフォルムが特徴のホワイトのカーディガン。素材は抄繊紙(しょうせんし:和紙の一種)をテープ状に裁断し、綿糸を芯に撚り合わせた糸を使用。和紙60%、コットン40%。上品な透け感、肌に通したときに感じる涼やかさが魅力。¥43,000(税別) 同じく2018S/Sコレクションの白のワイドパンツ¥39,000(税別)を合わせたクリーンでエレガントな大人のコーディネート。共にイントゥーカ(03-3263-6888) ©パラマートデザイン

 

ントゥーカを知ったのは、リラックス感あるアイテムをコンテンポラリーなワードローブとして紹介する、都内のブティックでした。ひと目で惹かれたのは、ディテールやフォルムの美しさ。素材の上質さにモードの香りをまといながら、ベーシックで、タイムレスな佇まい。着る人によって様々な表情を見せるであろう奥行の深さ。intoca.というロゴのイメージとその響きから、なんとなくヨーロッパのブランドと思い込んでいましたが、ご案内をいただいた展示会で初めて、この洗練されたエレガントな服が日本人デザイナーが手掛ける日本ブランドのものであることを知り、とても誇らしく、嬉しかったことを覚えています。

シーズン毎に撮影される美しいイメージビジュアルを見ても、ショップで実物に触れても、その魅力は充分に伝わってきますが、イントゥーカの本当の魅力を知ることになるのは、実際に袖を通して着てみたあとのこと。身体の気になるラインを明らかにしない絶妙なフィット感。ノースリーブや半袖のニットであれば、その袖ぐり、袖丈のミリ単位のカッティングにより、着る人の腕のラインを細っそりと見せてくれます。大人の女性を美しく見せるディテールが主張することなくそっと、其処彼処に潜んでいる、そんな服。

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イントゥーカ2018S/Sコレクションより。ブラックとホワイトの太いボーダーがシックなニットは高級綿のスビンを多本取りで編み立てたもの。コットン100%。Vネックの襟の開き具合や袖丈など、女性の体を美しく見せるために計算されたディテールへのこだわりがある。¥37,000(税別)/イントゥーカ(03-3263-6888) ©パラマートデザイン

2人のデザイナーによってブランドが立ち上げられたのは2001年9月。翌年2002年の春夏シーズンから、イントゥーカのコレクションはスタートしました。もともとアパレル企業にデザイナーとして所属していた2人が、会社の収益のためではなく、「自分たちが本当に作りたいものを自由に作ろう」という思いを同じくしたのが始まりです。ニットのデザインのキャリアが長かったことから、スタートしたときはニットが100%でしたが、時を経て徐々に布帛やカットソーのアイテムも増えていきました。春夏と秋冬それぞれの展示会を開催し、パリの展示会に出展。国内32、海外12の専門店、百貨店、セレクトショップなどで販売されています。

美しいもの、そして自分の着たいもの作りたい。そんな思いでスタートしたブランドですが、イントゥーカの服を着る女性を見ているうちに、こんな服を着てもらいたいから作ろう、という気持ちの変化があったとデザイナーは語ります。2人には固定の役割分担はありません。常に雑談し、話し合いながらそれぞれが使いたい素材や色、作りたいデザインを徐々に形にしていくのがイントゥーカの創作スタイルです。シーズン毎のテーマや、コンセプトを掲げることなく創作が可能な理由は、お互いが頭の中で考えていることを理解し合い、時にお互いの方向性が違うときには大バトルになったとしても最終的にはお互いの意見に耳を貸すことが、より良いもの作りにつながることを知っているからなのでしょう。

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イントゥーカ2018S/Sコレクションより。イントゥーカのシグネチャーアイテムとしてファンが多いニットジャケットが今シーズンはエレガントなロング丈で登場。素材は抄繊紙58%、コットン25パーセント、シルク17%。抄繊紙をテープ状に裁断した抄繊糸に、コットンとシルクを撚り合わせたオリジナル糸を使用。素材の持つ質感と襟から身ごろ、裾に配されたホワイトのアクセントにより、軽やかな印象を持つ。¥66,000(税別)/イントゥーカ(03-3263-6888) ©パラマートデザイン

番、とも呼べるシグネチャーアイテムがイントゥーカにはいくつかあります。例えば、ニットジャケットには、ブランド立ち上げ当初から並々ならぬこだわりがあったといいます。カジュアルなイメージを持たれがちのニットですが、ニットでテイラードジャケットや燕尾服のようなフォーマルな服作りも可能。美しい形を極めるのために、糸を使うのか布を使うのかだけの違いであり、どんなアイテムかにかかわらず、作り手の最も得意な手法で作るというのがイントゥーカのものづくりの定義です。まるで立体裁断されたかのように着る人の体を美しく包みながら、軽やかで自由なオーラを放つイントゥーカのニットジャケット。定番といえども毎シーズン少しずつディテールや素材が変わるのは、些細な改善を積み重ねることで変化ではなく進化を求めたい、とのデザイナーの思いからです。

直営店を持たないイントゥーカですが、すべてのアイテムを一同に見ることができる期間限定のアトリエショップという新しい試みが先シーズンからスタートしています。2人のデザイナーの発想と創作の現場である皇居を望むアトリエは、ピュアでシンプル、洗練されたイントゥーカの世界そのもの。時折この場の主のような優雅なネコも姿を見せてくれます。このアトリエショップは、お客様とデザイナーが直接触れあいコレクションの全貌を見ていただく、大変貴重な機会として位置づけられています。イントゥーカのニットに興味がある人々にとっては、デザイナーの感性を肌で感じるクリエイティブな空間で、ゆったりと服に触れ、試着することができる特別な時間。それはブティックやネットでの買い物では味わうことのできない、豊かな経験となるはずです。

IMG_0025.jpgアトリエショップトリミング

『intoca.2018年春夏コレクションAtelier shop』
日時:2018年5月7日(月)~12日(土) 12:00~20:00*最終日5月12日(土) は19:00閉店。
場所:intoca. Atelier(パラマートデザイン)東京都千代田区一番町2番地 パークサイドハウス6階  03-3263-6888

『intoca.2018年春夏コレクション Pop up shop』も開催される。
日時:2018年3月21日(水)~4月3日(火) 10:00~20:00
場所:松屋銀座 4階

intoca. HP :  http://intoca.jp/

 

 

選・文 藤野淑恵

TOSHIE FUJINO エディター/ジャーナリスト

「W(ダブリュー)」日本版、「流行通信」、「ラセーヌ」の編集部を経て、2000年春に創刊した「Priv.(プライヴ)」(日経BP社発行)の編集長に。「日経ビジネススタイルマガジンDIGNIO」編集長、オウンドメディア「GENUIN(ジェヌイン)」の編集統括など、クオリティ・マガジンの編集に携わる。センテナリアン時代のクオリティライフ実現に向けて新しいライフスタイルやロールモデルを紹介し、BESPOKE LIVINGを提案することが現在のミッション。趣味・関心事はガーデンツーリズム、オペラツーリズム、ワインツーリズム、チーズ、ガンドッグ、庭造り、オールドローズ、ジェロントロジー、保護犬/猫など。