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非日常09. 時空を超えて心に棲む、大原・三千院の苔庭「そうだ 京都、行こう。」初秋の京都で苔庭巡り≪後編≫

2018.10.18
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 三千院   往生極楽院

北の圓光寺は、以前は知る人ぞ知る静かな寺院だったといいます。昨今では紅葉の美しい庭園を目当てに多くの人が訪れる人気のスポットになりました。正門をくぐると訪れる人が最初に目にする庭は「奔龍庭」。白砂を雲海に見立て天空を翔ける龍を石組みで表現した2013年完成の新しい枯山水の庭園です。稲妻を表した斬新な石柱の足元には青々としたウマスギゴケが植えらています。


圓光寺 奔龍庭

奥へ進むと本堂入口前には京都で屈指の美しい音色が聞こえるという水琴窟。その踞にはハマキゴケの姿が見えました。そして、本堂の前に広がるのが「十牛之庭(じゅうぎゅうのにわ)」。春から夏にかけての青モミジが晩秋になると真っ赤に染まるといわれる庭園の足元には、大きなウマスギゴケが伸びやかに広がっています。

 
(写真上、下右)圓光寺 十牛之庭(写真下左)圓光寺 水琴窟のそばにある蹲

圓光寺の創建は徳川家康。学問所としての繁栄や明治以降最近までは尼寺であったという歴史を知ると、静寂な中にも思索に満ちた独特の雰囲気の理由が腑に落ちます。「本堂の柱を額縁に見立て、額縁庭園として鑑賞すれば苔の緑がより鮮やかに際立ちます。晩秋の紅葉は散り紅葉、敷き紅葉と呼ばれ、散った後の景色が素晴らしい。わざわざ散ってから訪れる人も多いのです」と語るご住職の、「散り紅葉」、「敷き紅葉」という美しい言葉に日本の四季の豊かさを感じずにはいられません。


(写真左)圓光寺 十牛之庭を本堂から眺めて額縁庭園として鑑賞する(写真右)圓光寺ご住職

らに北へ、次の目的地は大原・三千院の苔庭です。広大な三千院の敷地の中に、2つの苔の庭園が連なる深淵なる緑の世界が広がります。客殿から額縁庭園として望む景色が見どころと言われる「聚碧園(しゅうへきえん)」、中央に国宝の阿弥陀三尊像が安置された往生極楽院を抱く「有清園(ゆうせいえん)」の2つの庭園には、「ヒノキゴケ、シラガゴケ、ツヤゴケ、シッポゴケなど、多数の苔が生息していて、苔の層の厚みには長い歳月が感じられます。聚碧園の手水鉢では、マツタケと同じ匂い成分をもつジャゴケもいました」。苔アーティストの今田さんも舌を巻くほどに幾重にも苔が重なるシンフォニックな空間です。

 
三千院 客殿から額縁庭園として望む「聚碧園(しゅうへきえん)」

初秋の昼下がり、苔が一面に広がる三千院の境内を歩いていると、夢と現実の境がなくなるような不思議な感覚に包まれました。苔の間でかくれんぼしている小さなわらべ地蔵も、苔庭に建つ往生極楽院の内で慈悲に満ちた姿で鎮座する阿弥陀三尊像も、実際に目にしたものではなく、夢の中で出合ったかのような、そんな感覚。今も目を閉じてあの苔庭の風景を心に描けば、時空を超えていつでもあの場所に飛んでいけるーーーこんな風に思えたのは苔庭のマジックかもしれません。庭が心に棲むということはとても幸せなことだと思います。

 
(写真左)三千院「有清園(ゆうせいえん)」の中に点在するわらべ地蔵杉村孝 作(写真右)三千院の境内には多数の苔が生息する

福寺、常寂光寺、圓光寺、三千院、建仁寺の5つの寺院では、苔アーティストの今田裕さん制作による「コケ寺リウム」(苔テラリウムと寺をかけ合わせた造語)と、各寺院の御朱印の文字を苔で描いたオリジナルアート「モシュ印」を展示する「初秋の京都 モシュ印/コケ寺リウムキャンペーン」を開催しています(11月30日まで)。それぞれの寺院の苔庭の見所をミニチュアのコケ寺テラリウムに凝縮して表現した今田さんの作品は必見。迫力満点の特大サイズのモシュ印の前で記念撮影するのも楽しいでしょう。

 

JR東海「そうだ 京都、行こう。」
http://souda-kyoto.jp/travelplan/koke_sp/index.html

東福寺   http://www.tofukuji.jp/index.html 
常寂光寺 https://www.jojakko-ji.or.jp/ 
圓光寺 http://www.enkouji.jp/ 
三千院 http://www.sanzenin.or.jp
建仁寺 https://www.kenninji.jp/

前編はコチラから

 

選・文 藤野淑恵

TOSHIE FUJINO エディター/ジャーナリスト 「W(ダブリュー)」日本版、「流行通信」、「ラセーヌ」の編集部を経て、2000年春に創刊した「Priv.(プライヴ)」(日経BP社発行)の編集長に。「日経ビジネススタイルマガジンDIGNIO」編集長、オウンドメディア「GENUIN(ジェヌイン)」の編集統括など、クオリティ・マガジンの編集に携わる。センテナリアン時代のクオリティライフ実現に向けて新しいライフスタイルやロールモデルを紹介し、BESPOKE LIVINGを提案することが現在のミッション。