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非日常09. 心に迫る、重森三玲の「苔×敷石」の市松模様庭園 「そうだ 京都、行こう。」初秋の京都で苔庭巡り≪前編≫ 

2018.10.04
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東福寺本坊庭園北庭。彫刻家イサム・ノグチはこの庭を「モンドリアン風の新しい角度の庭」と評した。

画「サウンドオブミュージック」のスタンダードナンバー「MY FAVORITE THINGS」のメロディにのって、千年の都の四季折々の景色が映し出されるJR東海のCM、「そうだ 京都、行こう。」は、京都観光シーズンの到来を告げる風物詩のような存在。この初秋のキャンペーンのテーマが「私のお気に入り」(海外でも日本でも庭めぐりが大好きなのです!)でもある京都の庭園、と聞けば、自ずと心は京都に向かいます。春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪景色で内外から訪れる人々を魅了する四季折々の京都の自然。山に囲まれ、湿度の高い京都の地形と気候は苔の生育条件と合致するため、社寺などでは一年を通して美しい苔庭を愛でることができます。紅葉シーズンの少し手前の、まだ少し静かな初秋の京都で、4つのとっておきの苔庭を巡りました。


(写真上)東福寺本坊庭園から望む通天橋 (写真下左)南庭 (写真下右)東庭

山山麓に建つ東福寺は、京都の紅葉の美しさを物語る代表格とも言えるでしょう。通天橋から眺める約2000本の渓谷のもみじが赤や黄色に染め上がる頃、東福寺は一年でもっとも華やかな季節を迎えます。でも、東福寺の魅力は紅葉のみではありません。日本を代表する作庭家・重森三玲による東福寺本坊庭園を初めて訪れて、私はその思いを強くしました。東福寺の広大で風格ある方丈に東西南北に配された四つの庭園は、釈迦の生涯における八つの重要な出来事である「八相成道」を表現する壮大な物語ともされるお庭です。

 
 
(写真上左)北庭 (上右)西庭 (下)東福寺本坊庭園のウマスギゴケ

その中でも、ひときわ印象的な庭が北庭です。もともと恩賜門に使われていた敷石を再利用してウマスギゴケと合わせ、市松模様を描いたデザインには、時を超えたモダニズムを感じます。彫刻家イサム・ノグチはこの庭を「モンドリアン風の新しい角度の庭」と評しました。市松模様は手前から奥に進むにつれて徐々に崩れ、一石、また一石と姿が消えていく日本画の「ぼかし」の手法が取られていて、眺める角度によってその景色が異なります。北庭だけでなく西庭でも、サツキの刈り込みと砂地とを葛石で方形に区切るという全く別の立体的な表現で市松の意匠が踏襲されています。方丈の回廊を一周しながら鑑賞する東西南北四つの伝統と革新を兼ね備えた庭は、大きなストーリーを紡ぐアート作品のように心に迫るものでした。



(写真上)常寂光寺 仁王門 (写真下左)末吉坂の両脇斜面のもみじの足元一面の苔 (写真下右)仁王門近くの小さな滝の周辺の苔スポット

原定家が小倉百人一首を編んだといわれる嵯峨小倉山。紅葉の美しさで知られる小倉山の常寂光寺に、「様々な苔が景色を織りなす、息をのむほど美しい苔庭」があることを教えてくれたのは苔アーティストの今田裕さんです。山門から続く仁王門をくぐり、緩やかな末吉坂を登れば、その両脇斜面に植えられたもみじの足元に、自然が編んだタペストリーのような緑鮮やかで美しい光景が広がります。「ハイゴケ、コバノチョウチンゴケ、滑らかなマットのようなツヤゴケ、動物の尻尾のようなフワフワのヒノキゴケ」。今田さんからひとつひとつの苔の名前を教えてもらうと、これまで一括りにしていた苔に、多くの種類や表情があることに気づきます。

 
 
(写真上左)もみじの株元に雲のように立ち上がる苔 (写真上右)季節の花が参拝者を迎える (写真下)自然が編んだタペストリーのような苔庭の緑鮮やかで美しい光景が広がる

「仁王門の近くの小さな滝の周辺も、さまざまな色彩の苔が集まった苔スポットです。苔庭の緑に紅葉の赤や黄色が舞い落ちた姿が美しい秋、苔のかわいい新芽が出る春、季節ごとの苔の美しさを楽しんでください」。今田さんは常寂光寺の苔庭の多彩な魅力を語ります。戦争中に荒廃していた常寂光寺の境内を、庭園の美しさで知られる嵯峨の名所として甦らせたのは先代、当代の二代の住職。この美しい庭園は住職たちの丹精の賜物なのです。苔庭や紅葉はもちろんのこと、百種余りの野草が見られる山草園もあり、3月上旬には梅、5月上旬のは牡丹、7月下旬には蓮など、季節の花を楽しみに訪れる参拝者が絶えることはありません。


 
(写真上左)東福寺本坊庭園北庭を表現した「コケ寺リウム」(写真上右)苔アーティスト今田裕さんと「コケ寺リウム」の作品 (写真下)常寂光寺の「モシュ印」と「コケ寺リウム」のコーナー

東福寺、常寂光寺、圓光寺、三千院、建仁寺の5つの寺院では、苔アーティストの今田裕さん制作による「コケ寺リウム」(苔テラリウムと寺をかけ合わせた造語)と、杉田悦朗さんが制作した各寺院の御朱印の文字を苔で描いたオリジナルアート「モシュ印」を展示するJR東海「初秋の京都 モシュ印/コケ寺リウムキャンペーン」を開催しています(11月30日まで)。それぞれの寺院の苔庭の見所をミニチュアのコケ寺リウムに凝縮して表現した今田さんの作品は必見。迫力満点の特大サイズのモシュ印の前で記念撮影するのも楽しいでしょう。

 

JR東海「そうだ 京都、行こう。」
http://souda-kyoto.jp/travelplan/koke_sp/index.html

東福寺 http://www.tofukuji.jp/index.html
常寂光寺 https://www.jojakko-ji.or.jp
圓光寺 http://www.enkouji.jp
三千院 http://www.sanzenin.or.jp
建仁寺 https://www.kenninji.jp

 

非日常 09.「そうだ 京都、行こう。」初秋の京都で苔庭巡りは、次回、後編 ~時空を超えて心に棲む、大原・三千院の苔庭~  へと続きます。

 

選・文 藤野淑恵

TOSHIE FUJINO エディター/ジャーナリスト 「W(ダブリュー)」日本版、「流行通信」、「ラセーヌ」の編集部を経て、2000年春に創刊した「Priv.(プライヴ)」(日経BP社発行)の編集長に。「日経ビジネススタイルマガジンDIGNIO」編集長、オウンドメディア「GENUIN(ジェヌイン)」の編集統括など、クオリティ・マガジンの編集に携わる。センテナリアン時代のクオリティライフ実現に向けて新しいライフスタイルやロールモデルを紹介し、BESPOKE LIVINGを提案することが現在のミッション。