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クオンタムリープ株式会社 代表取締役 ファウンダー&CEO 出井伸之氏インタビュー《後編》

2018.09.28
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ンチャーの未来に本気で向き合う

お話の中で出井さんが何度も口にしたのが「真逆をやりたかった」という言葉です。

ソニーという大企業から自身が立ち上げた小規模の会社へ、そして不特定多数を相手にするのではなく自分が認めた相手と一対一でベンチャー企業の未来を考える、今までとは違うそのスタイルが、出井さんの目指すクオンタムリープのあるべき姿なのです。

「だからファンドではないんです。ファンドだと、その投資でどれだけ儲かるかという利益を追求することになってしまいます。お金でサポートするのではなく、ベンチャーを立ち上げたその人の一生を考えた上で、どうすべきかを本気でアドバイスをしています」単なるコンサルティングではなく、未来を導くメンターとして真剣にアドバイスをする、それが自らの役割だと考えているのです。

先日もブロードバンド事業を行うフリービット会長の石田宏樹さんに、軽井沢の別荘で膝をつきあわせ何度もコーチングを実施。そこで詰めに詰めた次期ビジョンを株主総会で発表し、株主からも好評を得たと石田さんから報告があったそうです。

「真剣に向きあったその結果が聞ける。それが僕にとって一番の喜びなんです」

 

ビジネスとは真逆の楽しみも

プライベートも、ある意味「真逆」の世界を楽しんでいます。

「実は森が大好きなんです。仕事と関係なく、美しい森林づくり全国推進会議の代表として植樹祭や育樹祭などにも出席しています。毎週末過ごす軽井沢の別荘もそうですが、全国にある美しい森を実際に見ると、日本人として喜びを感じるんですよね」

の他にも、フランス語が堪能でありながら、文化的な側面を深く知りたいとシャンソンの歌詞を使ってフランス語を再度勉強しています。「“さくらんぼの季節”という歌詞に“戦争で流された血の跡”という意味があったり、明るい歌詞の裏に悲しい比喩が込められているシャンソンは勉強になります。ここ3年は書道も嗜んでいます。書道も楽しいですね。毎回先生に、こんな筆じゃダメ!なんて初心者扱いされていますけど(笑)」

 

冒険と失敗を恐れない環境を

クオンタムリープを立ち上げてすでに10年以上が経った今、次に必ず実現したいこと、それが「クオンタムリープ・アドベンチャー・ビレッジ」というプラットフォームです。

 「ラリー・クリントンの著書でも紹介されているんですが、アフリカの諺に“It takes a village to raise a child.(ひとりの子供を育てるには、村中みんなの力が必要だ)”という言葉があるんです。実は結婚式のスピーチに悩んでいた僕にアメリカ人が教えてくれた言葉だったんですが、これこそ日本のベンチャーに当てはまることではないかと思ったんです。これは自分たちの経験や人脈、あるいは資金を提供できる人に村民になってもらい、ベンチャーが生まれたら、みんなでサポートして村全体で育てていこう、あるいは、大企業が変革を起こしていかなくてはならない時期に村全体でサポートしよう、という考えに基づくプラットフォーム。「ベンチャーVenture」という言葉の語源も、もとは「アドベンチャーAdventure」から。その語源が示すように、失敗を恐れず、企業がもっと大胆に冒険していける環境を作っていきたいと考えています」

フランスには総面積1万坪にもなる昔の駅を再利用した「ステーションF」という世界最大級のスタートアップキャンパスが、今年オープン。マイクロソフトやフェイスブックなどの大企業も入居し、3,000ものデスクが利用できる巨大なシェアオフィスを出井さんも実際に訪れ、刺激を受けてきました。

日本でもこの6月、世界で戦えるスタートアップ企業を育成支援する経済産業省のプログラム「J-Startup」も始動。日本のスタートアップエコシステムの強化を目指す、このプログラムとの連携も考えているそうです。 

 

井さんが自身の会社に名づけたのは、量子物理学の用語「クオンタムリープ」。それは “量子的飛躍”という意味で、量子に何らかの状況が重ね合わさった時、別の状態へと一気に飛躍することを指すそうです。

ベンチャーというまだ小さな、そして見えない可能性をはらんだ大企業という物体に、さまざまな知識や経験、的確なアドバイスが重層的に重なった時、その可能性が一気に弾け別のステージへと飛躍していく。その名前にこそ、出井さんが次世代に託す熱い想いがこめられているのです。

 

 

《前編》はコチラから

 

<プロフィール>

出井 伸之(いでい のぶゆき)

1937年東京都生まれ。

早稲田大学政治経済部卒業後、1960年ソニー株式会社に入社。主に欧州での海外事業に従事する。オーディオ事業部長、ホームビデオ事業部長などを経て1995年に社長就任。退任後、2006年にクオンタムリープ株式会社を設立。NPO法人アジア・イノベーターズ・イニシアティブ理事長。

 

取材/島村美緒(プレミアムジャパン編集長)、文/牛丸由紀子、写真/古谷利幸