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年に一度の“新橋総揚げ”。一流の芸と料亭の食が楽しめる「東をどり」とは?《前編》

2018.05.13
第94回東をどり03

©公文健太郎

 

日び、どんな世界もネットで検索すればある程度のことが見える時代ですが、芸者さんの世界は、なかなかそうはいきません。特に新橋芸者の世界は、本当に謎めいています。年に1度、東銀座の新橋演舞場で催される「東をどり(あずまおどり)」は、そんな彼女達の姿を間近で観ることができる希有な機会。今年2018年も5月24日(木)から27日(日)までの4日間行われる「東をどり」を前に、新橋芸者衆や「東をどり」について、金田中・主人の岡副真吾(おかぞえ・しんご)さん、新橋芸者の喜美弥(きみや)さんに、お話を伺いました。

 

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金田中・主人の岡副真吾さん(右)、新橋芸者の喜美弥さん

 年で94回を迎える「東をどり」。年に1度、新橋芸者の唄と踊りを、誰もが楽しめる特別公演です。幕間には料亭が作る弁当や、日本酒、シャンパーニュなどもいただける、いわば、ポップアップレストランならぬ、ポップアップ料亭といった趣向。本来であれば一見さんお断りの新橋料亭と芸者衆の世界を垣間見ることができることから、毎年、多くのお客がこの舞台を待ち望んでいます。

「『東をどり』の始まりは大正14(1925)年、新橋演舞場が開場した時に遡ります。芸の一流を目指した新橋芸者のため、彼女達がその芸を披露するための場として創設されたのです」。

そう、金田中の岡副真吾さんは語ります。金田中は大正に創業した料亭で、真吾さんは4代目に当たります。

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講談師かと見まごう、テンポのいい粋な節回しで新橋芸者と「東をどり」の歴史を語る、金田中・主人の岡副真吾さん

 

橋芸者の始まりは江戸・幕末期。金春新道(こんぱるじんみち。現在の銀座・金春通り周辺)に、唄や舞などの芸に秀でた美しい女性達が住むようになり、一種の芸能村ができました。当時既に、現在の新橋演舞場や金田中があるエリアには料理茶屋が集まっており、彼女達を座敷に呼ぶようになったのだそうです。

「新橋芸者、当時は金春芸者と呼ばれていましたが、彼女達が芸を披露し、お酌をすることが半ば当たり前になります。そこで安政4(1857)年に常磐津文字和佐(ときわず・もじわさ)というお師匠さんが幕府に掛け合い、『酌取御免(しゃくとりごめん)』という札をいただきます。この札をもって、正式な花柳界であると認められたわけなのです」。

嘉永6(1853)年にペリーが来航し、嘉永7(1854)年には日米和親条約が締結されるなど、日本は大きな変革の時期にさしかかっていた時代でした。この幕末期から明治にかけて、新橋花柳界のお客には薩摩長州の志士が多かったのだそうです。

当時、江戸随一の花柳界と言えば、柳橋。一方の新橋は新興地だったんです。時代柄、柳橋は徳川びいきですから、薩長のお侍さんは相手にしてもらえません。幕末に彼らを迎え入れた新橋は、明治維新後は新政府の中枢となった彼らの会合の場として、さらに重用されていくのです」。

今でこそ新橋花柳界といえば長い歴史がありますが、当時は駆け出し。芸の面でも、よその花柳界から陰口を叩かれたこともあったのだとか。

「そこで偉かったのが当時の執行部です。『追いつけ、追い越せ』と日本中から最高の芸事のお師匠さんを新橋にお呼びし、一丸となって芸の一流を目指しました」。

 

の流れがあって、当時京都や大阪にあって東京になかった歌舞連場を作る動きが持ち上がり、新橋演舞場ができたというわけです。こうして、第1回「東をどり」は、新橋演舞場のこけら落としとして、大正14年4月3日から20日間、開催されました。当初は新橋各料亭の常連客と芸者衆のためのお祭りだった「東をどり」。しかし第二次世界大戦中から戦後の7年間の中断を経て、昭和23(1948)年に第15回として復活した際には、主婦や女学生など幅広いファン層を獲得し、“東京名物”と言われるほどのブームを巻き起こしたそうです。

 

昭和26年11月 第22回東をどり お好み俗曲集より 吉原  政吉 まり千代

第22回東をどり・「お好み俗曲集」より、まり千代(右)、政吉

「理由のひとつは、魅力的なスターが生まれたからです。まり千代、小くに、染福などが当時は大人気でしたが、特にまり千代には多くのファンが付き、ブロマイドが販売され、楽屋口には出待ちの女学生が鈴なりになったというんですから、要は宝塚歌劇団のような盛り上がりだったというわけなんですね」。

 

昭和26年11月 第22回東をどり 新平家物語  清盛 まり千代

第22回東をどり・吉川英治原作、舟橋聖一脚色による「新平家物語」に出演する、まり千代(左)

また演目も、川端康成や吉川英治、谷崎潤一郎など文豪の脚本による舞踊劇が加わり、それはそれは高い評判を受けたそうです。

 

後編》に続く

 

◆2018年・第94回「東をどり」開催概要
会期:2018年5月24日(木)〜27日(日)

 ●5月24日(木)・25日(金)は二回公演
  昼の席 開場12:30 開演13:00 終演14:30
  夕の席 開場15:20 開演15:50 終演17:20

 ●5月26日(土)・27日(日)は三回公演
  壱の席 開場11:00 開演11:30 終演13:00
  弐の席 開場13:10 開演13:40 終演15:10
  参の席 開場15:20 開演15:50 終演17:20

会場:新橋演舞場
会場住所:東京都中央区銀座6-18-2
会場TEL:03-3541-2600(代)
お問い合わせ:東京新橋組合
お問い合わせTEL:03-3571-0012(月~金10:00~17:00)
http://www.azuma-odori.net/

チケット:
桟敷席 9,000円
一階席 7,500円
二階正面席・二階右席 6,000円
二階左席・三階席 2,500円
※学生割引:学生証提示で、当日券のみ半額

 

チケットの予約:

TEL:チケットホン松竹0570-000-489

インターネット:Web松竹
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スマートフォン
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携帯
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窓口販売:新橋演舞場切符売り場・歌舞伎座・大阪松竹座・サンシャイン劇場
※サンシャイン劇場の窓口販売・引取り時間は14:00〜18:00

 

取材/島村美緒(プレミアムジャパン編集長)、文/木原美芽、写真/太田隆生